理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
大腿骨頸部骨折患者における患肢荷重率と歩行能力・バランス能力の関係
─人工骨頭置換術と骨接合術の比較─
南條 恵悟高木 峰子
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p. Ca0225

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抄録
【目的】 転倒などによる大腿骨頸部骨折(以下FNF )患者の多くは受傷後の日常生活自立度が低下することが知られており,術後早期では疼痛などの要因により患肢への荷重が不十分となる症例が多く,安定したADLを獲得することが容易ではない.我々は第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会において,FNF受傷による術後患者において患肢荷重率と機能的なバランス能力には強い相関関係があることを報告した.しかし,FNFは骨折部位や安定性により,選択される術式等が多様である.過去に術式を考慮した,FNF患者における患肢荷重率と歩行能力・機能的なバランス能力に関する報告はほとんどない.そこで,今回は,FNF患者における患肢荷重率と歩行能力・バランス能力の関係性を,人工骨頭置換術施行例と骨接合術施行例の間で比較検討をすることを目的とする.【方法】 対象は当院にて手術・理学療法を施行したFNF患者のうち,T字杖で独力にて歩行可能であり,指示理解可能な患者33例を対象とし,人工骨頭置換術13例(以下人工骨頭群 男性4例 女性9例 平均年齢77.5±8.2歳 術後平均15.3±4.2日),骨接合術20例(以下骨接合群 男性6例 女性14例 ハンソンピン4例 Compression Hip Screw 6例 ITST7例 γ-nail3例 平均年齢72.9±12.7歳 術後平均17.9±6.6日)の2群に分けた.荷重率(%)は市販体重計を用いて平行棒を両上肢で支持した状態で, 患肢へ疼痛自制内で最大荷重させ,5秒間安定した荷重量を計測し,体重で除した値とした.バランス能力の指標としてBerg Balance Scale(以下BBS)総得点,歩行能力の指標として10m最大歩行速度を計測した.各群内における荷重率とBBS総得点,10m最大歩行速度の関連性を検討し,統計処理にはPearsonの相関係数を用いた.また2群間の荷重率,10m最大歩行速度,BBS総得点の平均値の比較には対応の無いt検定を用いた.なお各々の検定の有意水準は5%以下とした.【説明と同意】 対象者には,本研究の趣旨と目的を詳細に説明し,書面にて同意を得た.【結果】 荷重率(%)の平均は,人工骨頭群90.7±5.5,骨接合群90.4±9.5,10m最大歩行速度(sec)は人工骨頭群13.5±2.9,骨接合群14.8±5.0,BBS総得点(点)は人工骨頭群45.3±4.3,骨接合群45.3±8.0であり,すべての項目において,2群間で有意差は認められなかった.荷重率と10m最大歩行速度,BBS総得点の相関関係については,人工骨頭群では,荷重率と歩行速度,BBS総得点の間に相関は認められなかった.骨接合群では荷重率とBBS総得点の間に正の相関(r=0.87 P<0.05)を認め,荷重率と歩行速度の間に負の相関(r=-0.93 P<0.05)を認めた.【考察】 骨接合群では,荷重率と歩行速度との関連性に関して過去の報告と類似する結果が得られた.また,BBSは機能的バランス能力に対して客観的な評価が可能であるとされている.測定項目の「台に足を乗せる」「片脚立位」などは,支持物の無い状態での片脚支持が要求される.そのため,骨接合群では患肢への荷重率の大きさがBBS総得点に影響したことが考えられる.よって,FNF受傷による骨接合術後患者においては,荷重率と機能的なバランス能力には強い相関があることが明らかとなり,歩行能力、機能的バランス能力の向上に患肢荷重率の増加が貢献している可能性が示唆された. 一方,人工骨頭群では荷重率と10m最大歩行速度,BBS総得点の間には相関関係が認められなかった.その背景として,諸家の報告ではFNF受傷後のγ-nailやCompression Hip Screw後に比べ,人工骨頭置換術後の方が疼痛は少なく,平均在院日数が短いことや,早期の歩行獲得率が高いことが報告されている.本研究においても、人工骨頭群の方が比較的疼痛が少なく,骨接合群に比べ,術後早期より,訓練時や病棟内での身体活動量が増加したことが予想される.そのため,静的な状態での患肢への荷重が不十分な状態でも,運動学習や代償動作の習得により,各動作を獲得していった可能性が考えられる.特に10m最大歩行速度に関して本研究では,T字杖を使用して計測したため, T字杖が患肢の荷重を補い,歩行速度に影響を及ぼしたことが考えられた.以上より、FNF受傷による人工骨頭置換術後患者の歩行能力・バランス能力の向上には患肢荷重率以外の要素が関係している可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】 地域連携パスの導入等により,急性期病院における平均在院日数が短縮化される中で,患肢荷重率と歩行能力・バランス能力の関係を術式に分けて検討することは,FNF受傷後の患者に,より適切なアプローチを選択する一助となり,早期に行動範囲の拡大や,安定したADL獲得につながると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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