理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
ウェアラブル姿勢・活動モニタシステムによる小児患者の歩行動作定量評価の試み
窪田 美穂西山 和弘吉田 歩美原國 政紀湯地 忠彦山口 美奈谷口 早弥香福永 奈美子東 祐二藤元 登四郎白 美娜本井 幸介山越 憲一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Bb1178

詳細
抄録
【目的】 地域における通院施設において、セラピストが小児の日常生活状況や補装具・投薬の効果等を把握する場合,これらの情報は家族からの問診に頼っており,その正確な把握や,小児の変化に合わせた関連機関との情報共有は十分に行われているとは言い難い.また,セラピスト間においても評価結果に差異が生じやすく,定量的な評価が求められている.定量的な動作解析として床反力計や三次元動作解析装置を用いる方法があるが,装置が大掛かりであり施設環境が限定されることや,計測範囲が限られる等の課題がある.一方,著者らが成人用に開発したウェアラブル姿勢・活動モニタシステムを小児の活動評価に応用することにより,セラピストが身体活動や行動,機能を把握,関連機関と情報を円滑にやりとりし,家族を支援することができると考えられる.そこで本研究では,まず本システムが応用可能か小児の歩行計測を行い,姿勢変化の定量評価を試みたので以下に報告する.【方法】 ウェアラブル姿勢・活動モニタシステムは,無線送信機(リアルタイム計測用),メモリ(オフライン計測用),バッテリー,加速度・ジャイロセンサ(3軸)が内蔵された小型計測ユニットを,体幹には肩サポータ型ホルダ,大腿・下腿には膝サポータ型ホルダを用いて装着する. 得られたデータは,ネットワーク機能によりPCに転送後,自動解析ソフトを用いて,重力方向に対する各部の角度変化を計測する.これにより,被計測者の姿勢変化の特徴を詳細かつ明確に捉えることができる.また角度情報より,各姿勢(臥位,座位,立位,歩行,起立・着座)を判定し活動性を評価できると共に,歩行中には1歩行周期毎の速度や歩幅等を算出可能である. 今回,本システムを用いて,当院にてリハビリテーションを実施している小児外来患者1名を対象とした.対象年齢は8歳,性別女児,診断名は脳性まひ(自立歩行を獲得済)である.計測は椅子座位から開始し,静止立位10秒,16mの歩行路において前後3mを助走距離として計測した.また当院にて処方した足底板について,非着用(1回目)及び着用の状態において計測・比較を行った。【説明と同意】 本計測は,ヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理委員会の承認並びに対象者とその家族に説明と同意を行った後に実施した.【結果】 本システムにより体幹・大腿・下腿角度,膝関節角度,歩行速度など,児の歩行中の経時的な変化を計測し,姿勢変化の詳細な特徴や計測中の姿勢状態を評価することが可能であった.足底板着用前においては歩数14歩,立脚率71.7±2.22%,平均歩行速度0.82±0.05 m/sであった.また,足底板着用後においては歩数19歩,立脚率72.1±2.01%,平均歩行速度0.75±0.14m/sであった.一方足底板着用後において,大腿及び膝関節の伸展角度が増加しているものの,SDは着用後に大きく(足底板非着用時:大腿 -19.8±2.87 deg,膝関節 34.5±3.82 deg,着用:大腿 -23.1±3.62 deg,膝関節 30.0±4.78 deg)なっていることが確認された.また、計測中の姿勢状態も的確に判別していることが確認された.(臥位0%,座位20%,立位31%,起立・着座5%,歩行44%)【考察】 今回,本システムにより,これまでの成人における結果と同様に,詳細な姿勢変化の特徴を評価可能であった.例えば足底板装着前後における評価において,装着時の大腿・膝関節の伸展増加から歩行動作の向上が認められるものの,SDが増加していることから,各部の動きの再現性の確保には至っておらず,さらなる理学療法支援の必要性も確認された.このように,本システムの定量的評価は,的確な療法や情報共有を実施する上で非常に有用であると考えられる.また,これまで小児の姿勢の定量的評価には3次元動作解析装置など大掛かりな装置での計測が必要であったが、本システムは環境を限定することなく小児においても計測可能であり,今後本システムを用いて様々な症例,さらには日常生活中においても,継続的に計測・評価を行うことで,小児の身体機能や日常生活における活動量の把握,家族や関連機関との情報共有等の検討を行っていく予定である.【理学療法学研究としての意義】 本研究はこれまで成人において主に検討されていた活動の定量評価について,小児への応用を新たに行うものであり,小児における定量的な評価手段となることが期待できる.また得られる情報についても,体幹・大腿・下腿の各部の動きを精度よく捉え,姿勢変化の特徴や活動内容,歩行速度の変化を詳細かつ明確に捉えることができるため,臨床現場においてより効果的なリハビリテーションに繋げることができると考えられる.【謝辞】 本研究の一部は総務省戦略的情報通信研究開発推進制度SCOPE(102305004,平成22~23年度),財団法人医科学応用研究財団の助成により行われた.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top