理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-257
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ポスター発表(一般)
RA患者との信頼関係の構築に必要な態度と技術に関する検討
山際 清貴小堀 沢子倉田 典和岩本 卓士山中 寿北目 茂猪飼 哲夫
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抄録
【目的】
関節リウマチ(RA)は滑膜炎が主体の炎症性疾患であり、徐々に関節変形などが進行し日常生活活動(ADL)に障害をきたす可能性の高い疾患である。同時に、近年では生物学的製剤の開発により治療成績が向上しているとは言え、未だ完全に進行を抑制するには至らず、理学療法や作業療法の適応となることが多い疾患である。また、関節痛、関節変形、筋力低下、関節可動域制限など、ADL障害をきたす因子が多岐にわたること、対象となる関節が多関節に及ぶなどの疾患の特性上、長期間にわたる介入が必要となることが多い。
このような状況の中、円滑に理学療法を継続するためには、患者-治療者間における信頼関係の構築が欠かせない要素であると考えられる。しかし、現時点において、理学療法士(PT)のどのような態度や技術がRA患者に信頼感与えているのかに関して言及した報告はない。今回は、それらの点についてKJ法を用いて検討した。

【方法】
対象は、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターにて外来理学療法を継続中のRA患者39例である。方法は、自記式質問紙にて年齢、罹病期間などの基本属性に加え「リハビリの職員がリウマチ患者さんの信頼を得るには、どのような態度や技術が必要であると思いますか?」と質問し、自由記載にて回答を求めた。得られた回答を、KJ法のグループ編成の方法にしたがってカテゴリー化した。

【説明と同意】
本研究は、事前に口頭ならびに書面での説明にて同意を得られた患者に対してのみ施行された。なお、得られたデータは個人が特定されないように処理し、安全対策の施されたコンピュータにて厳重に管理した。

【結果】
対象者の基本属性は、平均年齢55.7歳、平均罹病期間13.0年であり、全例女性であった。得られたコード数は、態度に関するものが48コード、技術に関するものが56コードであった。態度に関する項目は、サブカテゴリー「傾聴(26)」「個別性の尊重(5)」「ひたむきな姿勢(3)」「明るい対応(3)」「親切・丁寧な対応(3)」を大カテゴリー[ホスピタリティ]としてまとめ、同様に「共感的理解(4)」「励まし(2)」「不安・緊張の解消(2)」を[心理的サポート]としてまとめた。
技術に関する項目は、それぞれサブカテゴリー「自主トレーニング指導(13)」「ADL指導(6)」「関節保護法(4)」を大カテゴリー[患者教育]、「身体の状態(5)」「理学療法の意義(4)」「RAの病態(2)」「疼痛(2)」「他患の情報(2)」「PT自身の意見(2)」を[十分な説明]、「疼痛の軽減(5)」「関節可動域改善(5)」を[効果の実感]、「関節可動域訓練(4)」「装具の作製(1)」「自主トレーニングの確認(1)」を[理学療法の実践]としてまとめた。(カッコ内はコード数)。

【考察】
今回の結果より、PTが外来RA患者の信頼を得るためには、態度の面では[ホスピタリティ][心理的サポート]の2項目が重要であることが明らかになった。すなわち、ADL障害や闘病の苦悩などの患者個々の訴えを「傾聴」し、「個別性の尊重」を念頭におきつつ「共感的理解」の姿勢を示すべきであることが必要であることが示唆された。
また、技術の面では[患者教育][十分な説明][効果の実感][理学療法の実践]の4項目が重要であることが明らかになった。すなわち、「自主トレーニングの指導」や「ADL指導」に代表されるような広義のセルフケアに関する指導を行う一方で、現在の「身体の状態」や「理学療法の意義」などに関する[十分な説明]が求められていることが明らかになった。[理学療法の実践]としては「関節可動域訓練」が重要であり、同時に「疼痛の軽減」や「関節可動域の拡大」などの[効果の実感]が信頼感の構築に重要であることが示唆された。
本研究でコード数が最も多かった「傾聴」は、態度でもあり技術でもある。限られた理学療法の時間内で一定の効果を望もうとするならば[理学療法の実践]に重点を置かざるを得ない。しかし、「傾聴」する姿勢にも十分な時間を費やし、患者の訴えを全人的に理解するよう努めることがRAのトータルマネジメントを担う一専門職としての役割ではなかろうか。

【理学療法学研究としての意義】
本研究から、PTのどのような態度や技術がRA患者との信頼関係の構築に重要であるのかが明らかになった。このことは、パターナリズムに陥りやすい患者-治療者間において患者とのより適切な関わり方を考えるうえでの一助となることが予想される。
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© 2011 日本理学療法士協会
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