理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 口述
ロボットスーツHAL福祉用を用いたトレーニングの検証
─主観的アンケート調査を通して─
長谷川 真人田上 未来遠藤 憲杉本 留美奈良間 和子林 知広中田 金一山海 嘉之
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p. Bc1033

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抄録
【はじめに、目的】 ロボットスーツHAL福祉用(以下,HAL)は動作時に生じる生体電気信号を基に自発的な運動機能を補助することを目的に開発され,販売されている当社(CYBERDYNE株式会社)のロボットである.2011年10月末時点で,国内113の医療福祉施設で活用され,256台が全国で稼働中である.多くの理学療法士などによって使用され,今後,リハビリテーション機器の一つとして有効活用が期待されるロボットである.我々は,HALの運用方法の開発検証と普及を目的とし,障害者に対しHALを用い歩行に特化したトレーニングを独自の施設であるHALFIT(茨城県つくば市)で実施している.今迄のHALの研究報告は,歩行能力など,身体面での変化を定量的に検証した例が殆どで,利用者の主観的評価を検証した例はない.本研究はHALを用いたトレーニングの主観的評価の検証として,HALFITでのアンケート調査の報告を目的とする.【方法】 対象は,2010年7月から2011年5月までにHALFITに参加した90名とし,トレーニング後に独自で作成したアンケートを実施した.アンケート内容は, (1)トレーニングの印象(以下,印象),アシストの感じ方(以下,アシスト),HALの主観的な使用効果(以下,使用効果)について5段階評価に加え, (2)トレーニング時のコメントの自由記載であった. (1)のアンケート結果に数量化2類を用いて分析を実施した.目的変数は来場回数,説明変数は印象,アシスト,使用効果の5段階評価値とした.自由記載コメントは,カテゴリー分類を行い,その傾向を分析した.【倫理的配慮、説明と同意】 HALFIT開始前に,本研究の趣旨に関する説明を十分に行い,書面にて同意を得た. 【結果】 計349のアンケートを回収したが,有効アンケートとして296のアンケート結果を使用した(有効回答数84.8%).数量化2類の分析結果,トレーニングに関する印象,アシスト,使用効果の各評価値は装着3回目以降に高くなった. また分析結果の判別的中率は,60%台であった. コメント総数640の分析結果は,コメントのうち約80%が自己分析および感想で,HALに関する要望,期待が全体の約20%であった. 自己分析結果の内訳では,歩き易さ等の歩行動作感が最も多く(21%),続いて装着感(11%),運動量・疲労感に関するもの(11%),アシスト感(8%)となった.また,効果・効能,理解,次回目標に関しては,各々,全体の5-6%であった.他にも達成度(4%),痛み(3%)に関するコメントに加え,以上の内容のコメントに属さないものの割合は、25%となった.要望は男性により多くHALに対する期待が高い傾向が見られた.要望の内訳は,HALの機能が最も多く(42%),続いて設定(23%),訓練プログラム(16%),環境(12%),その他(4%),トレーナーに関するもの(3%)となった. 【考察】 HAL FITトレーニング後のアンケート調査結果の分析として,装着回数が3回以上となる場合,印象,アシスト,使用効果に対して,より高い評価が得られる傾向となった.HAL FITにおいては1-2回装着トレーニングのみでなく,3回以上の継続的なトレーニング実施が顧客満足度にも寄与する可能性が考えられ,今後の検証課題である. なお,回答のうち,全く効果がないと感じられた意見は極少数であり,全般的には,HALを用いた訓練には満足している傾向が伺えた. コメントで最も多かった内容は,自己分析に関するものであったが,アンケートに記載されている文書に主語等がないこと,または装着者のその日の体調等に起因した表現が多いことなどから,各装着者の装着回数を考慮した気持ちの変化を観察していくことが望まれた.コメントでの要望事項として,HALに対する要望,装着時の各種設定,トレーニング中の設定,また少数意見だが,場内の雰囲気がHAL FITの課題として上げられた. 今後の課題として,アンケート内容の数量化2類での判別的中率が低い事から,精度の高いアンケート開発が必要である.HAL運用において身体機能等の定量的評価だけでなく,主観的評価を含んだ包括的評価が求められ,より適切な主観的評価方法での検証を元にした,装着者毎のきめ細かなHAL運用プログラム開発が必要と考えられる.【理学療法学研究としての意義】 アンケート調査を通してHALを用いたトレーニング利用者の主観的評価を分析し,HAL福祉用の運用方法開発の方向性を示した.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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