理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 口述
ロボットスーツHALが維持期片麻痺患者の歩行動作に及ぼす即時的効果
大岡 恒雄金澤 浩島 俊也白川 泰山
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p. Bc1032

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抄録
【目的】 ロボットスーツHAL(以下, HAL)の適応疾患, およびプロトコル等についての明確なガイドラインは示されていないが、ここ数年それらに関して数多く報告されている.我々もこれまでに維持期片麻痺患者に対するHALの使用効果について報告を行っており(金澤ら.2010,大岡ら.2011),HALは維持期片麻痺患者に対して歩行速度の向上や歩幅の増大をもたらすことを確認した.しかし,これまで特定の疾患に対するHALの使用効果についての客観的かつ定量的な分析はされていない.そこで本研究では,HALの即時的効果を数多く認めてきたことから対象を維持期片麻痺患者とし,シート式足圧接地足跡計測装置を用いHALによる歩行練習後の歩行動作の変化をより詳細に分析することを目的とした. 【方法】 対象は,脳卒中発症後6ヶ月以上が経過した当院の外来および通所リハビリテーションを利用する男性9名とした.対象の条件は,これまでにHALを装着した経験のない独歩または杖で介助なく平地歩行が可能な者とした.対象の年齢は65.9±10.0歳(平均±SD)であり,身長は167.3±4.5cm,体重は66.6±9.3kgであった.発症後罹患期間は,57.4±33.8ヶ月であり,麻痺側下肢のBrunnstrom Recovey Stageは4が2名,5が5名,6が2名であった.HAL装着後に実施したエクササイズは,いずれの対象も30分間程度の歩行練習のみであり, HAL実施前(以下, HAL前)とHAL実施後(以下, HAL後)の各測定項目を比較した.測定項目は, 10m最大歩行時間(10mMWT),通常歩行時の歩幅,歩隔,足角,立脚期最大足底圧とした.歩幅,歩隔,足角,立脚期最大足底圧の測定にはシート式足圧接地足跡計測装置であるウォークWay MW-1000(アニマ株式会社)を使用した.統計学的分析は,10mMWT,麻痺側および健側の歩幅,歩隔,足角,立脚期最大足底圧の比較には対応のあるt検定を行い,危険率5%未満を有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象には事前に本研究の趣旨と測定内容に関する説明を十分に行い,紙面で同意を得た.また,医療法人エム・エム会マッターホルンリハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て行った(MRH1123).【結果】 10mMWTは,HAL前は24.3±19.3秒,HAL後は22.4±17.5秒と有意に短縮した.麻痺側の歩幅は,HAL前は32.2.±13.8cm,HAL後は34.2±16.3cmであった.健側の歩幅は,HAL前は37.3±10.3cm,HAL後は42.4±9.5cmと有意に歩幅が増大した.麻痺側の歩隔は,HAL前は20.8±5.1cm,HAL後は19.6±3.9cmであった.健側の歩隔は,HAL前は19.7±5.5cm,HAL後は19.2±6.2cmとなった.麻痺側の足角は,HAL前は19.8±7.6°,HAL後は13.6±5.9°となった.健側の足角は,HAL前は6.3±12.1°,HAL後は7.5±11.4°となった.麻痺側の立脚期最大足底圧は,HAL前は52.5±10.5kgf,HAL後は60.4±6.2kgfと有意な増大がみられた.健側の立脚期最大足底圧は,HAL前は54.4±10.7kgf,HAL後は61.0±15.3kgfと有意な増大がみられた.【考察】 本研究の結果から,維持期片麻痺患者のHALの即時効果としては10mMWT,健側の歩幅,麻痺側,および健側の立脚期最大足底圧に有意な変化がみられた.これは,HALを実施することによって麻痺側立脚期の荷重量を増大させ麻痺側立脚期の安定化が図られた結果,健側の歩幅が増大し歩行速度が向上したのではないかと考えられる.島ら(2011)はHAL装着下にて歩行練習を主体としたエクササイズのみを実施した結果,HAL装着後の麻痺側への最大足底圧は17.9%増大したと報告しており,本研究でも10.9%の増大がみられた.通常の歩行練習のみで上記の結果を得ることは難しいのではないかと思われ,1回のHAL装着下での歩行練習のみで学習効果をもたらすことはHALを実施する利点かもしれない.発症後約5年以上が経過している維持期片麻痺患者の歩行機能はプラトーに達していると考えられたが,HALの実施によって即時的に歩行速度や歩行動作に変化をもたらすのではないかと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果から維持期片麻痺患者に対してHALの実施は効果が期待され,理学療法の新たな発展に寄与するものではないかと考えられる.今後は維持期片麻痺患者のさらなるデータの収集を行い,長期継続による効果等について検討していく.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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