理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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立位での骨盤の水平面運動時における体幹の運動特性
江戸 優裕柿崎 藤泰山本 澄子
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p. Ab0684

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抄録
【はじめに】 体幹の運動は身体運動に多大な影響を与えるため、その分析は重要である。しかし、体幹は多くの椎体や肋骨等によって構成されるために複雑な動きを呈することから、その動態を正確に把握することは容易ではない。体幹運動の解析では回旋に関わる報告が散見される。物理学的には剛体の運動は回転と並進で表わされるため、体幹運動についても回旋に加えて並進に着目して分析することで、より本質的な動態の把握に繋がるものと考える。そのような観点から、前回大会において我々は体幹の回旋運動には胸郭の前後左右への並進が伴い、更に前後並進と左右並進は相反関係にあることを報告した。今回は逆に骨盤の前後左右への並進運動に伴う体幹の回旋運動を計測し、体幹の運動特性について検討したので報告する。【方法】 対象は健常成人16名(男性11名・女性5名、年齢26.0±3.8歳)とした。対象者の両側のASIS・PSIS・烏口突起、及び第1胸椎棘突起の計7点に赤外線反射標点を貼付し、以下の計測動作中の標点の位置を三次元動作解析装置VICON-MX(VICON社製)を用いて計測した。計測課題は静止立位(Neutral)と、立位から骨盤を前方(Anterior)・後方(Posterior)・右方(Right)・左方(Left)に最大まで移動させ、再び立位に戻る動作の計5種類とした。得られた標点の位置データから骨盤と上部体幹の絶対的な回旋角度と、両者の相対的な回旋角度[全て右回旋+]を算出した。そして、静止立位課題については5秒間の平均値、骨盤運動課題については骨盤の最大移動時点の値を抽出し、更にそれらの4回分の計測値を平均したものを代表値として分析に使用した。統計学的分析には、各課題動作間における回旋角度の関係を検討する目的でPearsonの積率相関係数、及び1要因5水準の反復測定による分散分析とpost hoc検定にTukey法を用いた。尚、全ての検定における有意水準は危険率1%(p<0.01)で判定した。【説明と同意】 対象者には事前に研究の主旨を説明し、研究協力についての同意書を締結した。【結果】 相関分析の結果から、骨盤回旋角度については、NeutralとAnterior(r=0.69)、AnteriorとPosterior(r=0.70)、AnteriorとLeft(r=0.70)、PosteriorとRight(r=0.73)に相関を認めた。上部体幹回旋角度については、NeutralとPosterior(r=0.64)、AnteriorとPosterior(r=0.81)に相関を認めた。骨盤に対する上部体幹の回旋角度については、NeutralとAnterior(r=0.69)、NeutralとPosterior(r=0.66)、AnteriorとPosterior(r=0.87)、PosteriorとLeft(r=0.64)に相関を認めた。群間比較の結果から、骨盤回旋角度については全ての群間で差が認められなかった。上部体幹回旋角度については、RightとLeftにおいて群間差が認められ、RightはLeftに比べて左回旋していた。骨盤に対する上部体幹の回旋角度については、Rightと他の4課題、Leftと他の4課題において群間差が認められ、他の課題に比べてRightは左回旋、Leftは右回旋していた。【考察】 本研究の結果から、Neutral・Anterior・Posteriorという骨盤の前後を成す運動方向においては、多くの項目で回旋角度に正の相関を認めた。一方で、Neutral・Right・Leftという骨盤の左右を成す運動方向においては、いずれの回旋角度にも相関を認めなかった。これらのことから、骨盤の前後移動は身体の回旋肢位を変化させずに独立して生じるが、骨盤の左右移動時の身体の対応はバリエーションを有することが示された。また、群間比較においてRightは上部体幹が左回旋し、Leftは上部体幹が右回旋していたことから、骨盤の左右方向への移動時は移動と反対側への上部体幹の回旋を伴う動作特性があることが分かった。【理学療法学研究としての意義】 立位における骨盤の前後移動と左右移動では、副次的に生じる体幹回旋運動に異なる性質があることが分かった。前後移動では対象者固有の身体特性に従う動きとなり、左右移動では個人の身体特性に加えて運動課題による動作特性が影響する動きとなることが示唆された。このことは体幹運動の評価にとって有益な情報であると考える。しかし、本研究で計測した体幹運動は骨盤と上部体幹の回旋であり、その間の部分での運動に関しては言及することができない。腰部や下位胸郭での運動については、臨床での直接的評価が必要である。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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