理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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麻痺側下肢靴底に装着したプラスチック製低摩擦カバーが歩行にもたらす影響
福田 翼田口 潤智笹岡 保典堤 万佐子松井 聖志中谷 知生藤本 康浩佐川 明天竺 俊太
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p. Bb0771

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抄録
【はじめに、目的】 近年背屈制限の無い下肢装具の普及により、脳卒中片麻痺患者の歩行練習で前型歩行を行う機会が増えてきた。当院でも背屈制限の無い下肢装具を使用し、杖などの支持物を使用せずフリーハンド後方介助での歩行練習を行うことが多い。その際立脚後期からのトゥクリアランス低下により麻痺側足尖部が引っ掛かり、それに起因する過剰努力や代償動作を修正するのに難渋することがある。そうした場面で我々はトゥクリアランスを改善させスムーズな振り出しが可能となるよう、麻痺側下肢靴底の足尖部に着脱可能な形状のプラスチック製低摩擦カバーを装着することがある。今回我々の作成した低摩擦カバーが脳卒中片麻痺患者の歩行にもたらす影響について調査したので、考察を交え報告する。【方法】 対象は当院入院中の脳卒中片麻痺患者で、立脚後期に足尖部のクリアランス低下により著しく歩行能力の低下している2名とした。症例1は80歳女性で、発症より66日経過した左片麻痺・下肢Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)は3であった。歩行練習では短下肢装具Gait Solution Design(以下GSD)と膝伸展位固定用ニーブレースを装着していたが、左足尖部が床面に引っ掛かり、自己での振り出しが困難であった。症例2は78歳女性で、発症より89日経過した右片麻痺・下肢BRSは4であった。歩行練習はGSDを用いていた。自己での右下肢の振り出しは可能だが体幹の左側屈による代償動作が強く、時折足尖が引っ掛かるため介助を要した。これら2名においてカバー装着前後での10m歩行所要時間・ステップ数に加え、ロッカーファンクションの変化を確認する目的で川村義肢社製Gait Judge System(以下GJ)を使用した足関節底屈トルク値を測定した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は所属施設長の了承を得て、対象者に口頭にて説明し同意を得た。【結果】 低摩擦カバーを装着することで症例1では10m歩行所要時間が83秒から68秒へと短縮し、ステップ数は39歩から34歩へと減少した。またGJではファーストピークが確認され、トルク値は平均0.38Nmであった。症例2では10m歩行所要時間が44秒から36秒へと短縮し、ステップ数は52歩から37歩へと減少した。GJにてファーストピークは確認されなかったが、振り出しの際の体幹側屈による代償動作が軽減した。【考察】 低摩擦カバーを装着する意義は2点ある。第一に、非麻痺側下肢への自己での重心移動を促通・強化することが可能となる点である。今回対象とした2名においてクリアランスが低下していた要因は、麻痺側下肢振り出し時に非麻痺側への重心移動が不十分であった点にある。その原因は、症例1では立位において麻痺側へのプッシャー様の現象がみられたこと、症例2では既往歴の変形性膝関節症のため非麻痺側下肢への荷重に不安の訴えが聞かれていたことにある。このような場合、麻痺側下肢をセラピストが引っ張ったり、後方から押し出すような介助を行うことがあるが、より良いアライメント・タイミングでの重心移動を学習するには、患者自身で重心移動を行い、麻痺側下肢を振りだすという運動を繰り返す必要があると考える。低摩擦カバーを装着することで、麻痺側下肢を振りだす上で必要な重心移動の量を軽減させ、患者自身で重心のコントロールを可能とすることが、第一の意義である。第二にクリアランスが向上することで、スムーズに立脚と遊脚の移行が行われ、ヒールロッカー機能を促通可能とする点である。片麻痺患者の歩行練習を行う上で、ロッカーファンクションをいかに機能させるかは非常に重要な点である。我々は低摩擦カバーを装着することで麻痺側下肢のスムーズな振り出しが保証されヒールロッカー機能が向上すると考える。実際に症例1ではカバーを装着したことでファーストピークが発生した。症例2ではファーストピークは発生しなかったが、この理由は代償動作は軽減したものの、測定時点ではファーストピークを発生させるだけの十分な荷重が行えていなかったのではないかと考えた。この症例では低摩擦カバーの装着を継続することでよりスムーズな遊脚期への移行が可能となり、ファーストピークを発生させることが可能となってくるものと思われる。今後継続してクリアランスの低下した症例においてデータ測定を行い、低摩擦カバーの適応や効果的な装着期間などを明らかにしていきたいと考えている。【理学療法学研究としての意義】 研究において低摩擦カバーが、歩行効率の向上やヒールロッカー機能の促通に効果がある手段の一つであることが示唆された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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