理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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脳卒中患者の歩行自立度と筋機能および運動能力の特徴
藤田 俊文岩田 学
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p. Bb0538

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抄録
【目的】 脳卒中患者が歩行自立するためには種々の要因があげられるが、その中でも筋力や持久力などの体力的要素を知ることは重要であり、研究対象として頻繁にとりあげられている。特に、筋力、筋パワーといった筋機能を評価する意義は、脳卒中患者に限らず歩行自立を考える上で重要である。これまでに我々は脳卒中片麻痺患者を対象とした修正版ウインゲート無酸素性テスト(以下、m-WAnT)を開発し、筋パワー測定の実行可能性・信頼性・妥当性を確認してきた。また、筋量と脚伸展筋力や筋パワーといった筋機能との関連性について横断的に調査してきた。今回は、脳卒中片麻痺患者の歩行自立度と筋機能および運動能力の特徴について検討することを目的とした。【方法】 対象は入院中の脳卒中片麻痺患者21名(男18名、女3名)で、平均年齢は57.1±9.6歳であった。内訳としては、脳梗塞9名、脳出血11名、くも膜下出血1名で、麻痺側は右11名、左10名であった。測定項目は、麻痺側および非麻痺側の下肢筋量と脚伸展筋力、筋パワー、5回反復起立する際の所要時間(5回起立時間)、10m最大歩行所要時間(10m歩行時間)を測定した。筋量測定は、セグメンタル生体電気インピーダンス法(S-BIA法)による筋量測定装置(Physion MD、フィジオン社製)を使用し、麻痺側および非麻痺側の下肢筋量の体重あたりの割合(%BW)を算出した。脚伸展筋力と筋パワー測定は、リカンベント型エルゴメータ(ストレングスエルゴ240、三菱電気エンジニアリング社製)を使用した。脚伸展筋力測定は等速性運動(ペダル回転速度50rpm、5回転)で脚伸展最大トルク(LEPT;Nm)を測定し、麻痺側・非麻痺側下肢それぞれの5回転中の最大値を算出した。その上で麻痺側と非麻痺側のLEPTを各下肢筋量(LEM;kg)で除した値(LEPT/LEM;Nm/kg)を算出した。筋パワー測定は先行研究をもとにm-WAnTを実施した。麻痺側・非麻痺側LEPTを用いて負荷量を設定し、最大努力にて9秒間(0~6秒はランプ負荷、6~9秒は定常負荷)のペダリング動作をおこない、6~9秒の3秒間の平均パワー(MP;W)を算出した。さらに、筋パワーにおいてもMPを麻痺側と非麻痺側下肢の合計筋量(TLEM;kg)で除した値(MP/TLEM;W/kg)を算出した。5回起立時間と10m歩行時間は、各テスト3回測定した最速値を使用し、それぞれ単位時間あたりの値(起立率;回/秒、歩行速度;m/秒)に換算した。歩行自立度はFIM歩行点数をともに6点以上を歩行自立群、5点以下を非自立群とした。得られた測定結果については、ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を用いて分析し、各項目のcut-off値とAUC(Area Under the Curve)、感度、特異度を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は弘前大学医学部倫理委員会の承認および協力施設の倫理委員会の承認と、対象者に研究の趣旨と内容について十分説明し同意を得た上で行った。【結果】 各項目のcut-off値およびAUC、感度、特異度は、非麻痺側下肢筋量7.2%BW(AUC 0.36、感度0.47、特異度0.67)、麻痺側下肢筋量7.5%BW(AUC 0.37、感度0.47、特異度0.67)、非麻痺側LEPT/LEM 19.0Nm/kg(AUC 0.88、感度0.73、特異度1.00)、麻痺側LEPT/LEM 13.0Nm/kg(AUC 0.97、感度0.87、特異度1.00)、MP/TLEM 29.2W/kg、起立率0.58回/秒(AUC 0.92、感度0.73、特異度1.00)、歩行速度1.19m/秒(AUC 0.96、感度0.87、特異度1.00)であった。【考察】 これまでにも歩行自立度と10m歩行速度に関する報告は多数見られているが、8~10秒程度がcut-off値として挙げられているものが多く、本研究結果でも10mを8秒程度と先行研究と同程度であった。また、立ち上がり動作を用いた報告では、10秒間に5回以上を実施できたものは歩行が自立しているとした報告もあり、言い換えれば1秒間に0.5回実施可能な能力があれば自立と捉えることができる。本研究結果では、cut-off値を0.58回/秒とすると陽性的中率(歩行が自立している人の割合)が100%となり、妥当なcut-off値が得られたと考えられる。また、瞬発的な筋機能として筋パワーおよび筋力という視点からも検討した結果、筋パワーおよび麻痺側下肢筋力のROC曲線のAUCが0.9以上の結果であり、有効な結果が得られたと考える。以上より、脳卒中患者において歩行が自立するためには、ある一定上の瞬発的な力を発揮できる能力を有することが重要であることが示唆された。今後は得られた結果を参考に、他の体力的要素(バランス能力など)が歩行自立度に与える影響について検討が必要と思われる。【理学療法学研究としての意義】 脳卒中患者の体力を包括的に捉える上で、筋量・筋力・筋パワー測定は臨床上意義が高く、さらに歩行自立度と筋機能、運動能力の特徴を明らかにできたことは脳卒中リハビリテーションにおいての意義は大きいと考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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