理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
脳卒中片麻痺患者における歩行周期の変動性について
─病棟内歩行自立群と監視群との検討─
伊藤 優也澤村 幸恵木元 裕介佐藤 周平皆方 伸佐々木 誠
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Bb0774

詳細
抄録
【はじめに、目的】 脳卒中片麻痺患者における歩行自立度の判断には観察といった主観的評価により行われることが臨床上多く,適切かつ正確な判断には客観的指標を用いた判断が重要であると考える.歩行自立度の客観的判断基準を検討した研究では種々の報告がされており,歩行の恒常性の観点から10m歩行時間の変動性に着目した報告が存在する.しかし,臨床場面では観察上でのステップのばらつきに着目することが多く,歩行機能評価においては歩行時間の変動性から検討することは少ない.そのため,歩行時間のみではなく歩行周期の変動性にも着目する必要があると考える.歩行周期の変動性に関する研究では,高齢者においてバランス能力や筋力などの運動機能との有意な相関があること,転倒の予測に有用であることが報告されている.しかし,脳卒中患者における歩行の変動性に関する報告では,各歩行周期の変動を検討したものは散見される程度である.そこで,本研究では,脳卒中片麻痺患者の歩行周期変動が,歩行自立群と監視群においてどのような特徴があるかを検討することを目的とした.【方法】 対象は,当院に入院し,本研究への参加の同意が得られ,病棟内の移動手段として歩行を導入している脳卒中片麻痺患者14名(男性9名,女性5名.67.9±10.7歳)とした.さらに対象群を病棟内歩行が自立している群(自立群:7名)と監視が必要となっている群(監視群:7名)の2群に分けた.歩行評価として,シート式足圧接地足跡計測装置(アニマ社製ウォークWay MW-1000.寸法800×2400mm)上を5回,快適速度にて歩行し,全ての試行で測定された歩行周期の平均値と標準偏差を求め,それをもとに変動性の指標として変動係数(標準偏差/平均値×100)を算出した.尚,計測装置の両端に助走路と減速路を各2m設けた.統計学的処理は,自立群と監視群における歩行周期の平均値,変動係数の差を対応のないt検定を実施し求め,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者について本研究の主旨について十分に説明し,研究内容の理解が得られた上で,書面上での研究協力の承諾を得た.【結果】 本研究の結果,自立群における歩行周期の平均値は1.30±0.25秒,変動係数は6.59±2.61%,監視群における歩行周期の平均値は1.63±0.64秒,変動係数は20.58±11.19%であった.自立群と監視群との比較では,平均値において有意差は認めなかったものの(p=0.23),変動係数おいては有意差が認められた(p<0.01).【考察】 今回の検討では歩行自立群と監視群で歩行周期の平均値に有意差を認めなかったものの,変動係数においては有意差を認めるという結果となった.歩行周期は一側下肢踵接地から次の同側下肢の踵接地までの時間とされ,歩行周期の変動係数が高いということは一定のリズムで歩行できていないということを示している.本研究の結果では歩行監視群が歩行自立群と比較し歩行周期変動係数において有意に高値を示し,歩行に監視を要する者では歩行のリズムのばらつきが大きくなる傾向があることが示唆された.脳卒中片麻痺患者では,運動麻痺をはじめとする中枢神経系の症状により,麻痺側下肢の振り出しに多くの時間を要することで歩行周期は長くなるとされる.しかし,今回の結果では歩行自立群と監視群における平均値の比較において監視群の方が高値ではあったが,有意差を認めるまでには至らなかった.これに変動係数に有意差が認められたことを加味すると,1歩行周期の長短よりも,常に一定のリズムで歩行できているかが歩行自立度の判断上,重要な指標となる可能性があると考えられる.以上より,今回の検討では歩行周期変動係数が歩行自立度の客観的判断基準の一助となる可能性があることが示唆された.今後はサンプル数を増やした検討に加え,理学療法の介入によるバランス能力改善に伴った歩行周期変動係数の経時的変化についても検討する必要があると考える.【理学療法学研究としての意義】 脳卒中片麻痺患者における歩行自立度の判断は臨床上,観察といった主観的判断に基づいて行われることが多いが,適切かつ正確な判断には客観的指標が必要と考える.その観点で,歩行自立群と監視群で歩行周期変動係数の特徴を検討することは,歩行自立度の客観的判断において有益な情報になると考える.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top