理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
筋収縮強度が二連発磁気刺激による抑制および促通に及ぼす影響
小島 翔菅原 和広田巻 弘之桐本 光鈴木 誠大西 秀明
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p. Ae0053

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抄録
【目的】 経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation: TMS)を利用して大脳皮質一次運動野を刺激すると運動誘発電位(Motor Evoked Potentials: MEP)が末梢の筋から記録される. 単発刺激によるMEP振幅値は中枢神経系の興奮状態により変動することが報告されており臨床の場において皮質脊髄路の評価として用いられている.近年,10ms以下の刺激間隔で磁気刺激を与える二連発磁気刺激によりMEP振幅値が抑制または促通されることが報告され(kujirai et al. 1993),皮質内ネットワーク機能を評価できるとして注目されている.しかし,これらの研究は安静時に行っているものが多く筋活動時の変化を報告したものは少ない.また,単発刺激に比べ二連発磁気刺激に関する研究は少なく基礎的データが乏しいのが現状である.そこで,二連発磁気刺激法による皮質興奮性の促通および抑制効果の生理学的機序を解明することを目標として,本研究では筋収縮強度が二連発磁気刺激による皮質脊髄路の抑制および促通に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした.【方法】 対象は健常男性8名(28.8±9.2歳)であった. MEPの計測には磁気刺激装置Magstim 200(8の字コイル)を使用した.刺激部位は左大脳皮質一次運動野手指領域とし,導出筋は右第一背側骨間筋とした.二連発磁気刺激強度は,条件刺激を軽度筋収縮時運動閾値(Active Motor Threshold: AMT)の0.8倍,試験刺激を安静時運動閾値(Resting Motor Threshold: RMT_1mV)とした.AMTは軽度随意筋収縮中に100μVを50%以上の確率で誘発される強度とし,RMTは安静時に1mVを50%以上の確率で誘発される強度とした.刺激間隔は0ms(single),3ms(Short-interval Intracortical Inhibition: SICI)と10ms(Intracortical Facilitation : ICF)とし,0.2Hzの頻度で各8回の磁気刺激を行った.運動課題は右示指外転等尺性運動とし,安静時および最大随意収縮(MVC)の10,30,50%収縮中に各刺激間隔で合計24回の二連発磁気刺激をランダムに与えた.MEP振幅値は,それぞれの筋収縮レベルにおいて各刺激間隔より得られた波形の最大と最小のものを除いた6波形を加算平均し,peak to peakで算出した.刺激間隔におけるMEP振幅値の比較は反復測定による一元配置分散分析を用い,有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は新潟医療福祉大学倫理委員会の承認を得て実施した.また,すべての対象者には,本研究の目的や実験内容等について十分な説明を行い,書面にて参加の同意を得た.【結果】 本研究で用いた刺激強度は条件刺激で31.1±6.1%,試験刺激で56.6±8.8%であった.安静時におけるMEP振幅値は1.00±0.26mV(single),0.65±0.15mV(SICI),1.44±0.57mV(ICF)でありsingleに比べてSICIでは有意に低下し,ICFでは有意に増加した(p<0.05).また10%,30%MVC時でもそれぞれsingleに比べてSICIでは有意に低下し,ICFでは有意に増加した(p<0.05).50%MVC時のMEP振幅値は9.10±2.84mV(single),8.50±2.50mV(SICI),9.15±2.69mV(ICF)でありsingleに比べてSICIでは有意に低下したもののICFでは有意な差は認められなかった.【考察】 本研究において10%,30%MVC中のMEP振幅値は安静時と同様にSICIで抑制されICFで促通された.一方,50%MVC中ではSICIで抑制されるもののICFでの促通は認められなかった.単発刺激を用いた研究では,収縮強度の増加に伴ったMEP振幅値の増大が50%MVCまで認められるものの,それ以上の収縮強度で変化は認められなかったと報告されている(Muellbacher et al. 2000).本研究において10%,30%MVC時に比べ 50%MVC時では,筋収縮により多くの運動単位が動員されており皮質脊髄路の興奮性が高い状態のため二連発磁気刺激による促通が起こらなかったと考えられる.このことから50%MVC以上の皮質脊髄路の興奮性が高い状態では,二連発磁気刺激による促通は起こりにくいことが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 二連発磁気刺激法による生理学的機序を解明することは,二連発磁気刺激を皮質脊髄の評価として臨床応用するための基礎的データの提供になると考えられる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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