理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O1-182
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一般演題(口述)
回復期リハビリテーション病棟における単身・高齢夫婦世帯の自宅復帰要因について
大江 光司西田 宗幹梅田 裕記福岡 由規
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抄録
【目的】
近年、高齢の単身者もしくは夫婦世帯の増加がみられ、当回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ)においても同世帯の利用者は増加傾向で、在宅復帰に苦渋しているケースは多い。今回、単身・夫婦世帯の自宅復帰のための要因について調査したので報告する。
【方法】
平成19年4月から平成21年5月に回復期リハを退院した患者を対象とし、調査方法はリハカルテより得た、年齢、性別、疾患別(整形・中枢・廃用)、発症から入院までの期間、発症から当院リハ開始までの期間、入院期間、実施日数、入院・退院時Barthel Index基本動作(以下、BI基本)、BIセルフケア(以下、BIセルフ)、BI合計、入院・退院時障害老人の日常生活自立度(以下、自立度)、入院・退院時認知症老人日常生活自立度(以下、認知度)、入院・退院時家族希望の方向性(以下、家族希望)、入院・退院時本人希望の方向性(以下、本人希望)、発症前先、転帰先、入院・退院時移動形態(歩行自立・介助、車椅子自立・介助)、退院時最高移動形態、同居人数、キーパーソン(配偶者・兄弟・子供・孫・妻・その他)、主介護者、家屋環境(持ち家・借家)、協力者の有無、経済状況(問題あり・なし)、介護度、保険の種類(社会・国民・生活保護・後期高齢・その他)、の項目について単身、夫婦世帯それぞれの転帰先間での比較と自宅復帰した単身世帯と複数家族世帯(以下、複数世帯)、夫婦世帯と複数家族世帯の比較を行い検討した。統計処理には、各群の比較にunpaired t test、χ2検定、Mann-Whitney U testを用いた。有意差があった項目に対しロジスティック回帰分析を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。
【説明と同意】

【結果】
退院患者総数は204名(男性76名、女性128名、平均年齢80.7±9.3歳)。単身世帯は43名(男性11名、女性32名、平均年齢81.5±10.2歳)、夫婦世帯は34名(男性22名、女性12名、平均年齢75.3±9.7歳)。単身世帯の転帰先間比較では、BIのすべての項目で入院から退院まで自宅群が高かった(p<.0001)。自宅群では退院時最高移動形態、退院時移動形態で歩行自立者が多く、認知度は入院から退院まで通して低く、家族と本人希望は、入院時、退院時ともに自宅希望が多かった(p<.01)。夫婦世帯の転帰先間比較では、年齢は自宅群71.2±8.6歳、施設群82.8±6.8歳と自宅群が若く、退院時BIセルフ・合計で施設群より高く、キーパーソンは自宅群では配偶者が多かった(p<.01)。入院時、退院時の家族希望と退院時の本人希望ともに自宅希望が多かった(p<.01)。自宅復帰した単身世帯と複数世帯の比較では、BIのすべての項目で入院時から退院時まで自宅群が高かった(p<.01)。退院時最高移動形態、退院時移動形態の自宅群では歩行自立者が多かった(p<.01)。経済状況は単身世帯で問題ありが多く、保険の種類は、単身世帯では生活保護が多い傾向にあった(p<.0001)。自宅復帰した夫婦世帯と複数世帯の比較では、夫婦世帯のほうが、年齢が若く(p<.0001)、性別は男性が多く、整形疾患が多く(p<.01)、キーパーソン、主介護者ともに配偶者が多かった(<.0001)。ロジスティック回帰分析の結果、すべての項目において有意差はなかった。
【考察】
今回の結果より、自宅復帰した単身世帯では、認知・身体機能面とも良いことが分かった。このことから、自宅復帰には認知面に問題がなく、移動能力を主とした能力面の向上が必要であると考えた。また、生活保護を受けており、経済状況に問題があっても、BIや退院時最高移動形態が良く能力面が良ければ自宅復帰可能であることが分かった。夫婦世帯では、年齢が若く、退院時セルフケア能力が高く、さらに整形疾患で、男性であればより自宅復帰につながることが考える。これらのことにより、能力的にはセルフケア能力の改善が必要で、自宅復帰を決定するキーパーソンおよび主介護者が妻であることで、兄弟や子供の干渉が少ない状況も必要であると考える。両世帯において、キーパーソン・主介護者とも配偶者で、配偶者・本人が入院から一貫して在宅への強い意志を持っていることも重要であると考える。また、以上の項目が変化するかどうか入院時より把握することで、適切な予後予測へつなげられるかもしれない。今回は家族や主介護者などに対して入院・退院時の方向性しか収集できておらず健康状態や時間の融通性、介護への積極性などはとれていない。今後はそれらも踏まえて調査する必要があると考える。さらに、単身世帯で移動手段が車椅子レベルにもかかわらず自宅復帰しているケースがあり、更なる追跡も必要であると考えた。
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© 2010 日本理学療法士協会
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