理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-449
会議情報

ポスター発表(一般)
関節運動を伴う筋収縮におけるモータポイントの位置の調査
西原 賢河合 恒千葉 有鈴木 陽介原 和彦藤縄 理
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】電気刺激療法では、運動機能の維持・改善などの目的で筋収縮を引き起こす場合には、いかにして充分な筋収縮を誘発させるかが大切である。表面電極を用いて対象筋を刺激する場合、筋線維を単純に直接刺激することでは筋全体を収縮させることは困難で、まずモータポイントを確かめる必要がある。モータポイントは神経の筋枝が筋に入り込んでいく神経筋接合部の密集場所であると考えられる。収縮をさせる筋を的確に刺激するためには、その筋のモータポイントに関電極をおき、離れたところに不関電極をおく単極通電法を用いることになる。物理療法の電気刺激療法では主な表在筋のモータポイントが報告され、刺激電極の装着部位として広く認識されている。モータポイントは、筋線維の中間部辺りに存在することから、筋活動によって筋長が変わると共に移動することが考えられる。即ち、皮膚に電極を装着して、電気刺激を行っている間に皮膚に張り付けた電極とモータポイントとの位置関係は変動する可能性が大きい。機能的電気刺激療法では、通常はモータポイントと推定される位置に電極を貼り付け、通電中に筋収縮が見られるかを確認しながら筋活動を促すことになる。しかし、関節角度の変動に伴い、モータポイントが移動して適切な筋への刺激ができなくなる可能性がある。そこで、本研究では等張性屈曲伸展運動時にモータポイントがどのように移動するかを調べた。
【方法】健康な若年男子18人を被験者(平均年齢:21.0±3.6歳(mean±S.D.))とした。椅子座位肩0°、肘90°での被験者の肘屈曲MVCを測定して、その10%以下になるように負荷を加えて、肘45°から135°の屈曲運動5秒、伸展運動を5秒で往復運動を繰り返させた。同時に8チャネル9本のワイヤーで構成される表面電極列を上腕二頭筋内側の短頭に筋線維方向に取り付けて8チャネルの筋電図を記録した。筋電図波形を0.5秒毎に区切って加算平均しながらモータポイントの位置を推定した。
【説明と同意】研究の目的と方法、予測される負担について資料を提示して充分に説明を行い、同意を得た人だけを被験者にした。
【結果】200余りの波形を加算平均することで活動電位が筋線維方向に沿って伝導する様子が観測された。最初に伝導が始まる位置をモータポイントとした。全被験者において肘の屈曲伸展動作に合わせてチャネル1から8に及ぶモータポイントの移動が観測された。
【考察】本法では、随意運動時の表面筋電図から推定したモータポイントが常に移動していることを明らかにした。今回の実験は、電気刺激用の電極の位置が適切で効率よく筋収縮が起きたとしても、その後モータポイントのずれによって刺激の効果が低下する可能性があることを示唆する。肘伸展において、上腕二頭筋の神経支配域が、皮膚に対して5~30mmも遠位に移動するとの報告があり、神経支配域はモータポイントとほぼ同様な部位と考えられる。大きな電極で目的とする筋を挟むようにして刺激する双極通電法もあるが、電流の密度は電極の大きさに反比例するので刺激効果は薄れることと、目的とする筋だけでなく周囲の筋にも刺激が伝わって、目的としていない筋までもが同時に収縮が誘発される問題がある。本法は機能的電気刺激によって筋活動を最大限引き出すためにはモータポイントの移動を考慮して電極装着位置を再考する必要があることを示唆している。
【理学療法学研究としての意義】これまで効率よく筋に通電させるための電流の強度や波形形状を工夫した物理療法機器は数多く用いられている。これらの機器を活用して筋の刺激を与えるためには、刺激用電極の最適な位置を検討する必要がある。本研究は電気療法により筋収縮を充分に誘発させるために用いることができる。
著者関連情報
© 2011 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top