理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-378
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ポスター発表(一般)
COPD患者の日常活動性に対する簡易型測定機器の信頼性検討
杉野 亮人南方 良章西貝 学神田 匡兄赤松 啓一郎小荒井 晃平野 綱彦杉浦 久敏松永 和人一ノ瀬 正和
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キーワード: COPD, 日常活動性, METs
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抄録
【目的】
COPD患者は、動的肺過膨張による息切れ感により、日常活動性低下や筋力低下が生じ、労作時の更なる息切れが生じるといった悪循環が生じる。日常活動性はCOPDの死亡率とも関係しており、COPD患者の日常活動性の改善は、治療の重要なターゲットであるといえる。活動レベルをモニタリングする手段として、質問表による活動性評価があるが、客観性に乏しい。これに対し、近年加速度計を用いた方法が報告されたが、中でもDynaport Activity Monitor(McRoberts BV; Dynaport Activity Monitor [DAM])はCOPD患者に対し信頼性が確認された方法として用いられてきた。しかしこれは、装着が頻雑で、装置自体は大きく、操作も簡便でなく、長期間の連続モニタリングも不可能である。これに対し、より装着も簡便で軽量であるアクティマーカー(Panasonic; アクティマーカー)が開発されたが、COPD患者に対するその信頼性は確認されていない。そこで、今回はアクティマーカーとDAMの再現性を検討し、さらに、COPD患者の日常活動性評価に必要な解析対象日と測定日数を検討し、より簡易に日常生活活動をモニタリングする手段の確立を試みた。

【方法】
当院呼吸器内科外来に通院中の安定期COPD患者の男性患者14名に対し、DAMとアクティマーカーを装着し、同時に連続7時間の活動モニタリングを行い、Dynapoatの総活動量時間と、アクティマーカーの1.5METs以上、2.0METs以上、2.5METs以上、3.0METs以上の強度別時間を測定し、DAMとアクティマーカーの再現性の検討を行った。次に、外来通院中の安定期COPD患者10名に対し、アクティマーカーを2週間装着させ、雨天と雨天でない日で活動時間に差があるのかどうか検討した。最後に、COPD患者10名に対し、測定結果の反復性を得る為には何日の測定が必要であるかをBland Altman Plots法および級内相関係数(Intra class correlation coefficient: ICC)を用いて検討した。なお、ICC>0.8で反復性があるとした。

【説明と同意】
本研究は倫理委員会の承認を得て、患者ひとりひとりに対し書面に基づく同意を得た。

【結果】
DAMとアクティマーカーの各強度別時間では、2.0METs以上で相関関係が認められ、相関の存在した2.0METs以上で両機器の再現性を検討すると、2.0METs以上(p<0.02)、2.5METs以上(p<0.003)、3.0METs以上(p<0.006)の全ての強度で再現性が確認できた。次に、雨天または雨天でない日では、全ての強度において雨天の方が活動時間が有意に短かった(全ての強度でp<0.01)。そして、反復性が得られる最少日数は、Blant altman plots法では3日であり、ICCを用いた結果も、2日間では3.0METsでICC=0.7以下であるが、3日間以上であれば全てICC>0.8となった。

【考察】
まず、DAMとアクティマーカーの再現性において1.0METs以上~2.0METs未満の活動を測定する場合、わずかな動きも活動としてとらえてしまい、結果的に相関関係がなくなる。よって、2.0METs以上での運動強度で評価していく必要がある。また、雨天と雨天でない日の活動強度別における比較では、雨天では活動性が低く、天候の差が活動性へ影響していることが示唆され、雨天は除外することが妥当であることが確認できた。そして、測定日数の検討については、Bland Altman Plots法ならびにICCにおいて、いずれも3日間以上ですべての強度において反復性が確認された。従って、雨天でない3日間以上の測定結果を用いて解析することで、COPD患者の簡易日常活動性測定法としての信頼性が確認され、今後臨床応用可能であると考えられた。

【理学療法学研究としての意義】
COPD患者への呼吸理学療法において、日常活動性の向上は大きな目標のひとつとなる。日常活動性の現状把握に加え、治療効果の評価のためには、信頼性の確認された日常臨床に応用しうる評価方法が必要である。アクティマーカーは、COPD患者の活動性をより簡便に評価でき、その再現性および反復性の確認もできたことより、運動負荷または運動量の設定などにおいて、より的確な情報を得るためツールとして有益であると考えられた。
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© 2011 日本理学療法士協会
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