理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
変形性膝関節症を伴う疼痛に対する運動介入の短期的効果は非荷重位筋力増強運動が最も高い
─ランダム化比較試験に対するメタアナリシス─
田中 亮小澤 淳也木藤 伸宏森山 英樹
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p. Ca0234

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抄録
【はじめに、目的】 変形性膝関節症(以下,膝OA)は,軟骨の退行性変性を主体とする運動器疾患であり,膝関節に疼痛をもたらすことがある.疼痛はQOLに影響を及ぼす症状であり,患者にとって重要なアウトカムといえる.膝OAを伴う疼痛は運動療法によって軽減できることが,ランダム化比較試験(以下,RCT)によって実証されている.また,運動療法は国際的な診療ガイドラインでも推奨されており,推奨されている運動タイプには,荷重位あるいは非荷重位筋力増強運動や,ウォーキングや太極拳などの有酸素運動が含まれている.しかしながら,どのような運動タイプが膝OAを伴う疼痛軽減に最も有効か明らかにされていない.より効果的な運動タイプを明らかにする研究は,疼痛軽減を目的とした運動介入のプログラム立案に役立つだけでなく,疼痛軽減に影響を及ぼす運動条件を特定できるという意義がある.本研究の目的は,膝OAを伴う疼痛の軽減にはどのような運動介入が最も効果的であるか,明らかにすることである.【方法】 研究デザインはRCTに対するメタアナリシスであった.膝OAに伴う疼痛に対する運動療法の効果を検証した論文はPubMed, PEDro, CINAHL, Cochrane Central Register of Controlled Trialsを使用して検索した。組み入れ基準は,「研究対象は膝OA罹患者である」「介入群の介入内容は運動療法である」「コントロール群の介入内容は無介入か教育,指導のみである」「アウトカムには疼痛に関する指標が含まれている」「研究デザインはRCTである」とした。除外基準は,「研究対象に術後患者および入院患者が含まれている」「コントロール群の介入内容に運動療法が含まれている」とした。収集した論文のrisk of biasはPEDroスケールを用いて評価した.データの統合はRevMan5を用いて行い,効果量は標準化平均値差とした.運動タイプ内および運動タイプ間の統計学的異質性はl2値で評価した.出版バイアスはBeggの方法で検出した.【結果】 電子データベースで論文を検索した結果,424編の論文が該当した.そのうち,電子データベース間で重複していた論文を除外し,組み入れ基準と除外基準に基づいて26編を採用した.採用した論文のうち,複数の運動タイプを介入内容に含んでいた論文11編は,結果の解釈を困難にさせるという理由により分析から除外した.また,介入期間が他のRCTよりも長い(9週以上)論文7編も,同様の理由により分析から除外した.最終的には,非荷重位筋力増強運動4編7試験,荷重位筋力増強運動1編2試験,有酸素運動3編3試験をメタアナリシスに組み入れた.PEDroスケールの得点は4点から8点の範囲にあった.メタアナリシスの結果,運動タイプの効果量[95%信頼区間]は,非荷重位筋力増強運動1.32[0.79,1.85],荷重位筋力増強運動0.70[0.35,1.05],有酸素運動0.45[0.13,0.77]であり,いずれも有意な効果を示した.運動タイプ内の異質性(l2値)は,非荷重位筋力増強運動71%,荷重位筋力増強運動0%,有酸素運動0%であり,非荷重位筋力増強運動の効果に強い異質性を認めた.運動タイプ間の異質性は,非荷重位筋力増強運動vs荷重位筋力増強運動73.1%,非荷重位筋力増強運動vs有酸素運動86.9%,荷重位筋力増強運動vs有酸素運動7.5%であり,非荷重位筋力増強運動の効果は他の運動タイプと比べて有意に異質であることが示された.Beggの方法によって算出されたKendall順位相関係数は-0.303(p=0.170)であり,出版バイアスは検出されなかった.【考察】 本研究において分類された3つの運動タイプは,膝OAを伴う疼痛に対していずれも有意な効果を示していた.特に非荷重位筋力増強運動は,他の運動タイプよりも有意に高い効果を示していた.この結果から,膝OAを伴う疼痛の軽減には荷重を避けた筋収縮が最も有効であると考えられた.本研究の強みは,複数のRCTに対するメタアナリシスを行って,膝OAに伴う疼痛の軽減効果は運動タイプによって差があることを検証した点が挙げられる.しかしながら,非荷重位筋力増強の効果に異質性が認められた点が本研究の限界として挙げられる.異質性の原因は,運動の種類,筋収縮の様式,負荷の強さが考えられる.今後の研究は,これらの要因が非荷重位筋力増強の効果に影響を及ぼすか検証することが課題である.【理学療法学研究としての意義】 先行研究では,運動療法によって膝OAを伴う疼痛は軽減できることが実証されてきた.しかしながら,その効果に影響を及ぼす運動条件は不明であった.これに対して本研究では,8週間という短い期間に限定すれば,荷重の有無が疼痛軽減の効果に影響を及ぼすことを明らかにした.本研究によって,膝OAを伴う疼痛軽減の効果を高める運動条件の一つが解明された.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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