理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
脳卒中患者における病棟歩行自立度と基本バランス能力テスト下位項目の関係
山口 英典末永 達也中村 学伊藤 貴史
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p. Be0002

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抄録
【はじめに、目的】 当院では担当患者の歩行自立度を理学療法士が病棟に報告するが、その際は理学療法士の臨床経験に加え臨床的バランス能力テストの数値を判断基準として用いている。これまでBerg Balance Scaleなど臨床的バランス能力テストと歩行自立度の関係性については様々な先行研究がある。脳卒中片麻痺患者の歩行能力を評価するには麻痺側・非麻痺側に分けた評価が必要であるが、脳卒中片麻痺患者において麻痺側・非麻痺側に分けたバランス課題を用いて歩行自立度の関係性を示した報告は少ない。基本的バランス能力テスト(Basic Balance Test:BBT)は望月らによって考案された臨床的なバランス指標である。BBTは、座位・立位での姿勢保持、座位・立位での重心移動、立位でのステップ動作、端座位からの起立と着座などからなる25項目の下位検査から構成されており、姿勢保持、重心移動、ステップ動作の項目は方向性を持った左右別に採点をする。本研究の目的は、BBT下位項目と病棟歩行自立度の関係性を明らかにし、病棟歩行自立度に影響する有用なバランス因子を検討することである。【方法】 対象は、当院に入院している脳卒中患者39名(男性25名、女性14名、平均年齢±標準偏差:70.4±12.5歳)であった。疾患の内訳は、脳出血16例、脳梗塞18例、くも膜下出血3例、その他2例であり、発症から調査までの平均日数±標準偏差は94.4±44.5日であった。除外条件は、脳卒中再発の者、両側性障害の者、高次脳機能障害により動作指示を理解できない者、当院入院が1週間未満の者とした。対象者にBBTによるバランス能力の測定と病棟歩行自立または病棟歩行非自立の歩行能力を調査した。独立変数は、得られたBBT下位項目において左右での採点がある項目について、麻痺側・非麻痺側として分けた25項目とし、従属変数は病棟歩行自立・非自立とした。各変数において単変量解析(Mann-WhitenyのU検定)を行い、有意差が見られたものにおいて、ロジスティック回帰分析を適用させ比較・検討した。変数の選択は尤度比検定による変数増加法を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。対象者には事前に研究の方法・目的・倫理的配慮を十分説明し、書面にて同意を得た。また、対象者には研究同意の撤回がいつでも可能なことを説明した。【結果】 単変量解析で有意差が見られた20項目を独立変数とし、病棟歩行自立度を従属変数としたロジスティック回帰分析を適用させた。病棟歩行自立度に影響する変数として、閉脚位から前方へ非麻痺側でのステップ動作と立位での非麻痺側への重心移動が選択された(モデルχ2検定p<0.01)。閉脚位から前方へ非麻痺側でのステップ動作のオッズ比は0.047(95%信頼区間0.003~0.941)、立位での非麻痺側への重心移動のオッズ比は0.055(95%信頼区間0.003~0.544)であった。変数の有意性は、閉脚位から前方へ非麻痺側でのステップ動作がp<0.05、立位での非麻痺側への重心移動がp<0.05であった。このモデルのHosmer-Lemeshow検定結果はp=0.805で適合していることが示され、予測値と実測値の判別適中率は94.9%であった。【考察】 本研究により、BBT下位項目の中で、閉脚位から前方へ非麻痺側でのステップ動作と立位での非麻痺側への重心移動が、脳卒中患者において病棟歩行自立度に影響するバランス因子であると選択された。選択された2項目に関して、非麻痺側では支持性と空間での運動性が、麻痺側では支持性が要求される。これは、麻痺側の空間での運動能力が低い場合でも、非麻痺側への大きな重心移動が可能となることで麻痺側の歩行時の振り出しが代償されるのではないかと考える。高橋らは、脳卒中患者の歩行自立度において麻痺側下肢荷重率と非麻痺側筋力の関連を調査し、非麻痺側筋力の重要性を示している。これは、本研究で得られた2項目のバランス課題に要求される能力とも一致することから、閉脚位から前方へ非麻痺側でのステップ動作と立位での非麻痺側への重心移動は脳卒中患者における病棟歩行自立度に影響する有用なバランス因子であると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究により脳卒中患者において病棟歩行自立度に影響する有用なバランス因子が明らかとなった。選択された2項目のバランス課題を用いて病棟歩行自立度の予測として活用したり、病棟歩行自立を目標とする脳卒中患者には、選択された2項目のバランス能力改善を優先するなど、理学療法介入方法の検討に活用が可能であると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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