抄録
【はじめに】 我々は足趾に着目した足趾エクササイズを考案し、第43回本学術大会にて有痛性外脛骨の臨床研究を報告した、足趾エクササイズとタオルギャザーリングエクササイズを比較した。第46 回本学術大会では筋電図解析による足趾エクササイズの筋放電パターンを解析した、有痛性外脛骨の臨床研究と比較しその根拠を考察した。しかしながら、各々の足趾エクササイズと足部形態の関係は筋電図解析では明確にできなかった。よって本研究では各々の足趾エクササイズを施行し内側縦アーチへの影響を検討する。【方法】 対象は、特に足趾運動をしても問題なく過去6ヶ月間足関節周囲の傷害により医療機関にかかっていない健常者18名36足(男9名女9名)、平均年齢22.5±3.6歳、平均身長 163.6±9.3cm 平均体重 61.5±14.0 kgであった。内側縦アーチの測定は、Brodyが考案したNavicular drop(以下ND)を採用した。実験条件はタオルエクササイズ、考案した母趾で底屈する母趾エクササイズ、2-5趾で底屈する2-5趾エクササイズ、3-5趾で底屈する2-5趾エクササイズとした。尚、タオルエクササイズは足趾完全伸展から完全屈曲までを3分間施行した。その他の足趾エクササイズは端坐位で膝上に3kgの重錘をのせ、頭部が膝の直上にくるまで体幹伸展位で前傾させた。そして検者が足背部に約80%MVC程度の抵抗をかけて10回施行するものである。測定手順は乱数表使用してランダムに足趾エクササイズを選択した。統計処理は、各々のエクササイズの比較を反復測定一元配置分散分析後、多重比較法により行った。尚有意水準5%にて解析し統計ソフトIBM SPSS Statistics19を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 すべての被験者に対して、実験説明書を予め配布し本研究の主旨と内容について十分説明をした後、同意書に著名がされた。尚、本研究は群馬パース大学および早稻田大学の倫理委員会の承認のもと行った。【結果】 施行前のNDは4.43mmであった。タオルエクササイズ後は5.01 mm、母趾エクササイズ後は5.26mmとなった。各々施行前と比較して有意にアーチが低下する傾向を認めた(p<0.05)。一方で、2-5趾3-5趾エクササイズは各々3.15mm ,3.25mmとなった(p<0.05)。施行前と比較すると有意に内側アーチが低下しない傾向を認めた。以上のように各々のエクササイズで特徴的な結果を示した。【考察】 本研究は、我々が考案した足趾エクササイズと内側縦アーチとの関係性について検討したものである。我々が行った有痛性外脛骨の臨床研究では、母趾エクササイズとタオルエクササイズは疼痛軽減効果を示さなかった。一方で2-5趾3-5趾は疼痛軽減効果を示した。さらに筋電図の研究では、母趾エクササイズは外がえし筋群が優位に活動し母趾以外のエクササイズではそのような傾向は示さなかったことを報告した。本研究のアーチ計測からも同様に母趾と母趾以外のエクササイズは対称的な結果を示したことは興味深かった。本研究では、エクササイズの順番は乱数表を使用しておこなった、順番が内側縦アーチの結果に影響しないよう配慮するためである。NDの計測についてはすでに多くの報告者が高い信頼性を報告している、しかし我々は端坐位での足部荷重量を20%に設定することで先行研究よりも高い信頼性を得ることを報告した(城下:臨床スポーツ医学2011)。本研究でもその方法を採用した。母趾エクササイズやタオルエクササイズは内側縦アーチを減少させた。特に母趾エクササイズではその傾向は顕著であった。母趾以外の足趾エクササイズでは内側縦アーチを増加させた結果となった。我々が報告した筋電図解析の母趾エクササイズでは、長腓骨筋が優位に筋活動を示した。外がえし筋群が内側縦アーチを抑制させたと考えている。タオルエクササイズと母趾のエクササイズは類似した結果となった。タオルギャザーエクササイズは、母趾を含めた全趾を使用したトレーニングである。無意識下に母趾を優位に機能させたと考えている。本研究はいくつかの限界がある。第1に計測者が一人(筆者)であり、その情報バイアスを取除くことは不可能であった。第2に横断研究であるが故に一過性の変化でしかない場合がある。第3に被験者の疲労の要素など他のトレーニングの影響を完全に取り除くことはできなかった。今後はそれらをふまえ、縦断研究を試みる必要があると考えている。【理学療法学研究としての意義】 内側縦アーチとタオルギャリングエクササイズとの関係は認めないことが示唆された。臨床上、扁平足障害に対して内側縦アーチを促通したい場合、母趾以外の足趾に着目する必要があることが示唆された。また母趾の機能を抑制することも同時に示唆された。