理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
頸部痛患者における日本語版Neck Disability Indexの信頼性・妥当性・反応性の検討
中丸 宏二相澤 純也小山 貴之波戸根 行成瓦田 恵三新田 收
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p. Ca0196

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抄録
【はじめに、目的】 頸部痛は比較的よく見られる健康問題の1つである。頸部痛の年間発症率は約15%で、頸部痛を経験した人の37%において少なくとも12か月間症状が持続したとの報告がある。このことから、頸部痛は患者の生活の質に多大な影響を及ぼす障害であるといえる。頸部痛患者の健康状態や治療のアウトカムを測定するために、海外では自己記入式の質問票を用いることが一般的となっている。Neck Disability Index(NDI)は国際的に最も多く使用されている頸部痛用の自己記入式の質問票で、英語圏以外の多くの国で翻訳されており、その信頼性・妥当性についても検討されている。NDIは日常生活動作に関するものが7項目、疼痛に関するものが2項目、集中力についてのものが1項目、合計10項目で構成されている。各項目は0~5点、合計点数は0~50点で評価し、点数が高いほど障害が大きいことを意味する。我々は日本でもNDIが使用可能となるように、NDIの開発者(Dr. Vernon:Canadian Memorial Chiropractic College, Canada)から日本語に翻訳する許可を得て、異文化適応のガイドラインに準拠して翻訳し、プリテストを行った。その結果、日本語版NDIは十分な表面的妥当性と内的整合性を有している事を確認した。本研究の目的は、対象人数を増やしたフィールドテストを行うことで頸部痛を有した外来患者における日本語版NDIの詳細な計量心理学的特性の評価を行うことである。【方法】 対象は頸部痛を訴える外来患者110名とした。患者のベースラインの状態を見るために日本語版NDIとThe Short Form Health Survey(SF-36)に回答してもらい、1週間後に全体的な状態の変化を7段階から選択するThe patient’s global impression of change(PGIC)とNDIに再回答してもらった。また、3週間後あるいは3週間未満で治療終了した際にもPGICとNDIに再回答してもらった。回答結果から日本語版NDIの内的整合性を検討するためにクロンバックα係数を算出した。再テスト信頼性は1週間後にPGICで変化なしと回答したものを対象に級内相関係数(intraclass correlation coefficient: ICC)を算出した。バリマックス回転を用いた因子分析によって日本語版NDIの因子構造を確認した。収束的妥当性を評価するため、ピアソンの相関係数によってNDIとSF-36の下位尺度との相関を調べた。反応性はスペアマンの順位相関係数を用いてNDIとPGICにおける点数の変化の相関を分析した。また、最小検知変化(minimal detectable change : MDC)を算出することによっても反応性を調べた。これは安定群における測定標準誤差(standard error of measurement : SEM)を基にして算出した。分析にはSPSS 16.0J for Windowsを用いて、統計的有意差は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 研究内容について書面と口頭で説明し、同意を得て質問票に回答してもらった。本研究は、首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 対象の平均年齢は60.1±14.7歳であった。日本語版NDIのクロンバックα係数は0.88、ICCは0.91であった。因子分析の結果、固有値1以上の2因子を抽出した。NDIの点数とSF-36の下位尺度との相関の範囲は-0.25~-0.51であった。NDIの点数の変化とPGICの変化の相関は0.53であった。SEMは2.9で、この値に対応するMDCの値は6.8となった。【考察】 日本語版NDIの信頼性(内的整合性、再テスト信頼性)、妥当性(収束的妥当性)は他国の翻訳版と同様の結果となった。NDIの因子構造は1因子と2因子の結果が報告されているが、日本語版NDIの因子構造は2因子であった。反応性はNDIとPGICのスコア変化の相関を調べ、高い相関を認めた。また反応性としてMDCも算出し、日本語版NDIは統計学的・臨床的に重要な変化を示すためには少なくとも7点が必要であることが示された。本研究の結果から、日本語版NDIの信頼性・妥当性・反応性が認められ、日本において頸部痛を訴える外来患者のアウトカムとして日本語版NDIを使用できることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 国際的に信頼性・妥当性・反応性が認められているNDIを日本の頸部痛患者のアウトカムとして使用できるようになる。このことから頸部痛患者に対する理学療法介入の臨床試験の質が向上し、他国と研究結果の比較ができるようになる。また同一の尺度を使用することからデータの共有が可能となり、国際的な多施設間共同研究に貢献できる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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