理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
Contraversive Pushingを呈した脳卒中片麻痺患者のADL特性
─2群間によるFIM点数の比較検討─
久保田 雅史田中 健佐藤 夏美木村 恭子本田 有希大島 俊小川 直人押木 利英子
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p. Bb0535

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抄録
【はじめに、目的】 当院,回復期リハビリテーション病棟では機能的自立度評価法:Functional Independence Measre(以下FIM)によるADL評価を行い予後予測に活用している.我々はContraversive Pushing(以下Pushing)に着目し,ADL評価の分析を試みた.Pushingはリハビリテーションに難渋する症状でもあり,急性期に多く認めるとされているが,回復期においても出会う機会の少なくない症状である.先行研究では入院期間の長期化,Barthel Indexの低下,ナーシングホームへの転院率の増加などが報告されている.本研究ではPushing患者のFIM細項目を比較検討し,ADLの特性を明らかにすることを目的とした.【方法】 対象は平成22年1月から平成23年7月までに回復期病棟に入院した257名の脳卒中患者から死亡,下肢運動麻痺なし,歩行自立の40名を除いた217名とした.その内,Pushingを認めた27名の患者に対し,麻痺側,入院時の下肢運動麻痺,年齢の順にマッチングを行い対照群の抽出を行った.Pushingあり(以下P群)とPushingなし(以下NP群)の2群間で比較検討を行った.Pushingの判定は「Scale for Contraversive Pushing」下位項目>0とした.P群は平均年齢70.67±9.03歳,男性14名,脳梗塞18名,脳出血9名,右片麻痺14名,NP群は平均年齢70.26±9.65歳,脳梗塞21名,脳出血6名,右片麻痺14名であった.比較検討項目は1.入院期間,2.下肢運動麻痺,3.感覚障害, 4.FIM,5.転帰先(自宅復帰率)とし,回復期転棟時,退院時に評価を行った.統計学的検討はMann-Whitney’s U test,χ2検定を用い,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 使用した個人情報については,ヘルシンキ宣言に基づいた規定に尊守し,本人及び家族に書面と口頭にて研究の目的,方法,個人が特定されないことを説明し同意を得た.なお,本研究の倫理審査は当院倫理委員会にて承認を得ている.【結果】 1.入院期間はP群/NP群で平均123±34.91日/113±46.79日(n.s.)2.下肢運動麻痺は回復期(中央値)P群/NP群でII/II(n.s.)退院時III/IV(n.s.)であった.3.感覚障害を有する割合は回復期入院時表在感覚はP群/NP群で74.07%/66.67%(P<0.05),深部感覚は70.37%/51.85%(P<0.01)であった.退院時表在感覚はP群/NP群で81.48%/70.37%(n.s.)深部感覚は81.48%/59.25%(P<0.05)であった. 4.回復期入院時FIMで有意差がみられた項目(中央値P群/NP群)はP<0.01では排便2/7,P<0.05では清拭1/2,排尿3/7,移乗Bed2/4,移乗トイレ2/4,移乗浴槽1/1,階段1/1,運動項目小計24/41,回復期入院時合計44/68であった.退院時FIMで有意差を認めた項目はP<0.01では整容5/7,トイレ3/6,排尿5/7,階段1/3,運動項目小計45/68,退院時合計67/97,P<0.05では更衣上3/6,更衣下2/6,排便5/7,移乗Bed4/6,移乗トイレ4/6,移乗浴槽1/4,歩行2/3,社会的交流5/6)であった.5.転帰先(自宅復帰率)はP群/NP群で77.18%/81.48%(n.s.)であった.【考察】 結果から入院期間,下肢運動麻痺,自宅復帰率に有意差は認めなかったが,感覚障害,FIMの総得点と運動項目に有意差を認めた.Danellsらによれば3ヶ月後のFIM点数に有意差はないと報告されており,FIMの結果においては先行研究とは異なる結果となった.また,FIM細項目では食事,清拭以外の項目で有意差を認めP群において低い結果となった.FIM細項目における動作の特性として,食事や清拭は座位で可能なADLであり,P群では座位姿勢の中でのADLは自立に至ることが考えられた.しかし,立位や移動を伴う動作を要求される移乗や整容・トイレ動作などの項目に関しては介助を要すことが考えられた.これはContraversive Pushingの対側に押すという障害の特性が立位,歩行能力の低下に影響していることが考えられた. FIM細項目の比較により,P群における退院後のADL自立度の低下に加え,介護者の負担が増大することが予測された.【理学療法学研究としての意義】 在院日数の短縮化が求められている今日の医療制度を考えると,予後予測が重要となる.Pushing患者のFIM細項目を比較検討した報告はなく,早期より退院後の生活イメージを立てて環境調整や介護指導,介護サービスの検討が行えれば,自宅復帰率をより高められる可能性もあると考えられた.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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