理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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急性期脳梗塞患者における早期転帰予測に影響を及ぼす因子の検討
村田 健児八角 真衣松本 純一久保 和也大宮 めぐみ篠田 恵美高橋 愛三輪 博志濱野 正昭
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p. Bb0529

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抄録
【はじめに、目的】 急性期脳梗塞患者において早期転帰予測は速やかな回復期病院への転院を判断する上で重要である。しかし,急性期脳梗塞患者に対する初期評価では,離床を進めていく上で不安定な血圧変動や進行性麻痺などを認め,医師より安静度などの制限が課せられることが多い。そのため,FIMなど用いた病棟ADLからの転帰予測は急性期病院では困難な現状であり,医師や理学療法士の経験による早期転帰予測がなされている。よって,急性期病院では患者背景や合併症,簡便かつ統一性のある初期評価による転帰予測や関与する因子の検討が求められるが,急性期脳梗塞患者の転帰予測は回復期病院と比較して報告は少ない。本研究目的は急性期脳梗塞患者における転帰の予測因子を患者背景や早期運動機能から検討することである。【方法】 2009年4月から2011年10月までに当院に入院した急性期脳梗塞患者(82例)を対象とした。情報はカルテより後方視的に収集し,自宅退院群と回復期病院転院群に分類した。その際,死亡患者,施設からの入院および施設への転院患者,認知症患者,高次脳機能障害患者は解析対象から除外した。予測因子は,患者背景4項目(年齢,性別,同居家族人数,合併症の有無),早期運動機能4項目(modified Rankin Scale:以下mRS,Barthel Index:以下BI,意識障害の有無,歩行開始までの日数)とした。合併症については,脳梗塞と関連の強い高血圧,糖尿病,心疾患の有無を調査した。解析は,正規性の検討後,自宅退院群と回復期転院群において各項目の2群間比較として対応のないt検定,Mann-Whitney検定,χ二乗検定を実施した。その後,自宅退院群と回復期病院転院群を従属変数,2群間の比較により有意水準が5%未満である項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施,オッズ比を算出した。なお,各独立変数における多重共線性は相関係数が絶対値0.8以上であるパラメータを削除した。統計解析ソフトは,R(version2.12.2)を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究に関与する情報抽出の際にはカルテ管理に十分に留意し,当院内倫理委員会の承認を得た。【結果】 急性期脳梗塞患者の属性は,自宅退院群62名(男性43名,女性19名,平均年齢69.5±10.9歳),回復期転院群20名(男性12名,女性8名,平均年齢70.9±7.6歳)であった。平均在院日数は,自宅退院群15.7±6.7日,回復期転院群34.5±7.4日(p<0.05)であった。2群間比較(自宅退院群,回復期転院群)の結果,有意差を示したのはBI(中央値90点,45点,p<0.01),歩行練習までの日数(平均2.1±1.5日,4.6±2.0日,p<0.01),意識障害の有無(p<0.01),mRS(p<0.01)の4項目であった。さらに,多重共線性が疑われたBI(r=0.895)とmRS(r=0.868)を除いた2項目(歩行練習までの日数,意識障害の有無)を独立変数とし,ロジスティック回帰分析を実施した。その結果,採用された独立変数は,歩行練習までの期間(オッズ比1.85,95%信頼区間1.29-2.63),意識障害の有無(オッズ比3.91,95%信頼区間1.05-14.5)が有意に関連していた。【考察】 本研究は,急性期脳梗塞患者における転帰予測因子を患者背景と早期運動機能により後方視的に検討した。急性期脳梗塞発症のリスク因子と認識されている高血圧や糖尿病などの合併症の有無は転帰に影響を及ぼさないことが示唆された。一方で,早期運動機能が転帰に影響を与えることが示され,なかでも意識障害や歩行練習介入までの期間の延長が転帰予測に関連していた。そのため,急性期脳梗塞患者における早期運動機能評価と早期理学療法介入の必要性が再認識され,評価項目として意識障害と歩行機能に着目する必要があると考える。今後の検討項目として,歩行機能獲得に関与する因子を運動麻痺の重症度や高次脳機能障害や認知機能,病前活動量から検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 脳梗塞患者の転帰を予測することは早期機能回復と速やかな回復期への打診と転院を可能にする。医師管理安静度の下でも簡易な理学療法初期評価項目から転帰とその予測因子において一定の見解が得ることができた。今後は,さらに細分化した前方視的な情報収集の必要性が求められる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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