抄録
【はじめに、目的】 Churg Strauss症候群(以下CSS)は、別名アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)とも呼ばれ、気管支喘息の既往、末梢血中抗酸球増加と血管炎症候群が主な特徴である。神経症候として、多発性単神経炎を呈する事が多く、比較的後遺症が残ることも少なくない。リハビリを必要とするが、理学療法の報告は少なく、予後予測、治療法の選択は確立されていない。今回、急性期の理学療法を実施し、良好な経過につながったCSS患者の理学療法を経験したのでここに報告する。【方法】 対象は、62歳の女性、2010年1月、気管支喘息と診断、2010年5月から喘息発作を繰り返し、2011年5月、両下肢遠位部の筋力低下、異常感覚が出現。2011年6月23日に病歴、重度の末梢性多発性神経炎の所見、免疫学的検査、神経生検からCSSと確定診断された。理学療法は、入院後14日後に開始した。入院初期の歩行レベルは、歩行器歩行の軽介助レベルであった。運動療法の実施頻度は、平均5回/週、内容はストレッチ、バランス訓練、筋力トレーニング、歩行訓練、自転車エルゴメーターを実施した。対象の筋力(MMT)、触覚、Berg Balance Scale(以下 BBS)、Functional Reach Test(以下FRT)、10m歩行速度、日常生活動作(以下ADL)、の経過を検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者に対しては、ヘルシンキ宣言に基づき、研究の趣旨を十分に説明し、同意を得た。【結果】 筋力は、左右共に膝関節周囲筋は、MMT3、4レベルから発症後3ヶ月後には4~5レベルに増強した。前脛骨筋は、発症時より2→3(3ヶ月)に増強し、左下腿三頭筋は、発症時より2→3(3ヶ月)に増強した。左足趾屈筋は、発症時より1→3(3ヶ月)に増強した。触覚は、内側足底神経領域(母趾腹側)外側足底神経領域(小趾腹側)は、発症時は脱出であったが、3ヶ月後重度鈍麻となった。深腓骨神経領域(母趾背側)浅腓骨神経領域(足背)では、発症時は重度鈍麻であったが、3か月後中等度鈍麻となった。 杖、短下肢装具使用での10m歩行時間(秒)は25.8(1ヶ月)→18.2(3ヶ月)となった。BBSは、20/56(1ヶ月)→48/56(3ヶ月)、FRTは、15cm(1ヶ月)→27cm(3ヶ月)となった。ADLは、発症時のFIMは98/126点で、歩行は装具、杖使用の軽介助レベルであった。発症3ヶ月後により屋外杖歩行自立となり、FIM123/126となった。発症3ヶ月半後退院となり、家庭復帰となった。【考察】 軸索型の末梢神経障害の機能回復は緩徐で長期にわたり、日常生活動作の障害を残す例は少なくない。しかし、本症例は、初期から装具療法を行い、検査結果(P‐ANCA、CRP、好酸球数)の変化を随時確認しながら、運動負荷量を設定し集中的なリハビリを行うことで早期の家庭復帰が可能となった。機能回復には、腫脹のあわせて装具の形状を定期的に調節することや投薬が比較的頻回に変更されるため減薬、増薬による症状および検査結果の変化に注意しながら訓練の変更、運動負荷量の調整を行った。また、血管炎の障害程度によって回復速度の違いがあるため神経伝導速度検査で定期的に評価した所見を参考にし、訓練の変更を行った。今回CSSを発症した症例において、集中的な理学療法を行い、四肢末梢部の筋力の改善やバランス反応の改善がみられ、家庭復帰が可能となった。要因として初期の装具療法の導入で、セルフケアの介助量が軽減し、自己のモチベーションの維持が出来た事。また、自覚症状、検査結果を随時確認し、運動負荷量を調節することで、四肢末梢部の血流障害を助長しないよう配慮した事が運動機能向上に寄与したと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 血管炎の障害程度によって回復過程の違いが存在するが、本症例はより早期にリハビリが介入し集中的なリハビリを行ったため早期で家庭復帰することが出来た。年間新規患者が約100例の希少な症例のため、治療内容、回復過程を報告することで、疾患に対する理解や効率のよい治療方法の確立に寄与すると考えられる。