理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
脳卒中片麻痺患者の長下肢装具装着歩行に影響する因子の検討
増田 知子吉尾 雅春山本 康一郎南 祐次
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p. Be0004

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抄録
【目的】 脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおける長下肢装具(Knee Ankle Foot Orthosis;以下KAFO)の有用性が注目されている。しかし、その方法論は確立されているとは言い難い。我々は、片麻痺患者に対するKAFO使用が歩行中の足関節運動範囲の拡大に寄与する可能性があるという研究結果を得て、第46回本大会において報告した。従来、固定性が重視されてきたKAFOであるが、足継手の可動性を利用する治療方略も考えることができる。また、歩行には姿勢保持とリズム、パターン維持が重要である。すなわち、歩行トレーニングにおいては、歩行各相でダイナミックアライメントを均一に保つことが必要とも言える。そこで、片麻痺患者のKAFO装着歩行に関して、関節運動範囲およびアライメントの再現性という視点から、装具の性質とPTによる介助が及ぼす影響を検証した。【方法】 当院入院中で歩行に介助を要する脳卒中片麻痺患者3名(37歳女性、64歳男性、76歳男性)を対象とした。全員が足継手にGait Solutionを使用したKAFOを所有していた。対象者は4条件(A:所有KAFOで臨床経験10年目のPTが介助、B:所有KAFOで臨床経験1年目の PTが介助、C:評価用KAFOで10年目PTが介助、D:評価用KAFOで1年目PTが介助)の下で10mの平坦路を歩行した。その間Gait Judge(川村義肢株式会社製)にて装具装着肢の股・足関節角度、加速度を持続的に計測した。計測中は同期して矢状面よりデジタルビデオ撮影を行った。記録から2歩目以降の10歩を取り出し、各歩行周期における股・足関節の運動範囲を算出した。また、加速度グラフとビデオ映像を照合しながら初期接地(IC)、立脚後期における踵離地直前(Tst)を判断し、その時点での関節角度を採用した。各条件での1) 1歩行周期中の股・足関節運動範囲とその再現性、2) IC、Tstにおける股・足関節角度とその再現性について、級内相関係数およびt検定(p<0.05)を用いて分析した。なお、所有KAFOと評価用KAFOは全て同種の膝・足継手であり、設定も統一した。【倫理的配慮】 本研究は当院倫理委員会にて承認され、対象者に十分な説明を行い承諾を得た。【結果】 1) 1歩行周期中の関節運動範囲に関して、各対象者の股関節の平均値は条件Aで22.9±2.9°、23.7±2.3°、28.5±1.0°、Bで15.5±2.3°、19.7±1.3°、23.6±4.8°、Cで24.2±1.7°、23.7±2.7°、27.3±1.4°、Dで17.7±2.4°、19.7±1.3°、16.4±1.3°であった。足関節の平均値はAで20.2±1.5°、16.4±4.0°、20.0±1.1°、Bで18.6±1.0°、10.7±0.7°、14.2±1.0°、Cで17.0±1.3°、17.1±0.8°、26.5±1.2°、Dで16.8±0.9°、17.6±1.6°、25.4±1.9°であった。いずれの対象者においてもAの範囲がBの範囲より有意に大きかった。AとCを比較すると、1名は股・足関節ともに、2名は股関節、足関節でそれぞれ有意差がなかったが、どの対象者においても股・足関節ともにBの範囲がDの範囲より有意に大きかった。股・足関節の運動範囲の再現性は、A、Cにおいて足関節で高いが股関節では不十分であった。2) IC、Tstにおける股・足関節角度は、対象者‐相(ICまたはTst)‐関節(股または足関節)の組み合わせごとに分析した。再現性が良好であった組み合わせは条件A~Dでほぼ一致していたが、その組み合わせ間には傾向を認めなかった。【考察】 歩行各相における関節角度の再現性には、使用するKAFOおよび介助者による違いを認めなかった。一方で、股関節の運動範囲は、同じKAFOを使用しても介助者により大きな差を生じる場合があった。股関節は自由度が高い上にKAFOによって直接は制御されないため、介助による差が表れやすいと考える。したがってKAFOを使用した歩行トレーニングにおいては、股関節運動についてより広い範囲と高い再現性を両立する工夫が必要となる。また、同じ機能を有するKAFOでも、適合の良好なオーダーメイドではより広い関節運動範囲を誘導しやすく、介助者の経験が少ない場合は特にその傾向が顕著であることが伺われた。単にKAFOを装着するだけでは歩行トレーニングの質は保障されず、PTの技術と装具の適合性を併せることで効果的な治療に繋がるものと考える。【理学療法学研究としての意義】 KAFO装着下の歩行トレーニングにおける股関節への介助および装具の適合の重要性が示唆された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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