理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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先進的リハビリテーションツールの導入と活用に向けて
─当院におけるロボットスーツHAL福祉用の運用報告─
佐藤 聡見佐々木 純熊谷 篤史添田 英二齋藤 成也渡辺 知子
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キーワード: HAL, ロボット, 運用報告
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p. Bd1459

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抄録
【はじめに、目的】 近年、科学技術の進歩により、リハビリテーション(以下リハ)の分野においても、先進的テクノロジーを利用した治療ツールによるリハ効果への期待が高まっている。それらの一つに、ロボットスーツHybrid Assistive Limb福祉用(以下HAL)が挙げられる。これは皮膚表面からの生体電位の抽出と、足底荷重センサを用いた体重移動の検知に基づく運動アシストを行うことにより、運動意思と運動アシストのより適切な因果関係を構築できるシステムを含み、リハ場面における歩行練習や随意運動練習により高い効果が期待できるとされる。しかし、本邦においてHAL導入開始からの期間がまだ浅いことから、適応疾患やプロトコール等のガイドラインを示されておらず、各施設において運用の模索がなされている段階である。当院においても、2011年7月よりHALを導入し、回復期リハ病棟の中枢神経疾患、運動器疾患患者を中心に介入を進めている。今回、当院におけるHAL導入の流れや運用方法を報告する。【方法】 当施設ではHAL導入にあたり、円滑な運用とHAL使用の習熟者を早急に育成することを目的に理学療法士4名、作業療法士1名によるTeam HALを結成した。その後、当施設内でのHALの運用法(介入頻度、症例数の管理、効果判定方法等)を設定し介入を開始した。介入頻度に関しては、患者1名あたり1回/週の継続介入とし、週に3日のHAL介入日(午後)を設け、1日あたり3名前後に患者を振り分けている。適応患者の選出に関しては、医師の指示に基づきカンファレンスを実施し、その中で決定する。その後患者の担当理学療法士、作業療法士とTeam HAL、患者本人、家族により治療目標を明確に設定する。介入は、Team HALメンバーと各患者の担当療法士により行い、効果判定のもとアシスト量等の設定や運動方法の決定をしながら進める。効果判定に関して、評価時期は初期評価(介入前)、中間評価(初期介入直後、介入1週間後、2週間後、4週間後、その後2週間間隔で実施)、最終評価(介入終了時)を実施し、評価内容は各患者の目標に応じて特異的に決定する(10m歩行速度、Timed Up & Goテスト、6分間歩行距離、ROM、MMT、12段階片麻痺回復グレード、動画撮影による動作分析等)。その後は評価結果により、必要に応じて治療方法の変更や終了を検討する。【倫理的配慮、説明と同意】 HALの患者への適応にあたり、事前にHALの概要、適応、禁忌を含む治療説明書、治療データの研究への使用承諾書を作成し、文書による説明を実施し、署名による同意を得た。【結果】 2011年10月現在、当院におけるHALの実施人数は計11名(脳卒中7名、大腿骨頚部骨折1名、変形性膝関節症術後1名、脊髄損傷2名)、施行回数は延べ47回となっており、対象者の年齢は54.2±11.3歳である。そのうち、中間評価により何らかの効果が確認され継続した介入を実施した症例は9名。継続が困難であった2症例の中止理由としては、「フィッティングの問題」、「生体電位の検出困難」が挙げられる。【考察】 HALの患者適応に際して、HALの期待される効果は、主に下肢随意運動の促通、運動学習、歩行練習量の増加、モチベーションの向上等とされるが、当院では特に随意運動の促通、運動学習の治療効果を期待した介入が多く実施されている。運動学習において効果的な介入を行うためには、HALのアシストによって行われる正しい運動方向の誘導とそれに伴う筋発揮に加え、その運動を行う際の知覚処理を促す必要があると考えられる。HAL装着中や介入直後には正しい運動の出現がみられても、その効果が持続しにくい症例も確認されている。このような場合、当院ではパーソナルコンピュータのモニター上に可視化された生体電位や体重移動の程度を視覚的にフィードバックするとともに、装着中の筋収縮や荷重の感覚を装着前後の感覚と比較するよう促した質問をし、それを言語化にて表出していただく等、HAL介入に加えたセラピストによる認知過程の活性化も併用している。現状の課題としては、装着時間の短縮化と使用習熟者の育成、介入頻度の増加、症例数の増加と効果検証の促進、他治療法(装具療法や体重免荷歩行練習等)との併用効果の検証、急性期からの介入検討等の必要性が挙げられる。【理学療法学研究としての意義】 近年の科学技術の進歩により本邦リハ分野においても、新たな治療ツールとしてのロボットの導入が図られてきている。一方、その実際の導入の仕方や運用方法においては、報告も少なく統一されたものが見いだせていないのが現状である。そのため、各導入施設における運用報告やその効果検証を早急に行い、先進的科学技術に並行したリハの発展を進める必要がある。今回の報告は、その先行報告として意義があると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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