理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-128
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ポスター発表(一般)
脳卒中患者の精神機能が屋内歩行自立日の予測に及ぼす影響
村上 貴史松岡 愛小林 亮平宮澤 由美
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キーワード: 脳卒中, 歩行, 予後予測
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抄録
【目的】本研究は脳卒中患者の精神機能が屋内歩行自立日の予測に及ぼす影響を検討した。
【方法】対象は脳卒中患者112例とし、発症前生活にて屋内歩行が介助、重度の整形外科疾患、重度の失語症、TUG(Timed Up and Go Test)および10m歩行時間が測定不可、訓練中止、くも膜下出血、退院時に屋内歩行が非自立の者は含めなかった。調査項目は年齢、性別、疾患、麻痺側、発症日、発症後30日の座位保持、立位保持および歩行の介助有無、発症から屋内歩行自立までの日数とした。測定項目は下肢BRS(Brunnstrom Recovery Stage)、SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)下肢位置覚、30秒間反復起立テスト、TUG、10m歩行時間、10m歩行歩数、MMSE(Mini Mental State Examination)とした。測定日は発症後15、30、45、60、75、90日のうち、TUGおよび10m歩行時間が測定可能な最短日とした。屋内歩行自立日の判定方法は、伝い歩きを除き歩行補助具の規定はせず、また、自室内等の制限なしに病棟内を1人で転倒なく歩行可能と、PT2名が判定した場合に自立とした。分析方法は対象をMMSE24点以上群、23点以下16点以上群、15点以下群の3群に分類し、従属変数を発症から屋内歩行自立までの日数、独立変数を調査および測定項目として各群について重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
【説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、研究内容を説明し同意を得た。
【結果】MMSE24点以上群は平均年齢66.1±10.3歳、男性50例、女性32例、脳梗塞55例、脳出血27例、左麻痺47例、右麻痺35例であった。MMSE23点以下16点以上群は平均年齢64.1±12.2歳、男性14例、女性6例、脳梗塞15例、脳出血5例、左麻痺10例、右麻痺10例であった。MMSE15点以下群は平均年齢67.5±9.0歳、男性4例、女性6例、脳梗塞4例、脳出血6例、左麻痺5例、右麻痺5例であった。各調査および測定項目間について、3群ともに発症後30日の立位保持は発症後30日の座位保持および歩行と相関が高く、10m歩行時間は10m歩行歩数、TUGと相関が高かった。従属変数を発症から屋内歩行自立までの日数とし、独立変数を多重共線性に配慮し年齢、発症後30日の立位保持の介助有無、下肢BRS、SIAS下肢位置覚、30秒間反復起立テスト、10m歩行時間として重回帰分析を行った。MMSE24点以上群の回帰式は「Y=0.702×10m歩行時間-9.834×下肢BRS-21.666×発症後30日の立位保持+105.004」であり、R 2は0.592であった。標準化係数は10m歩行時間が0.371、下肢BRSが-0.314、発症後30日の立位保持が-0.244であった。MMSE23点以下16点以上群の回帰式は「Y=1.144×10m歩行時間-16.826×下肢BRS+113.724」であり、R 2は0.541であった。標準化係数は10m歩行時間が0.514、下肢BRSが-0.438であった。MMSE15点以下群の回帰式は「Y=-68.0×発症後30日の立位保持+88.50」であり、R 2は0.761であった。
【考察】脳卒中患者の屋内歩行自立日の予測において、MMSE24点以上群およびMMSE23点以下16点以上群では10m歩行時間が特に重要な評価項目と示唆された。また、MMSE15点以下群では発症後30日の立位保持が特に重要な評価項目と示唆された。
【理学療法学研究としての意義】リハビリテーション医療は効果的かつ効率的に展開することが望ましく、そのように展開するためにはリハビリテーション計画の早期立案が重要であり、発症後早期に歩行能力の予測をたてること、つまり、急性期での予後予測が重要となる。しかし、回復期病院および病棟では他院からの転院患者も多く、急性期の情報が不足している場合もある。そのため、主に回復期患者を対象とした予後予測の研究が必要である。歩行自立の判定に用いられている評価方法としては簡便であり、信頼性および妥当性が高い10m歩行テスト等がある。しかし、10m歩行テスト等による予後予測の研究、個別の患者の歩行自立日が算出可能な予測式を作成した研究、精神機能が歩行自立日に及ぼす影響を検討した研究は少ない。本研究における精神機能重症度別の予測式は臨床的有用性が高いと考える。
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© 2011 日本理学療法士協会
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