抄録
【目的】平成18年11月、当院開設と共に、3~4時間の枠の短時間通所リハビリテーション(以下通所リハ)も開設した。定員15名の運動を中心とした内容のサービス提供を午前と午後に行い、要支援者に対しても個別運動療法(以下個別リハ)を実施してきた。開設より3年経過した当院通所リハ利用者の介護度割合、変化について調査し、その要因について考察する。また、これまでの取り組みと課題について報告する。
【方法】平成18年11月から平成21年10月までの当院通所リハ利用者の介護度の割合、介護度の変化について調査した。
【説明と同意】当院通所リハ利用申込み時に、個人情報の取り扱いについて書面にて説明・配付し、契約書に著名頂き、調査資料の利用について同意を得ている。
【結果】当院通所リハの3年間の契約利用人数は合計79名、男性33名、女性46名、平均年齢72歳であった。介護度の割合として、要支援1:21名(27%)、要支援2:22名(28%)、要介護1:17名(21%)、要介護2:10名(13%)、要介護3:5名(6%)、要介護4:3名(4%)、要介護5:1名(1%)であった。介護度が変化した割合は、改善した対象者11名(14%)、悪化した対象者9名(11%)、維持された対象者59名(75%)であった。介護度割合でみると、改善した対象者では、要支援者5名(6%)、要介護者6名(8%)であった。悪化した対象者では、要支援者4名(5%)、要介護者5名(6%)であった。維持された対象者では、要支援者35名(45%)、要介護者24名(30%)であった。原因疾患としては、脳血管疾患36名(46%)、整形外科疾患18名(23%)、神経疾患14名(18%)、その他11名(14%)であった。
【考察】当院通所リハでは、運動を中心としたサービス提供である為、利用者の介護度として要支援者、要介護1、2の軽度要介護者の割合が多くなっている。運動を中心としたサービス内容であり、食事・入浴サービスを実施してない為、家族介護の必要な中~重度の要介護者には利用希望が少ないと考える。開設当初から、全ての利用者に対して個別リハを実施しており、要支援者に対しても利用時には毎回実施している。要支援者の利用者に対しても、機能維持・向上の為には、セラピストによる個別リハが必要であると考えている。要支援者において、自主運動のみでは困難な運動もあり、特に原因疾患が脳血管疾患の利用者は、麻痺側の運動を徒手的に行う必要もある。また、地域包括支援センターからの要支援者に対しての個別リハ実施についての問合せも多い。大規模事業所では要支援者に対して、個別リハが行われていない事業所も多いが、当院通所リハは少人数制であり、運動を中心としたサービス内容である為、要支援者にも個別リハが可能ともなっている。その為、要支援者の維持・改善割合が約90%となっていると考える。無床診療所の通所リハであり、運動スペースも限られている中で、大規模事業所の長時間通所リハに多く見られる運動機器のみのトレーニングとは異なり、個別リハは、特化したサービス内容でもある。しかし、利用者は、機能改善を希望しており、より高い満足度を得る為には、自己効力感を感じてもらえるサービス内容の提供が課題であると考える。また、利用者には高齢の方もおられ、運動のみではなく、短時間の中においても楽しみの時間を取り入れて、利用者の満足度を向上させる事も課題に挙げている。
【理学療法学研究としての意義】短時間通所リハにおいて、全ての利用者に対して、個別リハを実施している。要支援者の通所リハ利用希望者にも、個別リハを希望する方も多く、当院通所リハは運動を中心とするサービス内容である為、個別リハは特化したサービスの1つとなりえている。