抄録
【はじめに、目的】 左右の非対称な骨盤の高さ(以下、機能的脚長差)で立位保持や歩行を繰り返していると、腰痛や股関節周囲に二次的な疼痛や機能障害をきたす場合がある。機能的脚長差は一般的に中敷き、ヒールパッド、アウトソールで補高される。中敷きやヒールパッドは靴の中で足底部を持ち上げるため、踵が靴の中に保持されるためには高さに限界がある。またアウトソールでの補高では、美的・靴の重量の問題や義肢装具士に依頼する必要がある。距骨下関節を回内外に誘導することによって、機能的脚長差を補正することが可能であれば、前述した問題は改善できると考える。そこで本研究は、テーピングを用いて距骨下関節の回内外誘導を行うことで機能的脚長差の補正が可能か、またその補正可能な高さはどの程度かを検証することを目的とした。【方法】 本研究の対象は、既往に整形外科的疾患を有さない健常成人24名とした。内訳は男性12名、女性12名、年齢は19.9±1.4歳、身長165.1±7.1cm、体重57.8±9.4kgであった。方法は安静立位時の上前腸骨棘の高さを三次元動作解析器Mac 3D system(Nac社製) と赤外線カメラHark(Nac社製)6台を用いて両足立ちでの機能的脚長を測定した。機能的脚長は上前腸骨棘から床までの垂直に下ろした線分の長さと定義した。マーカーの貼付部位は右上前腸骨棘とし、全例において右下肢の機能的脚長を測定した。測定肢位は自然立位とし、両上肢は体側へおいた状態で両下肢の足幅、足角に口頭指示は加えなかった。距骨下関節誘導なし(誘導なし群)・回外誘導(回外誘導群)・回外誘導(回内誘導群)の3条件をそれぞれ3回測定し、その平均値を解析データとして用いた。距骨下関節の誘導にはテーピングを用い、測定する右側のみ実施した。テーピングは50mm幅のエラテックステープDE-50(ドレイパー社製)を使用した。距骨下関節の誘導には同一検者にて距骨下関節誘導が同程度となるようテーピングで固定した。統計的手法は、SPSS Ver12.0を使用し、一元配置の分散分析にて3群間を比較した。また、有意水準を1%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全ての対象者に対して、研究に関する十分な説明を行い、同意を得た上で実施した。【結果】 機能的脚長差は、誘導なし群903.0±11.4mm、回外誘導群912.0±11.3mm、回内誘導群899.3±11.4mmであった。各群間において有意な差が認められた。誘導なし群に対し回外誘導群では機能的脚が平均9.1mm延長し、誘導なしに対し、回内誘導では機能的脚が平均3.7mm短縮した。【考察】 誘導なし群に対し、回外誘導群は機能的脚を延長し、回内誘導群は機能的脚を短縮することが明らかになった。またその差は誘導なしに対し、回外誘導することで平均9.1mm機能的脚を延長し、回内に対しては平均3.7mm機能的脚を短縮することが明らかになった。これにより左右の脚にそれぞれ回外・回内誘導すると、機能的脚を最大で約12.7mmの補正が可能と推察される。距骨下関節回外では踵骨が直立化することから足底内側が床から浮き、機能的脚が延長、距骨下関節回内では踵骨が内側に倒れることから足底内側が床に接地し、機能的脚が短縮するためと思われる。本研究にて距骨下関節の誘導にて補正可能な機能的長差であれば、距骨下関節のみで機能的脚を補正可能である。またそれ以上の機能的脚長差があっても、距骨下関節の誘導にて中敷き、ヒールパッド、アウトソールの高さを低くすることが可能と考える。【理学療法学研究としての意義】 機能的脚長差は中敷き、ヒールパッド、アウトソールでの補正だけでなく距骨下関節の回内外誘導で補正可能であり、理学療法士でも簡便に補正が可能であると考える。