理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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脳性麻痺児・者に対するホットパックの有効性の検討
黒川 洋明新谷 真希甲斐 智子問川 博之
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p. Bb1170

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抄録
【はじめに、目的】 脳性麻痺児・者は,痙性や身体の成長,固定肢位などによる二次障害として関節拘縮や変形を生じやすい.痙性筋は骨に比べて成長が遅く,筋も硬化しやすいことから関節可動域制限を生じやすい.脳性麻痺児・者において関節拘縮を予防することは不可欠であり,原因となる痙性筋を可能な限り柔軟に保つことが重要である.筋の伸張方法としてはストレッチが一般的であるが,硬くなった痙性筋をストレッチする際には,痛みや不快感が生じやすい.特に対象が子どもの場合には,不快感などによりモチベーション低下も招きやすい. ホットパックは表在性温熱療法の1つであり,ストレッチの前段階として使用することによりストレッチ効果の増大やリラクゼーションが期待できる.先行研究では,ホットパックを併用したストレッチにより筋の伸張性が改善したと報告されている(Lee, et al. 2008). 本研究では,脳性麻痺児・者の理学療法におけるホットパックの有効性について関節可動域と痙性に着目して明らかにすることを目的とした.【方法】 島田療育センターはちおうじを外来・通所利用されている脳性麻痺児・者10名(男性7名・女性3名),平均年齢19.2歳(2~36歳),Gross Motor Function Classification System(GMFCS)レベルII:1名,レベルIV:2名,レベルV:7名を対象とした. ハムストリングスの持続ストレッチ(1分間)を実施し,ストレッチ前後の可動域および筋緊張の変化を測定した.測定は,平均15.4日(8~21日)の間隔を空けて2回実施し,一回は両膝下に電子レンジで約40℃に温めたホットパック(モイストヒートパック,アコードインターナショナル社製)を10分間留置してからストレッチを行った.もう一回はホットパックを行わずにストレッチを行い,両者における測定値の変化の違いを検討した.尚,ホットパック実施時・非実施時の順序はカウンターバランスをとった. 他動可動域の指標としては,ゴニオメーターを用いて計測した膝窩角(Popliteal angle,以下PoA)を用いた.筋緊張の指標としては,Modified Ashworth Scale(以下,MAS)およびModified Tardieu Scale(以下,MTS)を用いた.MTSはMASに比べて再現性が高く,より痙性の概念に近い尺度と考えられている.今回,MTSに関して,速いストレッチを行った際に引っかかり(catch)を感じる角度をR1,ゆっくりとストレッチした際に引っかかりを感じる角度をR2とした.統計には対応のあるt検定を用い,危険率5%を統計学的有意と判定した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,島田療育センターはちおうじ倫理委員会の承認を得た上で,対象者および対象者の保護者に本研究の概要を説明し,保護者より書面による同意を得て行った.【結果】 ストレッチ前後のPoA,MTS - R1およびR2の変化は,ホットパック非実施時に比べてホットパック実施時に有意に大きかった(PoA:p=0.0002,R1:p=0.007,R2:p=0.0003).しかしながらMASは1名を除いて変化はみられなかった.【考察】 ホットパック実施時にPoA,R1,R2の改善がより大きかったことから,脳性麻痺児・者においても,ホットパックは関節可動域の拡大と痙性(特に伸張反射)の抑制に付加的な効果を及ぼすことが示された.これは,温熱刺激の生理的作用により,筋の伸張性や結合組織の伸展性が増大し,また筋紡錘の活性が低下したことにより痙性が抑制されたためと考えられる. 研究結果は,脳性麻痺児・者においても,ストレッチ前にホットパックを施行することが有用であり,硬くなった痙性筋のストレッチ効果を高めることを示唆するものと考える. 今後は,ホットパックの即時的効果だけではなく,効果の持続時間やcarry-over効果についても検討していきたい.【理学療法学研究としての意義】 療育施設などではストレッチの前に温熱療法を併用することが少なく,脳性麻痺児・者に対する効果についてもあまり検討されてこなかった.今回の研究を通じて小児の療育施設においてもホットパックを活用していくことの意義が示されたと考える. また,研究に使用したホットパックは一般家庭にある電子レンジで温めて使用できることから,在宅生活の脳性麻痺児・者が日常的に使用することにより,関節拘縮や筋骨格系の痛みなどの二次障害の軽減につながるものと考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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