理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
振動刺激による反応時間測定装置の開発と評価
浅海 岩生松林 義人佐々木 理恵子小川 洋介林 克樹高野 美智子武末 和彦井林 雪郎
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p. Ab1339

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抄録
【はじめに、目的】 臨床で使用される反応時間測定は、多くがコンピュータ・ディスプレーよりの視覚刺激に対する動作開始時間(以下、視覚RT)を測定するものであるが、振動刺激に対する反応時間(以下、振動RT)を測定した例は少ない。そこでパソコンより振動刺激をコントロールできるWiiリモコン(任天堂社製)を使用し振動RTと従来型の視覚RTが測定可能なシステムを開発しその信頼性を検証すると共に視覚RTとの関連性について検討した。【方法】 今回開発した振動RT測定装置は、振動子と反応応答スイッチはWiiリモコン内のものを利用し作成した。このリモコンはパソコンより独自に開発した制御プログラムで反応時間を測定した。また測定プログラムはコンピュータ・ディスプレー上に表示される直径2cmの白色光点の表示後、素早く応答スイッチを押すまでの時間(視覚RT)も測定可能とした。このプログラムの精度はリモコンのスイッチおよび振動子より電気的変化を導出しA/Dコンバーターを通し別コンピュータで測定し実際の反応時間を導いた。この値と反応時間測定プログラムの算出値との誤差を出し精度を検証した。また振動子の振動特性はデジタル表示式振動計(昭和計測製MODEL1332B)を使用し測定した。さらに振動RTの正常域を調査するため健常者34名(平均28.7±SD7.5歳)により足底の反応時間を測定した。また視覚RT測定も合わせて実施した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は新潟リハビリテーション大学倫理審査委員会および誠愛リハビリテーション病院倫理審査委員会の承認を得て行った。被験者に実験内容を十分説明した上で研究参加同意書に署名を頂き実験を実施した。【結果】 (1)振動RT測定機の特性と精度;振動子の特性測定は振動板上に振動計のセンサーを固定し測定した。加速度振動量は10.3m/sec、速度振動量は6.2mm/sec、変位振動量は0.02mmまた周波数は191.4Hzであった。また反応時間の精度は電気的信号より得たものとプログラムにより算出した値との誤差で相関係数を求めると振動刺激で誤差0.38±5.5msec(n=94)、相関係数r=0.996(p<0.01)、視覚刺激で誤差0.39±6.5msec(n=98)、r=0.995(p<0.01)であった。(2)反応時間の正常域と特性;利き足振動RTは317±37msec、非利き足は314±32msec、視覚RTは278±24msecであった。また利き足と非利き足の振動RT間に有意差は認められなかったが(p=0.334)、視覚RTは振動RTに比較し小さかった(p<0.01)。また各変量の相関を分析すると年齢と両反応時間とも相関を示さなかった。また利き足・非利き足間ではr=0.83(p<0.01)と強い相関を示した。視覚刺激と非利き足の振動RTではr=0.34(p<0.05)とごく弱い相関を認めたが利き足では相関はなかった。【考察】 今回開発した振動刺激による反応時間測定装置は、安定した出力が得られ測定精度も誤差0.38±5.5msecと過去我々が研究してきた視覚RTと殆ど変りない誤差を示したことより充分使用できるものと思われる。また健常被験者の振動RTでは利き足と非利き足では差は認められなかった。これは反応の求心路と処理系に左右差がないことを示す。また今回は反応スイッチを利き手のみで操作したのでさらに差が出にくかったと考えられる。視覚RTが振動RTより小さかった理由に関しては、一般的には体性感覚刺激の反応速度の方が視覚刺激より速いと言われているが、本実験では振動RTの求心路は足底より脳までと長いため視覚RTと差が出たものと考えられた。相関分析で年齢とRTとの間に相関を示さなかったのは本測定では年齢層が20~30歳代が中心であり年齢層の偏りがあったためと思われた。振動RTが利き足・非利き足間で強い相関を示したものの、視覚RTと振動RTでは相関が少なかったことは、前者については両足の反応時間に差がなかったことより個々の被験者の情報処理速度が反映したもので、後者については刺激の種類により個体内でも処理時間にばらつきがあることを示すものと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究は振動RTを測定する装置を開発し、その信頼性を機械面と従来用いてきた視覚RTとの間で比較検討した。立位歩行においては、視覚よりのフィードバク制御と共に体性感覚よりの情報も重要となってくる。その中で皮膚からの情報の変化を捉え運動に至る速度を評価することも重要と考え本装置の開発に至った。本研究では装置の信頼性を検証し視覚RTと同様に使用できることが確認できた。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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