理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
片麻痺者の歩行速度と麻痺側下肢荷重の関係性について
伊藤 哲成久保田 健太伊藤 俊一小川 峻一竹ヶ原 智行岡田 梨沙小薗 由貴神矢 博則佐藤 あかり二階堂 愛弓
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p. Bb0775

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抄録
【はじめに、目的】 片麻痺者の歩行速度と麻痺側荷重の関連については昨今、多々報告されており、理学療法場面では麻痺側荷重の向上を早期から行うことが多く観察される。しかし実際は、麻痺側荷重の明確な目標がない為、麻痺側荷重の評価や練習を行うも、結果歩行パフォーマンスが上がることで麻痺側荷重が歩行速度にどの程度関与しているかなど吟味することが少ないのが現状である。そこで今回我々は、片麻痺者に対し歩行速度別に麻痺側荷重の比較、カットオフ値の検討を行い、歩行速度改善へ向けた麻痺側荷重練習の一助を得ることを目的とした。【方法】 本研究の目的を説明し同意を得た片麻痺患者32名(平均65.4±13.3歳、男性21名、女性11名)を対象とした。評価項目は最大歩行速度、下肢Brunnstrom recovery stage test(以下、BRS)、Berg balance scale (以下、BBS)、麻痺側荷重、非麻痺側荷重、麻痺側膝伸展筋力、非麻痺側膝伸展筋力を測定した。麻痺側荷重と非麻痺側荷重は、ユニメック社製重心バランスシステムJK-101 IIを使用し荷重量を体重で除した値を用いた。麻痺側膝伸展筋力と非麻痺側膝伸展筋力はアニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターμTasF-1を用い、坐位での膝関節90°屈曲位における等尺性筋力を測定し、体重で除した値を用いた。検討項目は、(1)歩行速度に寄与する評価項目の検討、(2)歩行速度別の麻痺側荷重の比較検討、(3)歩行速度別における麻痺側荷重のカットオフ値の検討を行った。(1)の検討は歩行速度を従属変数、その他評価項目を独立変数とし重回帰分析を用いた。(2)の検討は対象を過去報告されている、地域で不便なく生活できる歩行速度(1.0m/s以上)が可能な群(以下、地域群)、地域群以下の速度で、屋内・屋外での実用歩行が可能な最低限の歩行速度(0.66m/s以上)が可能な群(以下、屋外群)、屋外群以下の速度で、屋内生活で不便を感じない最低限度の歩行速度(0.33m/s以上)が可能な群(以下、屋内群)という基準を参考に3群に分類し3群間の麻痺側荷重を多重比較検定を用いて比較を行った。(3)の検討は(2)で用いた基準を用い、地域群の麻痺側荷重を陽性、屋外群・屋内群の麻痺側荷重を陰性とし、Receiver Operating Characterristic曲線(ROC曲線)を用い、地域群の麻痺側荷重カットオフ値を算出した。また同様に地域群・屋外群の麻痺側荷重を陽性、屋内群の麻痺側荷重を陰性とし、屋外群の麻痺側荷重カットオフ値も算出した。統計処理は、統計フリーソフトR version2.13.1を使用し有意水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に則り行い、対象者全員には書面にて本研究の趣旨を説明し同意を得た。【結果】 本検討における歩行速度に寄与する評価項目は麻痺側荷重、BBS、麻痺側膝伸展筋力であり、それぞれの標準化係数は、0.64、0.48、-0.2となり麻痺側荷重が最も寄与率が高かった。3群間における麻痺側荷重の比較検討では各群間に有意な差が認められ、地域群の麻痺側荷重が最も高値を示し、屋内群が最も低値を示した。麻痺側荷重のカットオフ値の検討では、地域群のカットオフ値は78.7%(感度98%、特異度83%)、屋外群のカットオフ値は61.3%(感度95%、特異度90%)という結果となった。【考察】 (1)(2)の結果より麻痺側荷重の寄与率が高く、歩行速度別の検討でも麻痺側荷重に差を認めることから、歩行速度向上を目的とした麻痺側荷重練習の際には、荷重基準の明確化は重要である可能性が再確認できた。また(3)の結果より1.0m/s以上で歩行する場合に必要な麻痺側荷重は78.7%、0.66m/s以上で歩行する場合の麻痺側荷重は61.3%が必要となる可能性が示唆された。今後は症例数を増やし、カットオフ値の正診率を向上させることが課題である。【理学療法学研究としての意義】 片麻痺者における麻痺側荷重のカットオフ値を明確化することで、荷重練習時の目標、外来フォロー時の機能維持指標となるだけではなく、荷重がカットオフ値以上であるにも関わらず、歩行速度が改善しない場合には他の機能をアプローチするなど、アプローチ対するリーズニングにも利用できると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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