理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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側方立位バランス制御における股関節外転筋とWBIの関係
岩本 博行松岡 健江口 淳子藤原 賢吾田代 成美江島 智子清水 紀恵古田 幸一高山 正伸中山 彰一
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p. Ab0657

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抄録
【はじめに、目的】 高齢者運動能力測定項目の柔軟性・バランス能力評価としてファンクショナル・リーチがあり、特定高齢者・要支援高齢者別のアウトカム指標となっている。側方立位バランス(以下、バランス)制御として主に股関節戦略を用いており、その中でも股関節外転筋力(以下、外転筋力)の関与は大きいと言われている。黄川らによると体重支持指数(Weight Bearing Index:以下、WBI)は人が重力に対してどれだけの運動機能を持っているかということを示す指数であり、体力を表す指数であるとしている。我々は、第46回日本理学療法学術大会にて側方立位バランス制御とWBIに正の相関があることを報告した。そこで、今回は健常成人による外転筋力とWBIの関係、外転筋力とバランス制御の関係について検討した。【方法】 対象は平衡機能、下肢・体幹機能に問題のない健常成人34名(男性24名、女性10名)、年齢は平均23.5±3.4歳、身長は平均166.8±8.9cm、体重は平均63.4±14.3kgであった。ボールを蹴る際に、身体を支える側を支持足とすると、右が1名、左が33名であった。外転筋力、WBIの測定にはBiodex社製system3を用いた。外転筋力は側臥位にて股関節中間位、股関節外転筋等尺性最大筋力を測定し体重比にて算出した(単位 Nm/kg)。また、WBIは膝関節70°屈曲位、膝関節伸展筋等尺性最大筋力を測定し体重比にて算出した。測定時間は7秒間、インターバル10秒とし、左右2回ずつ行い平均値を外転筋力、WBIの値とした。バランス制御の評価として側方ファンクショナル・リーチを用い、数値を身長比にて算出した。測定方法は閉脚立位で肩関節90°外転とし、その肢位のまま側方への重心移動を足底が床面から離れない最大距離とした。測定は左右2回ずつ行い平均値をバランスの値とした。比較項目は、1)左右の外転筋力と左右のWBI 、 2)左右の外転筋力と左右のバランス、3)外転筋力と反対側のバランスの関係とした。統計学的解析はPearsonの相関係数を用いた。また、外転筋力、WBI、バランスの左右比較に対応のあるt検定を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全ての被験者には動作を口頭および文章にて研究の趣旨を十分に説明し、同意を得たのちに実験を行った。【結果】 各項目の平均は、右外転筋力(平均1.59±0.35)、左外転筋力(平均1.55±0.30)、右WBI(平均109.36±24.77)、左WBI(平均101.01±25.06)、右バランス(平均0.11±0.02)、左バランス(平均0.10±0.02)であった。右外転筋力と右WBIにおいて中等度の正の相関(r=0.47、p<0.01)、左外転筋力と左WBIにおいても中等度の相関を認めた(r=0.63、p<0.01)。右外転筋力と右バランスにおいて相関を認めず(r=0.25、p>0.05)、左外転筋力と左バランスにおいては弱い相関を認めた(r=0.37、p<0.05)。右外転筋力と左バランスにおいて中等度の相関を認め(r=0.52、p<0.01)、左外転筋力と右バランスにおいては相関を認めなかった(r=0.20、p>0.05)。左右の比較では右のWBI、バランスが有意に大きい値を示した(p<0.05)。【考察】 今回の結果から、外転筋力とWBIにおいて正の相関が認められたことより、WBIが高値であるなら股関節外転筋力も高いことが示唆された。左バランスにおいて左右外転筋力との正の相関が認められたが、右バランスにおいては左右外転筋力とも相関は認められなかった。臼井らは人間本来の支持足は左であるとし、下肢のlateralizationについての報告をしている。今回、対象者の大多数が左下肢を支持足にしており、左バランス時に左下肢が支持足の機能を果たし、左右の外転筋が優位に働くが、右バランスにおいては、外転筋の働きによってバランスを制御しているのではなく、他の筋が代償している可能性がある。これは前回の報告より、WBIと側方立位バランスにおいて相関があったこと、また、左右の外転筋力において有意差が認められなかったが、左右のWBI、バランスにおいて右が有意に大きかったことからも膝関節伸展筋の代償が考えられる。市橋らは、外転筋はClosed Kinetic Chain(以下、CKC)では発揮できるが、Open Kinetic Chain(以下、OKC)では発揮できないと報告しており、それによって、右バランスと外転筋力に相関が認められなかったのではないかと考えられる。今後の課題として外転筋力をCKCにて測定し、その値と側方バランス制御との関係を検討し、併せて下肢のlateralizationについての研究も行っていく必要があると思われる。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究でWBIを測定することで、外転筋力を予測できる可能性が示唆された。側方へのバランス能力をOKCでの外転筋力で予測するのは困難であり、MMTの外転筋力数値から側方バランス能力を予測するのは困難であることが考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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