理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

専門領域 口述
急性期脳卒中患者の静的・動的バランス能力がトイレ動作自立度に及ぼす影響
─Berg Balance Scaleを用いた検討と治療介入方法の考察─
溝端 良太小澤 明人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Be0012

詳細
抄録
【目的】 急性期脳卒中リハビリテーションの目標の一つとしてトイレ動作の自立が挙げられ、自宅復帰の可否に影響を与える因子の一つであり、患者のquality of life(QOL)の向上に大きく関与する。今回、トイレ動作自立度と総合的バランス評価のBerg Balance Scale(以下BBS)との関連性を調査した。その結果から静的・動的バランス能力に着目し、早期トイレ動作自立のために必要な理学療法の介入方法を考察した。【方法】 対象は当院Stroke Care Unit(以下SCU)病棟に入院した脳卒中片麻痺患者38名(平均年齢67.4±12歳)で疾患別では脳梗塞29名、脳出血9名である。対象群を、Functional Independence Measure(以下FIM)にて評価を行い、トイレ動作自立群20名(以下A群FIM7~6点)と非トイレ動作自立群18名(以下B群FIM5~1点)に分類し、BBSを評価した。トイレ動作自立に必要な因子を考察するために高次脳機能障害の有無・感覚障害の有無・麻痺側下肢BrunnstromStage(以下BRS)・運動失調についても評価した。統計処理には、A・B群間の比較検討をMann-WhitneyのU検定、相関係数についてはトイレ動作自立度(FIM)と各評価項目をSpearmanの順位相関係数にて検討した。トイレ動作自立度と強い関連性を示す項目の算出については変数減少法-重回帰分析を用いて検討した。統計学的有意水準は危険率1%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、本研究の対象者に対し、目的・内容を口頭にて十分に説明し、同意を得て実施した。倫理的配慮として得られたデータはリハビリテーション科内にて厳重に管理した。【結果】 Spearmanの順位相関係数の結果、トイレ動作自立度とBBS(rs=0.809)、注意障害(rs=0.937)、BRS(rs=0.869)において強い正相関を認めた。A・B群の評価項目をMann-WhitneyのU検定にて比較検討した結果、BBS総合得点(A群53±4.5・B群22.9±13.4、P<0.01)、静的BBS得点(A群11.9±0.4・B群6.9±3.9、P<0.01)、動的BBS得点(A群38.8±4.4・B群15.2±9.2、P<0.01)、注意障害(P<0.01)、感覚障害(P<0.01)、BRS(A群5.8±0.4・B群3.8±1.3、P<0.01)に有意な差を認め、総合BBS項目別では 13項目に有意な差を認めた。(P<0.01)有意差が認められた評価項目、BBS細項目別において変数減少法-重回帰分析では最終的に評価項目において注意障害(P=0.001、F=12.7)、BBS総合得点(P=4.47E-08、F=49.8)が、BBS細項目では立ち上がり(P=0.002、F=12.0)、座位リーチ(P=0.01、F=6.9)、立位保持(P=0.001、F=12.4)、振り向き(P=0.002、F=11.9)、一回転(P=0.002、F=11.8)、継足(P=0.01、F=6.7)、片脚立位(P=0.001、F=12.3)がそれぞれ選択される結果となった。【考察】 研究結果より、急性期脳卒中患者のトイレ動作自立度と静的・動的バランス能力に有意な関連があることが示唆された。deHaartらは、脳卒中患者のバランス能力低下は運動、感覚、認知過程の複雑な統合の障害であると述べており、本研究においてもA・B群間比較にてBRS、注意障害、感覚障害に有意差を認めていることから、これらはトイレ動作自立のためのバランス能力に必要な因子であると言える。また、トイレ動作にて最も難易度の高い動作は下衣着脱動作とされており、本研究のB群においても同様の結果が得られた。有意差が認められたBBS13項目に対する重回帰分析の結果、最終選択された静的バランス項目(立位保持)、動的バランス項目(立ち上がり、座位リーチ、振り向き、一回転、継足、片脚立位)から考察すると急性期からのトイレ動作自立には、重力下にて麻痺側を含めた抗重力伸展活動による支持基底面内での姿勢制御を条件とし、上下および、前後左右の重心移動を感覚フィードバックによって身体各部位を認知し、姿勢制御する複雑な動的バランス能力が必要であると考えられる。このことから、急性期脳卒中患者の早期トイレ動作自立のための治療介入方法としては、早期から抗重力姿勢下にて患者自身の能動的な姿勢変換の中で重心移動を制御する動的バランス能力の向上を図っていくことが重要であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 急性期脳卒中患者のトイレ動作自立度と静的・動的バランス能力の関連性および必要な運動機能・高次脳機能について若干の知見を得ることが出来た。今後は結果から考察した治療介入方法についての有意性の有無を引き続き臨床研究にて検証していきたい。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top