理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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周期的な等尺性筋収縮のタイミングと筋出力調節の特性
滝本 幸治竹林 秀晃宮本 謙三宅間 豊井上 佳和宮本 祥子岡部 孝生椛 秀人
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p. Ab1095

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抄録
【はじめに】 聴覚リズム刺激(rhythmic auditory stimulation:RAS)は、リハビリテーション治療における運動コントロールを改善するために、聴覚リズムが運動系に及ぼす生理学的効果を応用した神経学的技法である(Thaut, 2005)。これまでRASを用いた運動介入効果が報告されているが、治療に用いられるテンポは対象者の能力に合わせて調節されているのが現状で、明確な基準は存在しない。手指タッピング課題を用いた先行研究では、テンポによりタッピング精度や異なる神経回路の関与が報告されているが、下肢においてはそのような知見は不十分である。また、周期運動時の力の制御能力がテンポ速度の影響を受けるか否かについての知見も見当たらない。そこで今回は、下肢の周期的な等尺性筋収縮課題を行い、異なるテンポによる筋出力調節の特性について検討したので報告する。【方法】 対象は本学在籍の学生6名(平均年齢22.3±5.2歳、男女各3名)であり、全対象者の利き足は右であった。対象者は、膝関節90°屈曲、足関節中間位の端坐位をとり、利き足の前足部直下の床面に設置された筋力測定装置(フロンティアメディック社製)上に右足部を置いた。対象者は実験に先立ち、同肢位にて最大等尺性足底屈力(maximum voluntary contraction:MVC)を測定した。筋力測定装置により得られたデータは、A/D変換しサンプリング周波数1kHzでPCに取り込んだ。実験課題は、練習試行と再生試行で構成された。両試行の共通事項は、異なる3つのテンポ(2.0Hz、1.0Hz、0.5Hz)下で、20%MVCを目標筋出力値とした周期的な等尺性足底屈力発揮(以下、足タッピング)を行うことである。練習試行では、各テンポと同期した足タッピングができるようにRASを聴取し、PCモニターに表示される目標ラインと自身の筋出力値を視覚的に確認しながら20%MVCの筋出力調整を行った。RASには電子メトロノーム(SEIKO社製)を用いた。各テンポにつき50回の足タッピングを3セット行い、目標テンポ間隔と目標筋力を習得するよう教示した。再生試行では、RASとPCモニターを取り除き、練習試行で行った目標テンポ間隔で目標筋力の再現を要求した。再生試行は50回の足タッピングを1セットのみ実施した。データ解析は、50回のうち中間30回(11~40回目)の足タッピングを対象に行った。練習試行のデータは3セット目のものを用いた。各足タッピングの筋出力ピーク値を抽出し、目標テンポ間隔と2つの連続するピーク値より求めた足タッピング間隔との誤差を求め、タッピング間隔誤差の絶対平均、恒常平均、タッピング間隔の変動係数(CV)を求めた。また、各対象者の20%MVC値とピーク値との誤差である筋出力誤差の絶対平均、恒常平均、筋出力ピーク値のCVを求めた。統計学的分析として、異なる試行とテンポが足タッピング間隔や筋出力誤差に及ぼす影響を検討するため、2(練習・再生試行)×3(2.0Hz、1.0Hz、0.5Hz)の二要因分散分析を行った。主効果を認めた場合には、Tukey法を用いて多重比較を行った。いずれも有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 対象者には事前に本研究の目的と方法を紙面にて説明し、同意を得た後に測定を実施した。また、実験プロトコルは学内倫理委員会の承認を得た。【結果】 タッピング間隔誤差の絶対平均は、両試行ともに2.0Hz<1.0Hz<0.5Hzの順でテンポが遅いほど有意に誤差が大きくなり、恒常平均でも同様の傾向を認めた。練習試行と再生試行間では、テンポが遅いほど再生試行の誤差が大きい傾向であった。タッピング間隔のCVは、異なるテンポおよび試行間で有意差を認めなかった。筋出力誤差の絶対平均では、再生試行のみ1.0Hzと0.5Hz間で有意差を認め、0.5Hzでより誤差が大きかった。絶対平均と恒常平均ともに、0.5Hzでの誤差が練習試行より再生試行で大きい傾向を示したが、統計学的有意差は認めなかった。筋出力誤差のCVは、異なるテンポおよび試行間で有意差を認めなかった。【考察】 遅いテンポほどタッピング間隔誤差が大きくなることは、手指タッピング課題を用いた先行知見の結果に合致するものである。0.5Hzの遅いテンポは速いテンポとは異なり、周期運動の遂行に認知的な制御が求められ課題難易度が高いことが知られている。結果、特に再生試行において修正の手掛かりとなるRASがなかったことが、再生試行でのタッピング間隔誤差を大きくしたと考えられる。筋出力誤差については、遅いテンポでの周期運動保持には認知的負荷がかかり、二重課題条件下では周期運動間隔の誤差が拡大することが報告されている(Miyake, 2004)。つまり、足タッピング間隔保持に注意資源が投入されたことが筋出力調整誤差に影響したと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 異なるテンポによる筋出力調節能力の特性を知ることは、歩行をはじめとした周期運動の機能的向上を目的とした介入時の刺激条件設定の根拠になる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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