理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
病棟歩行自立直後におけるリハビリ室歩行と病棟歩行の評価(第2報)
─ウェアラブル姿勢・活動モニタシステムによる定量評価─
園田 拓史福榮 竜也湧川 盛邦湯地 忠彦谷口 早弥香東 祐二藤元 登四郎白 美娜本井 幸介山越 憲一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Bb0536

詳細
抄録
【はじめに】 脳血管障害患者への効果的な療法や在宅移行支援を行うためには,リハビリテーション室での歩行(以下,リハ室歩行)と実際の生活場面での移動手段としての歩行(以下,ADL歩行)の差を客観的に評価することが重要である.これまで本研究では,詳細な姿勢変化や歩行速度を計測可能なウェアラブルシステムにより,片麻痺者のリハ室及びADL歩行の特徴を比較可能であることを報告(前回大会;第1報参照)してきた.今回はさらに,歩行速度及び麻痺側下肢立脚期の動作に着目し,特に初期接地: IC及び立脚終期: TSt時の各関節運動の特徴や,立脚中期: MSt時の支持性にそれぞれ着目し,新たに病棟歩行自立直後のリハ室内と病棟内での歩行の計測・比較評価を行った.【方法】 本システムは,無線送信機(リハ室におけるリアルタイム計測),メモリ(病棟におけるオフライン計測),バッテリー,加速度・ジャイロセンサ(各3軸)が内蔵されたユニットを,体幹・大腿・下腿にそれぞれ装着し計測を行う.得られたデータについては,ネットワーク機能によりPCに転送後,各部の角度変化や歩行速度等が自動算出される. 今回本システムを用いて,リハ室内での10m定常歩行と,病棟にてリハスタッフが介入していない歩行の計測・比較検討を行った.また,対象は脳卒中片麻痺者6名(病棟内歩行自立して2週間以内)とした.また具体的な比較項目については, 20周期分の定常歩行を対象とし,1歩行周期毎の歩行速度の平均及び標準偏差(以下,SD)を解析すると共に,IC・MSt・TStの各期における各関節角度の平均及びSD,さらには麻痺側下肢の立脚相と遊脚相の割合を算出することにより,麻痺側下肢立脚期の評価・比較を行った.なお, MStについては,ICとTStの中間における角度情報により評価を行った.【説明と同意】 本計測はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理委員会の承認並びに対象者自身へインフォームドコンセントを実施し,承諾書への署名を得て実施した.【結果】 平均歩行速度については,リハ室歩行:0.41±0.05 m/s,ADL歩行:0.31±0.06m/sであり,ADL歩行の方が有意に遅いことが確認された(P<0.01).また麻痺側下肢の立脚相の割合については,リハ室:71.3±7.2%,ADL歩行:70.6±10.7%,であり,両者に有意差は認められなかったものの,正常歩行と比較するとリハ室歩行,ADL歩行ともに立脚相が長い傾向にあった.IC時の大腿角度(股関節屈曲角度)においては,リハ室歩行:24.8±4.7deg,ADL歩行:20.3±7.6degであり有意に低下することが確認された(P<0.05).その他のIC・MSt・TStの各期における角度については,有意な差は認められず,各患者ごとに異なる特徴が検出された.【考察】 ADL歩行はリハ室歩行と比較し,歩行速度が遅いことが判り,セラピストのいない病棟においては,患者は慎重に歩いていると考えられる.また,立脚相の割合については,片麻痺者の歩行は両脚支持期が長いため立脚相の割合が高くなったと考えられる.一方,麻痺側立脚期における詳細解析から,ICにおいては,リハ室歩行と比較し病棟ADL歩行における大腿角度は小さくなり,前方への振り出しが小さいことが判った。またMStにおける体各部のSDの結果から,ADL歩行において再現性が維持・向上している患者と低下している患者がおり,前者は麻痺側の高い支持性により安定した歩行を行っており,また後者は充分な支持性を維持できなかったと考えられる.TStでは,リハ室歩行と比較しADL歩行における大腿や膝関節の伸展が確保されている,あるいは低下している患者を確認可能であり,リハ室での歩行を病棟での歩行に反映できている患者や順応の過程にある患者が存在したことが考えられる.これら結果より,本システムにより,各患者におけるリハ室歩行とADL歩行の特徴・差を定量的に評価し,それぞれに適したリハビリ・支援を実施可能であると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 これまでリハ室における歩行練習はもちろんのこと,特に病棟内ADL中の歩行の把握は病棟スタッフやセラピストによる観察に頼っていたが,本システムを用いることにより,両者の違いを定量的に評価することが可能となり,リハ効果やADLへの効果の反映状況等を把握し,より効果的なリハ指導を行う上で有用であると考えられる.また,セラピストの観察では把握しきれない詳細な情報を取得することが可能であり,新たなリハプログラムの考案・実現に大きく寄与できると考えられる.【謝辞】 本研究の一部は総務省戦略的情報通信研究開発推進制度SCOPE(102305004,平成22~23年度),財団法人医科学応用研究財団の助成により行われた.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top