理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
脳卒中後上肢運動麻痺に対する低頻度rTMSと集中的リハビリテーションの併用療法の治療効果
─上肢痙性麻痺と運動機能の関係性に着目して─
佐伯 秀宣西村 純一近藤 隆博山根 由紀子小谷 知香山田 尚基角田 亘安保 雅博
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p. Bb0780

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抄録
【はじめに、目的】 当院では脳卒中後上肢麻痺に対する低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(low-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation以下 低頻度rTMS)と集中リハビリテーションの併用療法を2010年2月より開始し,Kakudaらの報告と同等な治療成績をあげている。慢性期患者でありながら上肢機能改善を示している要因として,痙性の改善が関係していると考える。痙性は上位運動ニューロン障害の一つであり速度依存性という特徴を持ち,ADLにおいての阻害因子となりうる。Kakudaらによると,2週間の低頻度rTMSの施行において2週ならびに4週経過した時点でもmodified Ashworth scale(以下MAS)の値が低下したと報告している。しかし,その痙性の軽減が上肢運動機能にどのように影響しているのかは不明である。今回は上肢痙性の程度と上肢運動機能の経時変化を調査し,上肢痙性麻痺が上肢運動機能にどのように関わっているのか明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は脳卒中後上肢運動麻痺を有し,主治医により上肢運動機能改善がプラトーと判断され,原則当院の磁気刺激治療適応基準を満たした者とした。また2011年9月3日から10月15日の期間に当科に入院され,15日間の当院治療プログラムが施行された患者のうち,ボトックス投与患者,痙性麻痺を有さない患者を除外した全13名(平均年齢:64.8±10.2歳.性別:男性8名,女性5名.臨床診断:脳梗塞7名,脳内出血6名.発症後期間:1643±936日.)とした.また上肢および手指Brunnstrom stage2-6であった。各対象は,1日1回40分間の非障害側大脳への低頻度(1Hz)刺激,1日合計120分間の個別リハビリテーション,患者の体力に応じた自主練習からなる治療セッションを,15日間の入院期間中に10セッション施行された。低頻度rTMSはMagVenture製のMAGPRO R30 Stimulaterを用い,当科医師により施行された。上肢痙性麻痺の評価は肘関節・前腕・手関節・手指を対象としMASを用い,低頻度rTMS施行前後に毎日計測した.尚,MASの1+は1.5として取り扱い,各関節3回施行しその内の最大値を採用した。また上肢運動機能の評価としてWolf Moter Function Test performance time(以下WMFT-pt)を採用し毎日計測した。WMFT-ptは1課題につき3回計測し,平均値を採用した。また,WMFT-ptは患者間でバラツキが多かったためEXCITE研究の解析で行われていたように課題遂行時間の自然対数を算出しWMFT log performance time(以下WMFT-lpt)として採用した。各反復測定値をもとに,それぞれの経時的変化の関係性を検討した。MASとWMFT-ptの計測は,各評価とも同一評価者が終始計測した。また,MASとWMFT-ptは別々の評価者が計測し,対象者が退院するまでお互いが計測した値は公表されなかった。本研究の統計解析はMASとWMFT-ptに関しては反復測定分散分析を用い,post hoc検定としてTukey testを実施した。またWMFT -lptに関してはFriedman検定を用い,post hoc検定としてWilcoxon検定を用いshafferの方法で補正した。統計はSPSS11.5Jを用い有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本治療と研究に先立ち,東京慈恵会医科大学および当院倫理委員会の承認と,且つ全患者から同意書による同意を得た。【結果】 対象者全員が低頻度rTMSの副作用なく最後までプログラムを遂行した。MASにおいて,反復測定分散分析は有意差を認め(F(4.007,48.083)=8.093,P<0.01),post hoc検定では,1回目と有意差を認めたものは4,5,6,7,8,9,10回目であった。またWMFT-ptにおいて,反復測定分散分析は有意差を認め(F(2.522,30.262)=9.459,P<0.01),post hoc検定では,1回目と有意差を認めたものは7,8,9,10回目であった。WMFT-lptにおいて,反復測定分散分析は有意差を認め(P<0.01),post hoc検定では,1回目と有意差を認めたものは6,7,8,9,10回目であった。【考察】 非障害側大脳への低頻度rTMSによる痙性への影響のメカニズムは不明だが,非障害側大脳が痙性の発現に関与している可能性が示唆された。また,上肢痙性,上肢運動機能ともに有意な改善を示したが,上肢痙性が上肢運動機能に先駆けて改善した。このことから,低頻度rTMSにおける上肢運動機能の回復は痙性の軽減を伴うものである可能性があると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究では,健側大脳に対する低頻度rTMSによる上肢運動機能の改善に先駆け,痙性の軽減が生じていた。このことは,今後の理学療法介入において重要な示唆を与えるものと考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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