理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
Patterned afferent electrical stimulationと経頭蓋直流電気刺激の同時適用が脊髄介在ニューロンに与える影響
山口 智史藤原 俊之Yun-An Tsai里宇 明元
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p. Aa0874

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抄録
【はじめに、目的】 Patterned afferent electrical stimulation (PES)は,末梢神経からの高周波感覚刺激によってdisynaptic reciprocal inhibition(RI) を修飾し,脊髄可塑性を誘導することが知られている(Perez et al, 2003).また経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は,極性に依存して,大脳皮質の興奮性を変化させることが可能である.Fujiwara et al.(2011)は,tDCSによる皮質運動野の興奮性の変化が,PESによるRIの修飾を変化させることを報告している.今回,われわれは,PESとtDCSの同時使用によるRIの変化を検討した.【方法】 対象は健常成人10名(平均年齢32.1±4.2歳,男性7名,女性3名).PESは周波数100Hzの刺激パルス10発を1 trainとして,この刺激trainを0.5Hzで20分間刺激するものである.刺激は総腓骨神経に行い,刺激強度は前脛骨筋の運動閾値とした.tDCSは,刺激強度を1mAとし10分間行った.Anodal tDCSでは陽極電極を,左側下肢一次運動野の直上に置き,陰極電極を対側右眼窩上に置いた.Cathodal tDCSでは陰極電極を,左側下肢一次運動野の直上,陰極電極を対側右眼窩上に置いた.課題は,1)PESのみを20分間行う(PES),2)PES20分のうち最初の10分間にanodal tDCSを同時に加える(anodal tDCS+PES),3)同様にcathodal tDCSを10分間同時に行う(cathodal tDCS+PES)の3課題とした.課題はそれぞれ1週間以上の間隔をあけて実施した. 評価は,ヒラメ筋H波を用いた条件―試験刺激法により,RIを測定した.解析は,試験刺激のみで誘発されるH波振幅に対して条件刺激を与えたときのH波振幅の比を求め,条件刺激によるH波振幅の減少をRIの強さとした.試験刺激は脛骨神経にて行い,M波最大振幅の10~20%の振幅のH波が誘発される刺激強度とした.条件刺激は腓骨頭の位置で総腓骨神経を刺激し,その強度は前脛骨筋の運動閾値とした.また条件-試験刺激間隔は0,1,2msecとした.測定は介入前,10分間の介入後,20分間の介入後,および,持続効果を検討するために介入終了後10分と20分に実施した.統計解析は,反復測定2元配置分散分析,多重比較検定(Bonferroni)を用い,有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属施設の倫理委員会での承認を受けたうえで,被検者に実験内容を十分に説明し,本人の意志により書面にて同意をえた.【結果】 分散分析の結果から,課題(PESのみ,anodal tDCS+PES, cathodal tDCS+PES) と 評価 (介入前, 10分間の介入後, 20分間の介入後, 介入終了後10分,介入終了後 20分)に交互作用を認めた(F [8, 64] = 13.17, p < 0.01).多重比較検定では,PESのみでは,介入前と比較し,20分間の介入後および介入終了後10分において,RIが有意に増強した.Anodal tDCS+PESにおいて,介入前と比較し,10分間の介入後から介入終了後20分まですべての評価で有意にRIの増強を認めた.一方で,cathodal tDCS+PESでは,有意差を認めなかった.【考察】 本研究の結果から,PESとanodal tDCSを同時に行うことによって,PESのみと比較し,RIが早期に増強され,その効果が持続することが示唆された. 今回,PESのみでは20分間の介入後にRIの増強を認めた.一方で,PESとanodal tDCSを同時使用することによって,10分間の介入後にRIが増強した.これは,RI増強には感覚刺激と同時に皮質興奮性を高めることが重要であることを示唆するものと考えられる.また効果の持続においても,PESのみと比べ,anodal tDCSを同時に行うことでRIの増強が持続した.さらに,PESとcathodal tDCSを同時に行うことで,RIの増強は消失した.このことから,RIの効果持続においても,皮質興奮性が関与していることが示唆される.今後,中枢神経疾患例を対象として,RIの障害に伴なった痙縮や同時収縮などの運動障害に対しても,その効果を検討していきたい.【理学療法学研究としての意義】 本研究は,PES とanodal tDCSを組み合わせることで,PESにより得られるRI修飾効果を促進する可能性を示した.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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