理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-127
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ポスター発表(一般)
運動FIMの低い急性期脳卒中患者における認知FIMを用いた機能予後予測の検討
宮﨑 由美福田 航藤井 千香脇 万里子
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抄録
【目的】
脳卒中発症後、可及的早期に機能予測を行うことは、転帰等を決定し急性期のリハビリテーションの目標を設定する上で重要な課題である。脳卒中患者の機能予後予測にはFIM(Functional Independence Measure)を用いた研究が多く報告されている。その中では、発症後2週間で運動FIMが80点以上の者は機能予後が高いことが報告されている。近年、運動FIMが低い者の中でも、認知FIMの改善度が大きければ、高い機能を獲得できることも報告されている。しかし、認知FIMの程度を詳細に区分して、脳卒中発症後の機能予後予測を検討した報告はあまり見当たらない。
そこで本研究は、発症2週時の運動FIMが低い急性期脳卒中患者においても、高い機能が獲得できる認知FIMの程度を検討するために、発症2週時の認知FIMを30~35点(自立・修正自立群)、20~29点(監視・10%未満介助~最少介助群)、5~19点(中等度介助~全介助群)に区分し、その予後について検討する事を目的とした。

【方法】
急性発症した脳卒中患者102名のうち2週時の運動FIMが50点以下の者46名(平均年齢71.3±17.2歳、男性16名、女性30名、脳出血17名、脳梗塞29名、平均在院日数57.0±23.5日、リハビリ開始までの平均期間3.0±2.6日)を対象とした。選択基準は初回発症の脳卒中患者で、発症前は歩行が自立していた者とした。除外基準は90歳以上の者、発症時呼吸機能が著しく低下している者とした。
全対象者に2週時と退院時に運動FIM、認知FIMを測定した。また、退院時には歩行獲得の有無、自宅退院の有無について調査した。続いて、2週時と退院時の認知FIMを30~35点(自立・修正自立群)、20~29点(監視・10%未満介助~最少介助群)、5~19点(中等度介助~全介助群)に区分し、運動FIMについて2週時と退院時をそれぞれ3群間で比較した。統計処理には一元配置分散分析を用い、事後検定にはTukey法を使用した。なお、統計処理ソフトにはSPSS(Student Version16.0)を使用し、有意水準は5%未満とした。

【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には研究に対する説明を文書で行い、同意を得て参加して頂いた。また、研究に対する理解が不十分な場合は、家族へ十分に説明を行い、同意が得られた場合に、研究に参加して頂いた。

【結果】
発症2週時の認知FIMを3群に区分した結果、自立・修正自立群は11名、監視~最少介助群は9名、中等度介助~全介助群は26名であった。この3群間において、発症2週時の運動FIMは自立・修正自立以上群32.1±6.5点、監視~最少介助群26.7±10.2点、中等度介助~全介助群15.6±6.9点であった。自立・修正自立群と監視~最少介助群に差は無かったが、自立・修正自立群と中等度介助~全介助群、監視~最少介助群と中等度介助~全介助群に差を認めた(p<0.05)。また、退院時の運動FIMは自立・修正自立群がそれ以外の群に比べて有意に運動FIMの得点が高く(p<0.05)、それ以外では有意な差を認めなかった。さらに、退院時の歩行獲得の有無については、自立・修正自立群が9名(81.8%)、監視~最少介助群が1名(11.1%)、中等度介助~全介助群が1名(3.8%)であった。自宅退院の有無については、自立・修正自立群が9名(81.8%)、監視~最少介助群が0名(0%)、中等度介助~全介助群が4名(15.4%)であった。

【考察】
先行研究では、運動FIMが低い者でも認知機能が大きく改善すれば、運動FIMや歩行獲得率が高かったと報告しており、認知機能が運動機能に関連すると指摘されている。しかし、認知機能の回復率から運動機能を予測する先行研究に比べ、我々の研究は2週時点での認知FIMの点数で判断するという面で予後予測に適していると考えた。
本研究では、2週時の認知FIMが自立・修正自立以上の群においては退院時には運動FIMが有意に改善した。つまり、運動機能の回復には高い認知機能が必要であると示唆された。認知FIMが高い場合、回復に対するニードが高く、リハビリに対する意欲が高いことや、記憶が比較的良いことから運動学習効果が得やすいと考えられ、これが運動機能の回復に繋がったと考えた。

【理学療法学研究としての意義】
脳卒中急性期において運動FIMが低い者でも2週時の認知FIMが修正自立であれば高い機能予後が獲得できると示唆され、脳卒中の急性期リハビリテーションの目標設定を行う上で有益な情報になると考えた。
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© 2011 日本理学療法士協会
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