理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 口述
膝関節kinematicsからみた片脚着地時の適切な体幹肢位の検討
齊藤 明甲斐 学大倉 和貴若狭 正彦上村 佐知子佐々木 誠
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Ca0235

詳細
抄録
【はじめに、目的】 前十字靭帯(Anterior cruciate ligament : ACL)損傷はスポーツ活動中に発生することが多く、片脚着地時のKnee inはそのrisk factorの一つとされている。近年、下肢アライメントのみならず着地時の体幹肢位もACL損傷の要因として注目されているが、その報告数は少なくKnee inなど前額面上のアライメントへ及ぼす影響や、体幹側屈と下肢Kinematicsとの関係については明らかにされていない。本研究の目的は、片脚着地時の体幹肢位が下肢関節角度や筋活動に及ぼす影響を調査し、ACLへ与えるストレスとの関係から着地時の適切な体幹肢位を明らかにすることである。【方法】 下肢に整形外科疾患の既往のない大学生40名(男性20名、女性20名:平均年齢20.1歳)を対象とした。課題動作は40cm台からの片脚着地動作とし、1)自然で楽な姿勢(安楽姿勢)、2)体幹屈曲位、3)体幹伸展位、4)体幹右側屈位、5)体幹左側屈位の5条件で行った。対象者には台上から着地まで体幹肢位を保持するように指示した。施行順は最初に安楽姿勢、その後2)-5)は無作為とし、各5回施行した。この動作を矢状面、前額面からビデオカメラで撮影し、2次元動作解析ソフトDart Fish(Dart Fish社製)を用いて着地時の体幹屈曲および側屈、膝関節屈曲、Knee inの各角度を解析した。筋活動の測定には表面筋電計Mega Win(Mega社製)を使用し、被検筋は大腿直筋、大腿二頭筋とした。着地時点を同定するため足底面にフットスイッチを貼付し同期した。筋電図データは接地後100ms間の筋放電量を各筋の最大収縮時の値で正規化し(%MVC)、その後2筋の筋活動比(H/Q ratio)を算出した。各条件間で下肢関節角度、筋活動量の差を検定するため、一元配置分散分析およびTukey多重比較検定を行った。統計解析にはSPSS19.0を使用し、有意水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、秋田大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会(研究審査委員会)により承認された。なお、対象者には研究目的および研究方法を十分に説明し同意を得た。【結果】 膝関節最大屈曲角度は、安楽姿勢53.50±4.01°、体幹屈曲位60.48±5.55°、伸展位51.38±5.57°、右側屈位55.28±5.24°、左側屈位55.27±6.14°であり屈曲位が他の肢位よりも有意に大きかった(p<0.01)。また伸展位では、安楽姿勢以外の肢位に比べ有意に小さい角度であった(p<0.01)。最大Knee in角度は安楽姿勢8.08±4.69°、体幹屈曲位6.84±4.41°、伸展位11.88±4.66°、右側屈位14.67±5.36°、左側屈位11.12±5.07°となり右側屈位で安楽姿勢、屈曲位、左側屈位よりも有意に大きい角度であった(p<0.01)。H/Q ratioは安楽姿勢0.42±0.23、屈曲位0.68±0.39、伸展位0.28±0.15、右側屈位0.33±0.16、左側屈位0.41±0.25であり、屈曲位では他の肢位より有意に高く(p<0.01)、伸展位では屈曲位(p<0.01)、安楽姿勢、左側屈位より有意に低かった(p<0.05)。【考察】 着地動作においては、膝関節屈曲角度が減少するほどACLの緊張は増加し、特に膝関節屈曲30-50°で緊張が高まるため、屈曲角度が浅いほどACL損傷のリスクが高い肢位とされる。本研究の結果から、体幹伸展位は安楽姿勢以外の肢位と比較しACL損傷の危険性が高い着地肢位であると考える。一方、体幹屈曲位では他の肢位に比べACL損傷のリスクは低いと推察される。またKnee inは膝外反モーメントの増加および下腿外旋によりACLの張力が増加し、損傷を来しやすい肢位とされている。よって体幹伸展位、右および左側屈位では安楽姿勢よりもACLの緊張が増大すると考えられ、中でも体幹右側屈位が最もACL損傷の危険性が高い肢位であると示唆された。下肢の筋活動では、大腿直筋は脛骨の前方引出しに作用し、大腿二頭筋は脛骨の後方引出しに作用する。このため、H/Q ratioが低いほど大腿直筋の筋活動が優位となりACLの張力は増加するとされている。したがって体幹伸展位では安楽姿勢や屈曲位、左側屈位よりもACLへのストレスが高まるが、屈曲位では他の肢位に比べ減少すると考える。以上より、片脚着地における適切な肢位は、膝関節屈曲角度が大きくかつH/Q ratioが高い体幹屈曲位であると考察した。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果から片脚着地時の体幹肢位が、膝関節Kinematicsに及ぼす影響が明らかとなり、体幹屈曲位が最もACL損傷のリスクが低い肢位であることが示唆された。今後、臨床やスポーツ現場においてフィードバックしていくことで、ACL損傷の予防や再建術後の再発予防に有用であると考える。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top