理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
温熱刺激による骨格筋肥大とHSP25およびHSP72発現誘導の生理学的意義
大野 善隆後藤 勝正
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キーワード: 温熱刺激, 骨格筋, 筋肥大
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p. Ae0041

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抄録
【目的】 温熱刺激は骨格筋肥大の促進、萎縮の抑制、萎縮からの回復促進を引き起こすことが報告されているが、その分子機構は未だ明らかでない。一方、温熱刺激を哺乳類骨格筋に負荷すると、ストレス応答により熱ショックタンパク質(heat shock proteins:HSPs)の発現が誘導される。HSPsは分子シャペロンとして機能し、タンパク質の合成や修復を促進すると考えられている。このストレス応答の制御には熱ショック転写因子(heat shock transcription factor 1:HSF1)が関与している。しかしながら、骨格筋細胞内における温熱刺激に対するHSF1を介したストレス応答やHSPs発現の生理学的意義は不明である。そこで本研究では、温熱刺激による骨格筋肥大におけるHSPs発現誘導の生理学的意義について、HSF1欠損(HSF1-null)マウスを用いて検討した。【方法】 本実験は、培養細胞実験ならびに動物実験の2つの実験系により構成された。培養細胞実験では、マウス骨格筋由来筋芽細胞(C2C12)を筋管細胞に分化させた後、温熱刺激(41℃、60分間)を負荷した。温熱刺激負荷前と負荷後12、24および48時間後に細胞を回収した。動物実験では、HSF1-null雄性マウスおよびwild-type(WT)雄性マウス(ICR)を用い、両マウス共に2群(温熱群および対照群)に分類した。温熱群のマウスを41℃の暑熱環境に60分間曝露した。なお、温熱負荷中マウスは自由に餌および水を摂取できるように配慮した。温熱刺激負荷前と負荷後1、3および7日目に両群のマウス後肢よりヒラメ筋を摘出し、結合組織を除去した後、筋湿重量を測定した。筋湿重量測定後、液体窒素を用いて急速凍結し、-80℃で保存した。採取した細胞ならびに摘出した組織はprotease inhibitor及びphosphatase inhibitorを含むライセートバッファーを用いてホモジネートし、Bradford法によりタンパク量を測定した。さらに、ウェスタンブロット法により、HSP25およびHSP70(HSC70、HSP72)の発現量を評価した。【倫理的配慮】 本研究における動物実験は豊橋創造大学が定める動物実験規定に基づき、豊橋創造大学生命倫理委員会の審査・承認を経て実施された。【結果】 培養細胞実験において、温熱刺激によるC2C12筋管細胞のタンパク量の増加が認められた。さらに、温熱刺激をC2C12筋管細胞に負荷することで、HSP25およびHSP72の発現量が増加した。しかし、培養細胞中のHSC70の発現量に温熱刺激の影響は認められなかった。また動物実験において、温熱刺激はマウスの体重に影響を与えなかった。WTマウスの筋重量および筋タンパク量は温熱刺激により増加した。さらに、温熱刺激はWTマウスのヒラメ筋におけるHSP25およびHSP72の発現を増加させた。一方、HSF1-nullマウスに対する温熱刺激は、筋湿重量に有意な変化をもたらさなかった。HSF1-nullマウスでは、温熱刺激によりHSP25発現量は増加したが、HSP72の発現には有意な変化は生じなかった。WTおよびHSF1-nullマウス共に、温熱刺激はヒラメ筋におけるHSC70の発現量に影響を与えなかった。【考察】 HSF1の欠損は、温熱刺激によるヒラメ筋の肥大ならびにHSP72発現量の増加を抑制した。したがって、温熱刺激による骨格筋肥大にはHSP72の発現増加が関与していることが強く示唆された。一方、温熱刺激によるHSP25発現量の増加はHSF1非依存性であり、温熱刺激による骨格筋肥大においてHSP25の関与は低いと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 温熱刺激のよる骨格筋の肥大には、骨格筋におけるHSF1依存性のストレス応答によるHSP72発現誘導が必要であると考えられた。温熱刺激による骨格筋肥大の分子機構が明らかになることで、安全かつ効率的な筋力増強法の開発につながり、中高齢者の健康維持及びリハビリテーションへ大きく貢献できると考えている。本研究の一部は文部科学省科学研究費(若手B,23700647; 基盤B, 20300218; 基盤A, 22240071; 基盤S, 19100009)ならびに日本私立学校振興・共済事業団による学術振興資金の助成を受けて実施された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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