理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 口述
腰椎疾患患者における姿勢の変化と腹部深層筋,腰椎骨盤alignmentの関係について
諏訪 健司前田 新之介橋之口 塁本武 千典米 和徳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Aa0150

詳細
抄録
【はじめに、目的】 近年,腰椎疾患の理学療法において,体幹表層筋のみでなく体幹深層筋による脊柱安定化機能が注目されている。その中で,深部軟部組織の形態計測に超音波画像装置を用いた報告があり,体幹部の筋厚計測においては高い信頼性も示され,健常人において腹部深層筋は、姿勢の変化や骨盤alignmentとの間に強い関係があるとされている。しかし,腰椎疾患患者を対象にした報告は少ないため,腹部深層筋が腰椎疾患患者の症状や姿勢に及ぼす影響は未だ十分に明らかにされているとはいえない。本研究の目的は,腰椎疾患患者を対象に,超音波画像装置を用いて,腹部深層筋厚を安静時およびいくつかの課題遂行時に計測し,姿勢の変化に対する筋厚の変化,また筋厚と腰椎骨盤alignmentや腰部および下肢機能,疼痛との関係について検討することである。【方法】 対象は,本研究の趣旨を理解し,同意が得られた腰椎疾患患者で,腰部もしくは下肢に疼痛,痺れなどの症状のある15名(男性8名,女性7名,平均年齢59.5±18.0歳,平均身長158.5±9.1cm,平均体重57.6±11.0kg)である。腹部深層筋の筋厚計測は,腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋を対象として,超音波画像装置(GE Medical Systems VIVID I CE034)を用いて計測した。計測肢位は,1)背臥位安静呼気;上肢を胸の前方で組み膝窩部に枕を入れた状態,2)自動での下肢伸展挙上(以下,ASLR);片方の膝関節を90°屈曲しASLRを屈曲した膝関節の高さまで行い,挙上した下肢が安定した状態,3)背臥位マンシェット;背臥位安静呼気の状態から腰部に液柱型血圧計水銀マンシェットを入れ,脊柱,後上腸骨棘縁にマンシェットが触れている状態,4)立位安静呼気;背部を壁面に接地させて下肢を肩幅に開き,上肢を胸の前で組んだ状態,5)立位マンシェット;立位安静呼気の状態から腰部にマンシェットを入れ,脊柱,後上腸骨棘縁にマンシェットが触れている状態にて行なった。X-Pの計測は,腰仙角(以下,SS)と腰椎前弯角(以下,LLA)を計測し,その他に疼痛の程度(以下,VAS),指床間距離(以下,FFD)をそれぞれ計測した。統計処理は,統計処理ソフトSPSSを使用した。背臥位安静呼気時の腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の筋厚を左右それぞれ各3回ずつ計測,その筋厚合計の平均をもとに,それ以外の肢位での筋厚計測の平均を正規化し比較,Pearsonの相関係数を用いて危険率5パーセント未満にて算出した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,医療法人三愛会倫理委員会の承認を受け,対象者には今回の趣旨を十分に説明し,同意書にて同意を得た。【結果】 姿勢の変化に対する腹部深層筋厚の変化については,腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の順に筋厚の平均が増加した。腹部深層筋厚とSSの関係は,ASLR時の外腹斜筋厚(p<0.01)と腹横筋厚,背臥位マンシェット時の外腹斜筋厚,立位安静呼気時の腹横筋厚(p<0.05)の間に有意な相関を認めた。腹部深層筋厚とLLAの関係は,ASLR時の腹横筋厚と立位マンシェット時の内腹斜筋厚(p<0.05)の間に有意な相関を認めた。腹部深層筋とVAS,FFDとの関係は,それぞれ有意な相関は認めなかった。【考察】 まず,姿勢による筋活動の変化として,背臥位と立位とを比較すると,立位では腹部深層筋厚の増加が認められ,抗重力姿勢において骨盤と胸郭,脊柱を連結しているグローバル筋群の活動と共に腰椎の安定を保つローカル筋群,特に最も深部に位置する腹横筋の筋活動が大きいことが確認できた。次に,腹部深層筋とX線計測の結果に関して,SSとの関係ついては,SSの増大に伴い腹部深層筋厚の増大の傾向があることが確認できた。LLAとの関係については,下肢の運動や腹部筋の随意収縮によって腹部深層筋厚が増大し,LLAも増大する傾向にあった。これらの結果より,腰椎疾患患者において,腹部深層筋と腰椎骨盤alignmentの相互関係が認められることが明らかとなった。また,腹部深層筋は腰椎単独ではなく,骨盤,股関節とも関係することが強く示唆され,腰椎前弯,骨盤前傾の増加で腹部深層筋が優位に活動,あるいは,腹部深層筋の活動により腰椎前弯,骨盤前傾の増加があるとの知見が得られた。しかし,VAS,FFDについては有意な相関は認められず,腹部深層筋は痛みや前屈動作などへの影響が低いことが示された。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果より,腹部深層筋厚は,背臥位と比べ立位で腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の順で平均筋厚が増加した。腹部深層筋厚と腰椎骨盤alignmentの関係については,腰椎前弯,骨盤前傾の増加で腹部深層筋が優位に活動,あるいは,その活動により腰椎前弯,骨盤前傾の増加があるとの知見が得られた。また,腹部深層筋の活動は,腰椎だけでなく骨盤,股関節とも強い関係があることも示唆された。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top