抄録
【はじめに、目的】 大腿四頭筋に関してはこれまでに多くの報告があるが,深層に位置する中間広筋機能に関する報告はほとんどない.我々は第46回日本理学療法学術大会において,超音波診断装置を用いて体重支持指数(以下WBI:weight bearing index)と大腿四頭筋各筋厚の関係について検証し,膝70度屈曲位における中間広筋厚とWBIとの間に有意な正の相関があったことを報告した.しかしながら,筋厚と筋力,および筋量(断面積)の関係を示す報告は殆どなくエビデンスを得ていない.そこで今回,Watanabeらの報告で示された表面筋電図による中間広筋放電の導出方法に基づき,角度変化と大腿四頭筋各筋の面積積分値,およびWBIと各筋面積積分値比との関係を検証した.【方法】 対象は下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常人男性32名(平均年齢は24.4±4.1歳,平均体重は64.8±9,1kg,平均身長は169.33±8.2cm)とした.表面筋電図の測定筋は右側の大腿直筋(以下RF),内側広筋(以下VM), 外側広筋(以下VL),中間広筋(以下VI)の4筋とした.導出部位としてRFは下前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結ぶ線の中央部位,VMは膝蓋骨上縁より筋腹に沿って4横指部位,VLは膝蓋骨上縁より筋腹に沿って5横指部位,VIはVL筋腹停止部位から膝蓋骨上縁までの間隙とした.なおVI導出に際しては超音波診断装置を用いてVI筋腹が表層近くで膨隆する部位を確認したうえ行った.電極は皮膚の電気抵抗を考慮し十分な処理を行い,電極中心距離は20mm,各筋線維走行に並行に貼付した.測定にはキッセイコムテック社製BIMUTASIIを用いた. まず座位にて膝伸展0度(徒手筋力検査法に基づく段階5の肢位)における右大腿四頭筋の最大随意等尺性収縮(以下,MVC: maximum voluntary contraction)時の筋活動量を計測した.筋活動量は付属のプログラムによって計算された面積積分値により評価した.次に右膝関節屈曲30度,45度,70度位における大腿四頭筋各筋のMVCより面積積分値を計算し,0度でのMVCに対する割合(以下,%MVC)を計算して各筋間で比較検討した.測定は1回で5秒間のMVCを実施し,間3秒間の面積積分値を用いた.測定肢位はBIODEX上端座位とし,角度調整もBIODEXにて行った. WBIは座位にて膝関節70度屈曲位, MVCを測定し,体重比にて算出した.比較項目は1)WBIと各角度におけるVI/RF比, VI/VM比, VI/VL比,2)各筋の角度別筋積分値の変化とした.統計処理には角度別の面積筋積分値の比較にはSPSSによる一 元配置分散分析法,および多重比較(Bonferroni法)用い,WBIとVI/RF比, VI/VM比, VI/VL比の関係にはPearsonの相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 全ての被験者には動作を口頭および文章にて研究趣旨を十分に説明し,同意を得たのちに検証を行った.【結果】 膝伸展トルクは膝70度で最高値を示し角度減少に伴い低値を示した.面積積分値の比較では,RFにおいて70度(平均240.4±173.8%)と30度(平均136.5±115.4%)に有意差を認めた(p<0.05).同様にVLにおいても70度(平均307.7±236.8%)と30度(平均190.1±167.9 %)に有意差を認めた(p<0.05).VIにおいては70度(平均397.2±369.3 %)と45度(平均213.7±198.2 %),70度と30度(平均55.4±44.2%),45度と30度間で有意差を認めた(p<0.05).VMは角度変化での面積積分値に有意差は認めなかった.WBIと各筋比の関係においては,70度のWBI(平均114.13±13.57)とVI/RF比(平均2.0±1.9)(r=0.6,p<0.01), VI/VL比(平均3.9±3.7)(r=0.41,p<0.01)に中等度の正の相関を認め,VI/VM比(平均2.2±2.3)(r=0.37,p<0.01)との間に弱い正の相関を認めた.【考察】 面積積分値の結果よりRF,VLは屈曲70度,45度間では同程度認められ,屈曲45度から30度間で活動に変化が起こることが示唆された.VMは他3筋の活動が屈曲30度で低下する中で,角度に影響なく同程度の活動を示し,特に膝屈曲30度からの膝伸展運動への大きな関与が示された.VIにおいては屈曲70度,45度,30度と角度減少に従い有意に低値を示したこと,またWBIとVI/RFの関係より,屈曲70度でのVI機能は身体移動能力・体力指数であるWBIに大きく関与していることを示した.また膝傷害予防の観点からも更なる検証が必要と考える.【理学療法学研究としての意義】 VMの結果より膝伸展最終域における重要性を確認した.身体移動能力指数・体力指数であるWBIとVI機能の関係を示した.今後は選択的なVIトレーニング方法の確立へ向けて負荷量・肢位についての検証が必要である.また今回は健常人のみの検証であり,対象群との比較,CKC下での変化について検討したい.