理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
当院における人工股関節全置換術(THA)患者での杖歩行獲得時期に影響する因子ついて
溝口 靖亮浦川 宰小澤 亜紀子山副 孝文関 さくら名嘉 寛之蓮田 有莉山中 徹也野原 広明金 潤澤間嶋 満
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p. Ca0241

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抄録
【はじめに、目的】 近年,診断群分類包括評価の導入により急性期病院での入院期間は短縮の傾向にある.運動器疾患においてこのような医療状況に対応する為には,退院の目安となる杖歩行や日常生活動作(ADL)のより早期での獲得が必要となる.本研究では当院におけるTHA術後の理学療法施行例の杖歩行獲得時期に影響する因子を明らかにし,術後入院期間の短縮を図るための運動療法の内容を検討することである.【方法】 対象:2010年12月から2011年7月に当院にて変形性股関節症に対するTHA術後(全例後側方侵入)に,当院におけるTHA術後プロトコル(術後入院期間4週)に従い理学療法を実施した45例のうち,下記測定項目を評価でき,重篤な合併症なく杖歩行自立し自宅退院した21例21股(男性3名,女性18名,年齢62.0±8.2歳,杖歩行獲得日;術後21.0±7.1日).これらの症例を全症例の杖歩行獲得日を基準に早期群11例(年齢61.8±7.6歳,術後14.4±3.8日.病期;末期10例.うち反対側THA 2例),遅延群10例(年齢63.1±9.2歳,術後24.1±6.7日.病期;全例末期.うち反対側THA 2例)に分類した.検討項目:基本的項目として年齢,BMI,術後入院期間,術前の術側・非術側JOA Hip score(JOA)および大腿骨頭被覆率(AHI)・Sharp角,手術時間,術中出血量を調査した.測定項目は安静時・歩行時術側股関節疼痛(VAS),術側・非術側の股関節屈曲・外転可動域(屈曲ROM,外転ROM)及びハンドヘルドダイナモメータ(HHD[アニマ社製,ミュータスF-1])による腸腰筋・中殿筋・大腿四頭筋の等尺性筋力,timed up and go test,6分間歩行距離とし,術後2週及び4週で測定した.基本的項目と測定項目の値を早期群・遅延群で比較した(two sample t-test,Mann-Whitney U-test;p<0.05).【倫理的配慮、説明と同意】 対象者に本研究の趣旨と目的を詳細に説明し,参加の同意を得られた患者を対象とした.【結果】 基本的項目(早期群/遅延群)では術側AHI(72.5±12.7/58.6±11.3),非術側JOA(75.9±7.2/56.1±17.9)で有意差を認めた.また,測定項目(早期群/遅延群)においては2週時の術側屈曲ROM(81.8±9.8/66.0±17.4度),術側外転ROM(27.3±6.5/21.0±7.0度),4週時の術側屈曲ROM(93.6±7.8/84.0±9.1度)・術側外転ROM(36.4±4.5/27.0±9.1度),術側中殿筋筋力(2.3±0.6/1.7±0.4[N/kg]),非術側中殿筋筋力(2.6±0.7/1.6±0.6[N/kg]),歩行時術側股関節疼痛(4.7±12.5mm/14.4±14.5mm)で有意差を認めた.疼痛は股関節前面に多かった.術後入院期間(31.1±6.5/33.1±7.2日)とその他の項目については有意差を認めなかった.【考察】 早期群の特徴として,術側では術前のAHIの値が大きく,術後2週・4 週での屈曲・外転ROMが良好で,術後4週の中殿筋筋力が高く,歩行時疼痛がより軽度で,非術側では術前JOAが高値で,術後4週での中殿筋筋力が高いことが判明した.術側AHIの値が小さい症例では,関節の適合性が低下し,亜脱臼の程度も大きく,術前から中殿筋筋力の低下が大きかったと推察される.更に,これらの症例では,術後の脚延長による軟部組織伸張の程度が大きくなり,股関節前面の疼痛や屈曲・外転ROMの低下を来たし,歩行獲得の遅延につながったと思われる.したがって,遅延群の杖歩行獲得時期を早めるためには術側の屈曲・外転ROM,中殿筋筋力の改善に対し,重点的に対応していく必要があり,更に非術側のJOAが低値である症例については非術側中殿筋筋力についても対応が必要である.なお,当院では杖歩行を早期に獲得しても,自宅退院は早期化しない結果となった.その理由として当院のTHA術後プロトコルではADL(床移乗・入浴・靴下着脱動作など)開始時期を3週,術後入院期間を4週と定めている.このため,早期に杖歩行を獲得しても,ADL練習の開始は術後3週後から行うことが多いため,両群間での入院期間には差が出なかったと思われる.今後,入院期間の短縮の為には早期群に合致した症例に対しては,ADL練習開始時期の早期化などの術後プロトコルの内容についても検討を加える必要があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 早期の杖歩行獲得するために必要な項目が明らかとなった.これらの項目は術後入院期間の短縮を図る為の運動療法を検討する際の指針となり得るものである.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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