理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
脳卒中後片麻痺者における閉眼静止立位時の同時収縮とバランス能力との関係
北谷 亮輔大畑 光司澁田 紗央理橋口 優山上 菜月
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p. Be0011

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抄録
【はじめに、目的】 姿勢が不安定となった時、バランス保持のために筋活動は様々に変化するが、片麻痺者では下肢筋の同時収縮により姿勢の安定性が向上するとされている(Arene N, 2009)。しかし、姿勢を安定化させる同時収縮とバランス能力との関係についての報告はまだ少ない。また、閉眼静止立位は片麻痺者にも使用されるBerg Balance Scale(以下BBS)に採用されており、片麻痺者のバランス能力を表す指標の一つであると考えられる。しかし、閉眼静止立位を行った時に生じる同時収縮の様態について検討した報告はない。片麻痺者において、同時収縮が閉眼時の立位バランスを保持するために、姿勢制御戦略としてどのように行われているか検討することは、バランストレーニングを考えるために重要であると考えられる。本研究の目的は、片麻痺者において静止立位時に閉眼によってバランス反応として生じる同時収縮と、重心動揺や動的なバランス能力との関係を明らかにすることとした。【方法】 対象は発症後6ヶ月以上、地域在住の脳卒中後片麻痺者14名(平均年齢53.9±12.2歳、男性7名、女性7名、右片麻痺10名、左片麻痺4名、下肢Brunnstrom Stage 3~6、Barthel Index 95~100点)とした。Kistler社製床反力計の上で両踵間30cm、足角20度の静止立位を取らせ、開眼と閉眼の2条件にて、10秒間の重心動揺を測定し、静的なバランス能力として実効値面積(cm2)を算出した。また、動的なバランス能力としてBBSを簡便化したShort form of the BBS(以下SFBBS)を測定した。重心動揺の測定と同時に、麻痺側・非麻痺側の前脛骨筋(以下TA)、腓腹筋(以下GAS)、ヒラメ筋(以下SOL)の筋活動(μV)を表面筋電図(Noraxon社製Telemyo2400)を用いて測定した。測定順序は無作為とし、各条件にて実効値面積、各筋活動ともに安定した5秒間を解析対象とした。得られた筋電図は20~250Hzにてフィルター処理した後、100msecのRMS波形で平滑化し、同時収縮の程度により筋活動変化の分類を行った。閉眼時の筋活動の平均値が背屈筋(TA)と底屈筋(GASかSOL)の両方とも開眼時の平均値より1SD(標準偏差)増加した場合を同時収縮ありとし、麻痺側・非麻痺側で同時収縮が増加した群(麻痺側で増加した者をP-C群、非麻痺側をNP-C群)と同時収縮が増加しなかった群(麻痺側で増加しなかった者をP-NC群、非麻痺側をNP-NC群)にそれぞれ分類した。対象者全員に対して、開眼時と閉眼時の各筋活動をWilcoxonの符号付順位検定、実効値面積を対応のあるt検定を用いて比較した。また、同時収縮の有無により分類した両群において、開眼時と閉眼時の実効値面積を対応のないt検定、SFBBSをMann-WhitneyのU検定を用いて群間比較を行った。本研究の有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本学倫理委員会の承認を得て、各対象者に測定方法および本研究の目的を説明した後、書面にて同意を得て行われた。【結果】 対象者全員で見た場合、閉眼時に全ての筋で有意に筋活動が増加し(p<0.05)、実効値面積も増加していた(p<0.05)。しかし、麻痺側の同時収縮が1SD以上増加したP-C群は5名、増加しなかったP-NC群は9名で、非麻痺側の同時収縮が増加したNP-C群は6名、増加しなかったNP-NC群は8名であり、全ての対象者で同時収縮が明確に増加していたわけではなかった。群間比較において、同時収縮が増加したP-C、NP-C群と増加しなかったP-NC、NP-NC群で開眼・閉眼時の実効値面積に有意な差は得られなかった。しかし、一方で同時収縮が明確に増加したP-C、NP-C群ではSFBBSの得点が有意に低下していた(p<0.05)。【考察】 全体的に見た場合、片麻痺者では閉眼時に全ての筋で筋活動を増加させており、閉眼時にバランスを保持するために同時収縮を高めていることが推察された。しかし、背屈筋、底屈筋の両方とも1SD以上増加させる者はむしろ少数であった。明確な同時収縮の有無による群間比較では実効値面積に有意な差がなく、下腿筋の明確な同時収縮の有無は、静的なバランス能力である静止立位時の重心動揺にはあまり影響していなかった。しかし、明確に同時収縮が増加した群では有意にSFBBSの得点が低下していた。このことから、閉眼静止立位時のバランス保持を行うだけでも、下腿筋に明確な同時収縮が生じる者は、動的なバランス能力が低下していることが示唆された。今後、閉眼静止立位だけでなく、他のバランス動作時の同時収縮の程度とバランス能力との関係について詳細に検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 本研究では、片麻痺者の閉眼静止立位において、姿勢を安定化させる同時収縮とバランス能力について検討し、特徴的な姿勢制御戦略としての同時収縮の特性が示された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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