理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
人工股関節全置換術後における和式動作と関節可動域の経時的改善の追跡調査
酒井 雄亮野谷 美樹子寺松 良子山岸 由美越智 麻純村上 正佳杉田 智世辻中 直子中村 宣雄北田 誠三木 秀宣
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キーワード: THA, 和式動作, 関節可動域
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p. Ca0240

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抄録
【はじめに、目的】 近年, 人工股関節全置換術(以下:THA)において手術手技やインプラントのデザイン・素材の改良により脱臼リスクの軽減や耐用性が向上している.当院では術前CTにより最適インプラント位置を計算し,ナビゲーションシステム(以下:ナビゲーション)を使用し,適切にインプラントを設置している.患者の中には和式動作を行いたいとの希望をたびたび受けることがあった.そのため,当院ナビゲーション下にてTHAを施行した患者に対し,四次元動作解析システムを用いて和式動作の脱臼リスクについての研究を過去にも発表し,安全である事を報告してきた.そして,現在,積極的な和式動作の動作指導を行っている.しかし,THA術後患者の和式動作の獲得改善時期と関節可動域(以下:ROM)の経時的な変化を絡めた文献は少ない.今回の研究では当院でナビゲーション下にてTHAを施行し,動作制限を設けず,積極的に動作指導した患者の術前から術後2年半までの経時的な和式動作の獲得改善とそれに伴うROMの改善時期を検討することを目的とした.【方法】 和式動作の対象は当院でTHA施行し,術後外来にて定期的な経過観察および調査が可能な26例26関節(男性:2例,女性:24例,平均年齢:61,0歳)を対象とした.また,ROMの対象は同じく当院でTHA施行し,調査可能な33例33関節(男性:5例,女性:28例,平均年齢:60,6歳)とした.和式動作の方法は自己記入式アンケートを行い,期間は術前,及び術後半年ごとに最長27カ月まで調査し,平均追跡期間は17.3カ月であった.アンケートの内容は和式動作の「畳・床に座る」,「和式トイレ」,「正座」,「爪きり」,「身をかがめての物拾い」の5項目を「困難はない」,「少し困難だができる」,「かなり困難だができる」,「できない」,「その動作はしない」の5段階で評価し,1点から5点に換算し,点数が低い方がQOLが良いという尺度としたものを使用した.アンケートを術前,術後半年,1年,1年半,2年,2年半に分け,統計処理にはMann-Whitney検定を用い,p<0.05を有意とした. ROMの内容は「屈曲可動域」,「外転可動域」に着目し,計測を術前,術後1年,2年,3年に行い, 統計処理にはMann-Whitney検定を用い,p<0.05を有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】 全ての患者様には本研究の趣旨を説明し、同意と承諾を得ている。【結果】 和式動作の「畳・床に座る」,「正座」,「爪きり」,「身をかがめて物を拾う」動作では術前と比べ,術後全ての時期で有意な改善を認めた.また,「身をかがめて物を拾う」動作は術後半年と比べて,術後1年半,2年が有意差を示す値に近いものであり,経時的に改善していく傾向にあった.「和式トイレ」動作は術前と比べ,術後1年までは有意差はなく,術後1年半以降に有意に改善を認めた.ROM「屈曲可動域」,「外転可動域」ではともに術前と比べ,術後全ての時期に有意な改善を認めた.また,「屈曲可動域」を時期別にみると術前と術後1年の間,術後1年と術後2年の間で有意な改善を認めた.また,「外転可動域」を時期別にみると術前と術後1年の間で有意な改善を認めた.【考察】 和式動作では「畳・床に座る」・「正座」・「爪きり」動作は術後半年以内にプラトーとなるに対し,「和式トイレ」 と「身をかがめて物を拾う」動作は術後半年以内,またそれ以降も徐々に獲得改善される傾向の動作と考えられる.実際の臨床場面でも「和式トイレ」と「身をかがめて物を拾う」動作は獲得時期が遅い印象にあり,それは「和式トイレ」と「身をかがめて物を拾う」 動作は他の動作に比べ,可動域・筋力を要すことが考えられる.ROM「屈曲可動域」,「外転可動域」では時期別に見た際,ともに術前と術後1年の間で有意な改善を認めた.患者の多くは術前ROMに比べ,退院時ROMに改善を認めるが, 退院後も生活の中で更にROM改善を認めると考える.また,「屈曲可動域」は術後1年と2年の間でも有意な改善を認め,「外転可動域」に比べてより経時的に改善することが言える.これは,日常生活の中での動作に屈曲動作がより多く含めていることが予想される.「屈曲可動域」の改善時期を「和式トイレ」と「身をかがめて物を拾う」動作の獲得改善時期と見比べた場合,お互いほぼ同時期に有意な改善を認めていることが言える.これは当院での入院中のリハビリで「和式トイレ」や「身をかがめて物を拾う」動作などの積極的なしゃがみ込み動作を指導していることが,術後2年の長期にわたった改善に繋がっていることが示唆される.【理学療法学研究としての意義】 今回の研究により和式動作の獲得改善について様々なパターンがあることがわかった.また,ROM改善時期と合わせて検討した場合,術後長期にわたり,お互いに改善を示すことがわかった.このことを退院してからの機能回復の予測に繋げ,退院後の動作獲得や改善に向けた長期的な視点でより良い退院時指導に役立てたい.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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