理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
理学療法士の観察による歩行分析とGait Judge Systemによる計測値との関係
山本 洋平田口 潤智笹岡 保典堤 万佐子大平 尚中谷 知生藤本 康浩佐川 明天竺 俊太
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p. Be0009

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抄録
【目的】 理学療法評価において動作観察は重要な要素の一つである。しかし日々の臨床場面では動作観察をセラピストの目視により行う機会が多く、主観的評価が中心となるためエビデンスが不足しているという報告もある。今日、リハビリテーション医療においても再現性のある評価・治療の重要性が求められており、動作観察において客観的・定量的な評価法を確立する重要性は高い。当院では川村義肢社製Gait Judge System(以下GJ)を導入し、歩行分析を可能な限り客観的に行うよう努めている。本研究の目的は、GJにより最適と思われる歩容と、セラピストが目視で最適と判断した歩容にどういった関連があるのかを調査し、客観的データを基に歩行分析をすることの重要性を明らかにすることである。【方法】 調査には脳卒中片麻痺患者の歩行動作を収録したビデオ映像を使用した。症例は当院に入院中の脳卒中片麻痺患者で、発症より61日が経過し、下肢機能はBrunnstrom Recovery Stage5、下腿三頭筋の筋緊張はModified Ashworth Scale 0、足関節背屈角度は15°であった。この症例においてGJに使用されている短下肢装具Gait Solution Designの油圧を1・2・3・4に変化させて10mの四点杖歩行を実施し、底屈トルクの波形と数値を計測した。この4パターンのビデオ映像を当院に在籍する理学療法士40名に見せ、そこから最も好ましい歩容と判断した映像を用紙に記入させた。またそう判断した理由も記載させた。調査対象である理学療法士には装具の油圧などの情報を知らせず、通常スピードおよびスロースピードで再生したビデオ映像のみを視聴させた。アンケート調査の結果から、ビデオの再生速度や経験年数により理学療法士が最も良い歩容であると判断した回答にどういった変化や傾向が見られるかを分析した。統計学的方法はマン・ホイットニーのU検定を用い、統計学的有意水準は5%とした。【説明と同意】 本研究は所属施設長の承認を得て、対象者に口頭にて説明し同意を得た。【結果】 GJによる評価の結果、油圧3ではファーストピーク(以下FP)とセカンドピーク(以下SP)が独立した単峰性の波形を示した。油圧1と2ではFPが二峰性の波形を示し、荷重応答期における下腿の後傾が認められた。ここから油圧2以下では底屈制動力が不足しているものと思われた。油圧4においてもFPは二峰性となった。これは油圧4では底屈制動力が強すぎ下腿を過剰に前方に押してしまうため、膝関節を伸展させて一旦重心を後方へと戻しているものと思われた。よって本症例においては油圧3が最適な油圧であると判断された。アンケート結果からは、最も良い歩容であるという回答数は、通常スピードでは油圧1が7名、油圧2が10名、油圧3が16名、油圧4が7名であった。スロースピードでは、油圧1が5名、油圧2が10名、油圧3が10名、油圧4が15名であった。通常スピードとスロースピードを合わせて最も良い歩行とした合計は、油圧1が12名、油圧2が20名、油圧3が26名、油圧4が22名であった。通常スピードとスロースピードで各油圧を選んだ数に有意差はなかった。経験年数4年目以上が油圧3を選択した数は3年目以下に比べ優位に多かった(P<0.05)。【考察】 今回の症例では油圧の変化による歩容の違いは僅かであったが、通常スピードでは油圧3を選択した者が最も多く、理学療法士による歩行分析の正確性・客観性が示された。また、経験年数4年目以上の理学療法士において油圧3を選択した割合が有意に高くなっており、歩行分析における臨床経験の重要性が改めて確認された。一方スロースピードでは油圧3よりも油圧4を選択した者が若干増加した。その理由として、通常スピードの観察はリズムや関節運動の滑らかさなど全体的な動きを把握し、日々の臨床でも高頻度に行っているため違和感なく評価できるが、スロースピードの観察では細かな関節運動や角度に注意が向きやすくなるため、結果的に判断が難しくなったことが考えられる。GJの波形と数値の計測結果からは油圧3の歩行が正常歩行に近いと判断できたことから、ビデオ映像のみを用いた歩行分析ではなく、力学的情報を加味した歩行分析機器の有用性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究は歩行分析装置を使用することで、より客観的な理学療法評価が可能となることを示唆したものである。近年普及しつつある簡便な機器により信頼性の高い評価を行うことの重要性を明らかにした点に研究の意義があると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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