抄録
【目的】
1)車椅子座位でのたわみを解消する為に段ボールを使用した補助物品の有効性を明らかにする。
2)滑りにくさに対する体重の影響について確認する。
【方法】
対象は健常成人男性8名、女性8名(体重40kg台8名・60kg台8名)としH21.7.6~H21.7.31に実施した。方法は普通型車椅子(オージー技研RG-370車椅子標準型)を基本座位とし、3つの条件設定(座面のたわみをフラットにした物・バックレストのたわみをフラットにした物・座面とバックレストのたわみをフラットにした物)したものを牽引ベルトで牽引器(オージー技研オルストラックスOL-2000)にて座面と同じ高さで対象者の水平前方からゆっくりと引き続け、対象者の膝が前方に3cm引かれた時の牽引機の数値を読み取り、記録した。結果はExcelを用いて集計し、研究目的に沿って結果を分析した。基本姿勢に対する条件設定ごとの評価および体重別の滑りやすさに対する有意差はt検定を用いて検証し有意水準を5%未満とした。
【説明と同意】
予め被検者に実験概要を説明して文書に署名をもって参加の同意を得た、その際被検者の個人情報保護を約束し了解を得た。
【結果】
1)座面・バックレストに補助物品を入れると補助物品を使用しない場合と比較して滑りにくくなる。2)バックレストのみに補助物品と装着した場合は、何もしない場合と比較して優位に滑りにくくなる。3)体重が軽いほど滑りやすくなる。
【考察】
1)早川ら1)は車椅子から滑り落ちにくくする為には体幹を起こし、垂直方向にかかる重力を増すことで摩擦力を大きくすることが効果的と報告されている。このことからも補助物品を装着し、体幹を十分に起こしたことで滑りにくくなったといえる。また普通型車椅子の座面とバックレストの内角は通常95度~97度に設定されており後方に倒れる形状になっている為、補助物品を入れることにより内角が減少され滑りにくくなると考えられる。2)バックレストのみに補助物品を使った場合が最も滑りにくいという結果では、体幹が垂直に起こされ、さらに座面がたわんでいることにより接触面積が増え摩擦力が増す為、他の3者と比較して優位に滑りにくいと考えられた。r=0.830(p<0.05)有意差が認められた。3)体重別での滑りやすさは体重の軽い方が滑りやすく有意差が認められた。また廣瀬らも2)体重の軽い方が座面の接触面積が小さくなるため滑りやすくなり、痩せている人は太っている人と比べて接触圧力が高くなると報告していることからも痩せている人の方が褥創のリスクファクターが高まると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
1)車椅子のたわみのどの部分を解消すると最も滑りにくくなるのかというポジショニング方法を検討したことで、良肢位が明らかになり褥創予防に繋がることの根拠が実証できた。2)体重は褥創のリスクファクター指標の一つとして活用できる。
【引用文献】
1)早川大吾他. 車椅子坐位からの滑り落ちに関するポジショニングの検討.第22回東海北陸学術大会誌2)廣瀬秀行他.高齢者のシーティング.三輪書店:P59(2009)