抄録
【はじめに】 脳卒中治療ガイドライン2009において、起立着席訓練(以下起立訓練)や装具療法の高いエビデンスが示され、当院でもエビデンスが示される以前から起立訓練や装具療法には積極的に取り組んでいる。今回、回復期脳卒中患者に対する装具処方の現状について調査し若干の知見を得たのでここに報告する。【方法】 平成18年4月1日から平成23年3月31日までに当院回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)に入院した脳卒中患者366名で、装具療法が施行されたものは99例であった。99例の内、前医で作成された方は13例で、調査対象は当院で作成した86名とした。内訳は男性40名、女性46名で、平均年齢は71.5歳(45~92歳)であった。疾患は脳梗塞59名、脳出血23名、クモ膜下出血1名、急性硬膜下血腫2名で、麻痺側は右41名、左45名であった。抽出項目は発症から当院入院までの期間、平均在院日数、装具作製までの期間、処方装具、下肢Brunnstrom recovery stage(以下下肢stage)、Functional independent mesureの運動項目(以下m-FIM)、転帰とした。【倫理的配慮、説明と同意】 北九州八幡東病院の倫理委員会において承認を得、個人情報保護に配慮し調査を行った。【結果】 発症から当院入院までの期間は39.3±17.9日で、平均在院日数は144±34.5日、入院から装具作製までの期間は30±33.7日であった。処方装具はAFOが63本、KAFOが24本であった。AFOの内訳はプラスチックAFO(以下PAFO)が61本で、両側支柱付AFO(以下支柱付AFO)が3本であった。KAFOの処方された患者の内、AFOへのカットダウンは3例であった。下肢stage別での内訳は、IでPAFO1本、IIでPAFO6本、KAFO15本、IIIでPAFO30本、KAFO8本、IVでPAFO18本、支柱付AFO1本、KAFO1本、VでPAFO5本、VIでオルトップタイプ1本であった。次に処方装具からAFOとKAFOで群分けをして入院時・退院時のm-FIM、転帰を調査したところ、入院時m-FIMはAFO群で平均29.9点(19-84点)、KAFO群で平均16.4点(13-45点)、退院時m-FIMはAFO群で平均49.2点(13-88点)、KAFO群で平均22.2点(13-46点)であった。転帰はAFO群の在宅復帰率が57%、KAFO群の在宅復帰率が16%であった。【考察】 回復期における脳卒中患者への装具療法は起立訓練や歩行訓練などの治療用、病棟生活などの日常での使用を目的とした更生用の両側面を満たすことが望ましいと考える。当院での処方状況はAFO、特にPAFOの処方が多く、素材はポリプロピレンを用いたものが全体の9割を占めていた。このことは装具着脱の容易さ、rigidからflexibleと可撓性の変更がトリミングで調整できることが他のプラスチック素材と比較して選択が多かった要因と考える。KAFOに関しては年々処方件数が減ってきている。当初は起立、立位、歩行訓練を行う際に個人用を作成する傾向にあったが、評価用装具と簡易膝装具の併用で訓練を進めていく傾向になっていったことや、費用対効果を踏まえて患者・家族に説明を行った際に希望されない事が増えてきていると考えられる。また、AFOへカットダウンが可能となった症例は3例であった。転帰に関してはAFO群と比較してKAFO群の方が麻痺、ADL能力共に重度であり在宅復帰率が低くなっていたと考えられる。装具作製比率は全体の27%であり、決して作成頻度が高いとは考えられず、諸家の報告からの指摘事項で、担当セラピストの経験側に左右されていたのではと考えられる。今後は今回の結果を考慮して、装具の作製や使用の選択基準の作成が急務と考えられる。【理学療法学研究としての意義】 今回の結果から、麻痺別の作成状況は明確になったので、回復期病棟での使用や訓練での使用を考えていく上での一指標になると考えられる。