理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
慢性期脳卒中片麻痺患者の上肢に対する振動刺激の自主訓練効果について
俵 紘志
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キーワード: 脳卒中, 振動刺激, 自主訓練
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p. Bb0781

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抄録
【はじめに、目的】 一般的に、脳卒中による麻痺の回復は、発症後6ヶ月以降では難しいとされている。特に、麻痺側上肢の機能回復は、手指巧緻性を含めた機能の多彩さや、補装具による機能代償の難しさにより、実用性を伴いにくい。そのため、脳卒中のリハビリテーションでは非麻痺側の代償的な動作の獲得に重きを置くことが多く、麻痺側上肢に対して十分な介入が出来ていないケースが少なくない。しかし近年、中枢神経が持つ「可塑性」に注目した研究によって、CI療法、機能的振動刺激療法、電気刺激療法、磁気刺激療法、促通反復療法、ロボット治療といった新しい治療法が次々と提唱されており、発症後6ヶ月以上経過した症例でも、その効果が報告されてきている。しかしながら、それらの治療には自主訓練で簡易的に行えるものが少なく、在宅で行うことが困難である場合が多い。そこで本研究では、発症より6ヶ月以上が経過した脳卒中片麻痺患者の上肢に振動刺激を与え、自主訓練としての効果を調査したので報告する。【方法】 対象は重度な高次脳機能障害や認知症のない、脳卒中発症から6ヶ月以上経過した片麻痺患者2名(症例1:疾患;左視床出血、年齢;70歳代、性別;男性、罹病期間;9ヶ月、Brunnstrom stage;上肢・手指ともに5、Sensory;表在・深部ともに右上肢脱失。症例2:疾患名;右視床出血、年齢;60歳代、性別;男性、罹病期間;8ヶ月、Brunnstrom stage;上肢4・手指5、Sensory;表在・深部ともに左上肢軽度鈍麻)である。振動刺激は座位でバイブレーター(大東電機工業株式会社製 MD-01)を1本使用し、1日3回、麻痺側の肘・手・手指関節屈筋群にそれぞれ5分ずつ振動を加える自主訓練を1週間実施した。評価は振動刺激治療を実施する1週間の前後で行い、上肢機能に関しては、簡易上肢機能検査(STEF;Simple Test for Evaluating Hand Function)と握力にて評価し、上肢機能の阻害因子となる痙縮に関してはMAS(Modified Ashworth Scale)にて評価を実施した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者とその家族には、研究の趣旨を説明し、研究参加の同意を得た。【結果】 STEFは、麻痺側において症例1で10点→21点、症例2で10点→12点になり、制限時間内に完了した検査項目に関しても、症例1で3項目→6項目、症例2で3項目→7項目に増えていた。また、制限時間内には完了しなかった検査項目においても、制限時間内にできた個数には増加がみられた。しかし、麻痺側の握力に関しては、症例1で18.1kg→15.7kg、症例2で10.1kg→9.0kgと共に低下を示した。MASにおいては、症例1、2共に変化はみられなかった。【考察】 手による物体認知や巧緻機能には動的触覚が重要であるといわれており、それを感知するマイスナー小体やパチニ小体といった受容器は振動覚の受容器でもある。そのため、振動刺激によりそれらの受容器に積極的に感覚入力を行えたことが、STEFの点数が伸びた一つの要因ではないかと推察される。また、感覚障害がより重度の症例においてSTEFの点数の伸びが大きかったことから、振動刺激を自主訓練にて実施したことにより、両手使用を積極的に促すことができ、麻痺側上肢への意識が高まったことも要因の一つと考えられる。今回、痙縮の評価にはMASを使用したが、MASが簡便な臨床評価であるという性質上、変化をとらえることはできなかった。しかし、STEFの結果より、振動刺激で麻痺側上肢屈筋群の痙縮が抑制されたことにより上肢の随意運動が改善した可能性も推察される。今後、症例数を増やし、振動刺激の自主訓練としての有用性を検討していくことが必要と考えられる。【理学療法学研究としての意義】 脳卒中片麻痺患者が、在宅でも容易に行える自主訓練として、振動刺激を麻痺側上肢へ加えることが、機能回復に有効であったという症例のデータを得ることができた。今後、簡易的でより効果的な自主訓練を検討していくための手がかりとしたい。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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