理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
転倒を繰り返す進行性核上性麻痺の一例に対する活動量計を用いた理学療法効果の検討
河島 猛山本 洋史岩田 裕美子喜谷 直美宗重 絵美西薗 博章井上 貴美子
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キーワード: 活動量計, PSP, 転倒
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p. Bb1432

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抄録
【はじめに、目的】 進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)を含む神経変性疾患の特徴として易疲労性が挙げられる。易疲労性を考慮しない活動量の継続は過用を生じる可能性がある。また、活動量変化は過用だけでなく廃用にも影響し、疾患状況によっても変化する。従ってこれらの疾患に対する理学療法介入においては身体活動量の把握が重要である。入院により活動量が低下する症例は多くみられるが、入院中理学療法を行うことにより活動量増加が期待される。当院では入院による神経筋疾患の理学療法頻度は週3回を原則としている。そのため理学療法実施日と非実施日の活動量に変化が生じると予想される。今回我々は、転倒を繰り返すため入院中身体活動を制限されているPSP症例に対し活動量計による身体活動量評価を行った。理学療法実施の有無により活動量の違いがあるかあきらかにし、この効果について検討することを研究目的とした。【方法】 症例は76歳男性(身長159cm体重67kgBMI26.5)既往歴:糖尿病。現病歴:平成21年9月頃より歩行障害、平成22年7月より他院にてL-dopa処方されるが改善せず経過、平成23年7月当院紹介され精査目的で8月26日入院となった。入院前ADL状況は屋外杖歩行自立、買い物には週2〜3回タクシーを利用し、屋内移動は自立していた。階段昇降も自立であったが荷物を持っての階段昇降に不安があった。食事、排泄、更衣、入浴、整容は自立。生活関連動作の掃除、洗濯、炊事も自立であった。しかし全ての動作において後方に転倒しやすい状況を感じており入院前も転倒経験があった。入院時の投薬状況はメネシット100mg1錠であった。振戦無し、無動症状無し、固縮の程度は頚部で軽度あるも四肢は無し、姿勢反射障害は後方に突進現象がみられた。高次脳機能検査はMMSE27/30、FAB11/18、生活環境は独居でエレベーター無しのマンション3階に住居している。介護保険など社会資源の利用はなし。活動量計はスズケン社製ライフコーダーGSを用いて測定し、ライフライザー05コーチVer2.0を用いて解析した。活動量計は起床時から入眠時まで入浴時以外装着することを原則とした。検討項目は総消費量、運動量、歩数、距離、活動時間、運動強度とした。統計処理は理学療法実施日と非実施日に分け、対応のないt検定を有意水準p<0.05として行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の目的と活動量計を装着する方法について説明したのち、活動量計装着を途中で中断することも自由であり、そのことによって不利益を受けることがないことも説明して同意を得た。【結果】 理学療法実施内容は関節可動域訓練、筋力維持増強訓練、歩行訓練、階段昇降訓練を平成23年8月31日から10月15日まで46日間の入院期間中に実質計18日間のべ18単位を実施した。退院時の投薬はメネシット100mg 3錠であった。活動量計の装着日数は27日間で、有効な統計解析可能日数は17日であった。このうち理学療法実施日は9日に対し非実施日は8日であった。ここから外泊日を除外し理学療法実施日は8日に対し非実施日は7日となった。理学療法実施日と非実施日の検討項目平均値は(実施日/非実施日)総消費量1616.5±80.5/1512.8±66.3kcal(p<0.05)、運動量44.6±21.3/20.4±31.9kcal、歩数1762.8±765.8/772.1±1026.1歩、歩行距離1.17±0.48/0.5±1.68km(p<0.05)、活動時間36.8±37.8/16.2±33.9分、運動強度別でみると歩行運動271±117.1/122.5±151.4分、速歩運動36.3±37.5/13±25.2分、強い運動0.5±0.53/3.2±8.6分であった。FIMの理学療法開始時得点は移乗6、歩行5、階段昇降5点から終了時変化なかった。10m歩行時間は理学療法開始時9.8秒21歩から終了時9.0秒18歩であった。【考察】 活動量による検討から、総消費量と歩行距離の項目で理学療法実施日の平均値は有意に高かった。またその他の項目においても理学療法実施日の平均値は高い傾向にあるため理学療法が活動量増加に効果があったと考えられる。本症例は転倒リスクが高いため病棟では活動範囲を制限された。この制限による活動量低下は廃用を生じる可能性が高いことが予想された。しかしFIMにおける得点経過と歩行時間は入院時と退院時で変化がなかったことより廃用予防として理学療法介入効果があったと考えられる。ただしこれまでの生活背景などからみてこの活動量が適量であったかは検討の余地がある。今後このような症例に対し頻度も含めて検討したい。【理学療法学研究としての意義】 理学療法介入の有無による活動量を比較したことによりその効果を客観的に示したことに意義があると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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