理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
人工股関節全置換術の進入法の術後機能回復に関する前向き比較研究
永渕 輝佳玉木 彰中田 活也木村 恵理子北野 維之綾田 裕子
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p. Ca0239

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抄録
【はじめに、目的】 低侵襲人工股関節全置換術(MIS-THA)は早期機能回復と在院日数短縮を期待して広く施行されるようになっている。その進入法には様々な手技があり、どの進入法が有用であるかは現在のところ明確ではない。当院では、筋温存型MIS-THAであるanterolateral approach-Supine(AL-S)と筋切離型MIS-THAであるposterolateral approach(PL)を行っており、これらの進入法の違いによる身体機能回復の差異を明らかにするためにprospective studyを施行した。【方法】 2011年6~11月までに当院で施行した初回THAのうち脱臼度Crowe分類I、II度の片側性変形性股関節症(OA)を対象とした。除外基準は、両側OA、脱臼度III度以上のOA、大腿骨頭壊死症、大腿骨頚部骨折、急速破壊型股関節症、関節リウマチとした。除外基準に該当せず、研究への同意が得られた38例(男性2例、女性36例・平均年齢62.3±7.8歳)を進入法の違いによりAL-S群とPL群の2群に分けた。進入法の選択は整形外科医が無作為に行い、AL-S群16例(男性1例、女性15例・平均年齢62.6±9.1歳)、PL群22例(男性1例、女性21例・平均年齢62.1±6.8歳)であった。性別、身長、体重、BMI、手術時年齢において2群間に統計学的有意差は認めなかった。手術はすべて同一の術者が行い、術後は両群ともに同一のクリニカルパスの使用を基本とし、術翌日より理学療法士による関節可動域練習、筋力増強練習、歩行練習、ADL練習を実施した。検討項目には筋力(股関節外転、屈曲、伸展、外旋、内旋、膝関節伸展、屈曲)、関節可動域(ROM)(股関節屈曲、外転、外旋、伸展)、10m歩行時間、Timed up & goテスト、片脚立位時間、痛み(Visual Analog Scale)を術前、術後10日目、21日目、2ヶ月目に測定した。筋力測定にはHand-Held Dynamometerを使用し、測定は同一の検者によって行った。さらに術後、Straight Leg Raise(SLR)が可能になるまでの日数、片脚立位が可能になるまでの日数、杖歩行自立までの日数、独歩可能までの日数、在院日数を比較した。統計学的検討にはMann-Whitney U-test、対応のないt検定を用い、各項目の2群間比較を実施し、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院倫理委員会による承認を受けた上で実施した。全対象者に対し、事前に本研究の目的、方法、研究への参加の任意性と同意撤回の自由、プライバシー保護について十分な説明を行い、研究参加への同意と同意書への署名を得た。【結果】 筋力では外旋筋力が術後10日目、21日目、2ヶ月目、伸展筋力は21日目に有意にAL-S群の方が高い値を認めた(p<0.01)。ROMでは外旋可動域が術後10日目、2ヶ月目においてAL-S群の方が高い値を認め(p<0.05、p<0.01)、伸展可動域は術後2ヶ月目に有意にAL-S群の方が高い値を認めた(p<0.01)。SLRが可能になるまでの日数はPL群の方が有意に早かった(p<0.05)。その他の項目に関しては2群間に有意差は認めなかった。【考察】 今回、外旋筋力において術後、AL-S群の方が高い値を認めた。手術による外旋筋の処置は、AL-S群においては大腿筋膜張筋と中臀筋の筋間から進入し、外旋筋を温存して施行しており、PL群においては短外旋筋群を一度切離し、大転子に再縫着する処置を行っている。このことより、術後PL群で外旋筋力がより低下していたのではないかと考えられる。田篭らは、外旋筋力が片脚立位動作初期の体幹傾斜角度と関係していると報告しているが、本研究においては片脚起立時間に差を認めなかった。またSLRが可能になるまでの日数に差が認められたことにより、術後早期における下肢のコントロールにも両群間に差があるのではないかと考えられる。本研究の結果より、進入法が異なり、同一のリハプログラムを行うと術後身体機能回復に差があることが示された。今後、進入法の違いによってリハプログラムを変更することで、機能回復の差を縮小することができるのかを検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】 THA進入法の違いが機能回復に与える影響を明らかにすることで、術後早期のリハビリテーションにおけるTHA進入法の違いによる個別プログラム立案の一助になると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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