抄録
【はじめに、目的】 当診療所は1987年に市内の乳幼児から高齢者に至る「障害者に対する地域リハビリテーションの中核機関」として設置された。その中で診療所は、入院患者や外来患者、生活支援施設の入所者に対して理学療法(以下、PT)を提供している。今回、長期間、継続的に外来でのPTを実施している者の現状を調査し、障害者支援におけるPTの内容や長期にわたるフォローアップの意義について検討したので報告する。【方法】 調査対象は、2011年4月から10月(6ヶ月間)にPT処方があったもの215件のうち、過去2年以上前にPTを実施している者を「長期フォロー群」とし、カルテより後方視的に年齢、性別、疾患・障害の内訳、障害の経過期間、実施内容・頻度・期間、理学療法士以外の依頼職種の有無を調査した。「長期フォロー群」の特徴を把握するため、同期間において始めて外来PTの対象となった者を「新患群」とし、調査内容を比較した。また、B.I.得点や継続期間における当センターの在宅サービスや補装具作製のためのクリニックなど、他のサービスの実施状況も調査した。【倫理的配慮、説明と同意】 当センター倫理委員会に倫理審査を申請し了承を得た。【結果】 「新患群」は74人(35%)、「長期フォロー群」は66人(31%)であった。平均年齢及び性別は、「新患群」48.9±19.7歳、男50人、女24人、「長期フォロー群」32.7±16.8歳、男33人、女33人であった。疾患の内訳は、「新患群」は、脳疾患・脳外傷が39人(53%)と約半数を占め、次いで神経・筋疾患9人、脊椎・脊髄疾患8人、脳性麻痺などの小児疾患が8人、骨関節疾患5人、切断2人、他3人であった。「長期フォロー群」は、神経・筋疾患21人、小児疾患が18人、脳疾患・脳外傷は17人の順で多く、脊椎・脊髄疾患4人、骨関節疾患1人、切断1人、他4人であった。障害発生からの経過年数は、「新患群」9.1±13.7年、「長期フォロー群」22.3±13.9年であった。PTの主な内容をみると、「新患群」では、生活状況を含めた機能評価が71人、改善に向けた訓練が48人、補装具検討が13人、ホームプログラムの検討が45人で、何らかの改善・獲得を図る内容が9割であった。頻度は「週1回」45人と「2週に1回」17人で8割以上を占めていた。「長期フォロー群」は、生活状況を含めた機能評価が65人、改善に向けた訓練が5人、維持に向けた訓練が41人、介助者への確認・指導が13人、補装具確認が16人、ADLの確認が21人、ホームプログラムの確認が24人などで、ほとんどが維持目的であった。頻度は「月1回」20人が多く、次に「3ヶ月に1回」が10人であった。他の職種が合わせて依頼されている場合は、11人で、8割以上はPTのみでのフォローであった。「長期フォロー群」の平均B.I.は40.2点で、継続期間中の在宅サービスの利用は26人、装具・補装具作製のためのクリニックの利用は58人であった。【考察】 今回、2年以上継続的に外来PTの対象者の現状を調査し、新患者と比較した。「長期フォロー群」は全体の約3割を占めており、「新患群」に比べ年齢が若く、重度障害の脳性麻痺といった小児疾患や、筋ジストロフィー症などの進行性疾患が多かった。実施内容は、月1~2回の頻度で、身体機能チェックとともに、機能維持に向けたホームプログラムの指導・確認を、理学療法士のみで実施していた。「新患群」に多くみられるような、脳卒中等の急性発症疾患の回復期から生活期への対応と異なり、「長期フォロー群」にみられる小児疾患や進行性疾患は、成長や病状の進行に伴い身体機能の低下や体力の低下、また、就学・就労といった社会生活上の参加の変化により生活上の障害が生じるため、現状の身体機能や生活機能の維持および身体機能や生活機能が低下した場合の機能等の改善がリハビリテーションの主な目的となる。このため、長期フォロー対象者に対する外来PTは、単に訓練を行うだけでなく、第一に長期間意欲を持って継続実施可能な個々の状況に合わせたホームプログラムの設定・確認とともに、変化に合わせて生活上で実践できる具体的な過ごし方をアドバイスすること、次に身体機能の変化を利用者自身がモニタリングできるように指導すること、さらに生活上の課題を解決するために補装具の利用や居宅での環境調整など、サービスと連携してPTを提供することが重要と思われた。本調査により長期フォロー対象者の現状が確認できた。今後はその効果について検証したい。【理学療法学研究としての意義】 地域リハビリテーションにおける医療機関の役割のうち、とくにPTによる長期的なフォローアップシステムの対象とすべき疾患やサービスにあり方の検討材料となる。