理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 口述
人工膝関節置換術後における退院時の運動機能を予測する因子の検討
─術後1週までの身体・精神的機能の変化量からの予測─
内田 茂博玉利 光太郎森田 伸田仲 勝一伊藤 康弘藤岡 修司板東 正記刈谷 友洋小林 裕生山田 英司有馬 信男山本 哲司
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Ca0247

詳細
抄録
【はじめに、目的】 現在,在院日数の短縮やリハビリ期間の制限により長期的な介入が困難となっているため,術後早期より運動機能に寄与している因子を明確にすることは重要となってくる。我々は先行研究において術前の身体・精神的機能より退院時の運動機能の予測因子について検討し,術前の安静時痛が低い,リハビリに対する自己効力感が高い,非術側膝伸展可動域が少ないなどの因子が寄与していることを報告した。今回,本研究では術前から術後1週までの身体・精神的機能の変化量が客観的運動機能指標であるTimed Up and Go test(以下,TUG)の改善度にどう寄与しているかを明らかにすることを目的とした。術前から術後1週までの変化量を用いて退院直前の運動機能を予測することにより,術直後の理学療法介入を検討する際のヒントを提示すると考えられ,以下の調査を行なった。【方法】 研究デザインは前向きコホート研究であり,膝OAと診断され人工膝関節全置換術(以下,TKA)または人工膝関節単顆置換術(以下,UKA)が施行された患者を対象とした。術前,術後1週に独立変数を計測し変化量を求め,従属変数は術前,術後2週にTUGを計測し改善度を求めた。対象は,当院整形外科にて手術が施行された38名(男性10名,女性28名,平均年齢75.0±6.1歳),このうちTKA施行例9名,UKA施行例29名であった。また,片側施行例は18名,両側施行例は20名であった。測定項目は,1)疼痛,2)術側膝関節可動域(伸展・屈曲),3)術側等尺性膝伸展筋力,4)自己効力感(Self-Efficacy for Rehabilitation Outcome Scale:以下,SER),5)10m歩行歩数とし,術前および術後1週に計測した。また,交絡因子として,1)被験者属性因子(年齢,性別,BMI,エクササイズ習慣),2)TKA例とUKA例,3)片側例と両側例,4)非術側伸展筋力,5)非術側膝関節可動域(伸展・屈曲)を術前に計測した。統計学的分析では重回帰分析を用い,変数選択法はステップワイズ法により行った。また,交絡因子を分析モデルに強制投入し調整を行った。なお事前に単変量解析によって変数選択を行い,有意水準が0.20を下回る変数のみを重回帰モデルに投入して分析を行った。統計ソフトは,SPSS Student Version 16.0を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 当院の倫理委員会の承認を得た(承認番号:平成21-6)。対象者には研究についての説明を行い,十分に理解した上で書面にて同意を得た。【結果】 単変量解析によって抽出された変数は術側膝屈曲可動域,術側膝伸展可動域,術側等尺性膝伸展筋力,SER,10m歩行歩数の変化量であった。重回帰分析の結果(p<0.001,R2 =0.736),TUGの改善度を説明する変数は,SER(p=0.014,β=0.354),10m歩行歩数(p<0.001,β=-0.617)の変化量であった。交絡因子を投入後の重回帰分析の結果においても,SERと10m歩行歩数の変化量が抽出され,それ以外に交絡因子である術前の非術側膝伸展可動域が有意であった。すなわち,術後2週までのTUGがより改善するものは,術前の非術側膝伸展可動域制限が少ない,リハビリに対する術前から術後1週までの自己効力感の変化量がより高い,術前から術後1週までの10m歩行歩数がより少なくなる,というそれぞれの特徴を有した。【考察】 今回の結果より,術前から術後1週までに10m歩行歩数が減少した患者,またリハビリに対する自己効力感が術前から術後1週までにより向上した患者,非術側の膝伸展可動域制限が少ない患者は退院時までのTUG改善度が高いことが示唆された。これらの変数は互いに独立して従属変数を説明しており,被験者属性因子や非術側の筋力,TKA・UKAの別,片側・両側の別といった要因からも独立して関連することが示唆された。 本研究の限界として抽出された因子に介入することによって,術後の運動機能が改善するかという点については言及できないこと,および長期的な機能予後予測因子については不明であることがあげられる。今後の課題として術後早期より自己効力感や歩行時の歩幅,非術側膝伸展可動域に対して介入することによって,術後の運動機能が改善するかどうか検証していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 現在,医療制度改革による在院日数の短縮やリハビリ期間の制限により長期的な介入が困難となっているため,術後早期の予後予測や運動機能に寄与している因子を明確にすることは重要となってくる。そのため術前や術後早期の因子より退院時の運動機能の改善度を予測していくことは重要であると考えられる。本研究では,術前から術後1週までの変化量を用いて退院直前の改善度を予測するモデルであるため,介入を検討する際のヒントを提示すると考えられる。本研究結果は,術直後に退院時の目標設定や運動機能の改善度を予測するための一根拠となると考えられる。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top